沖縄・台湾友の会

《台湾に興味のある方》《台湾を愛する方》《不治の病・台湾病を患ってしまった方》皆んなで色々語り合いたいものです。

コソボでまた悶着が起こりそうな気配   ウクライナに「熱中」の欧米にコソボへの関心は稀釈化

2022-08-30 15:33:30 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)8月30日(火曜日)
        通巻第7446号 
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 コソボでまた悶着が起こりそうな気配
  ウクライナに「熱中」の欧米にコソボへの関心は稀釈化
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 2022年8月28日、セルビア政府は「コソボの外交承認を撤回するよう7カ国を説得した」と発表した。つまり外交上の関係をチャラにするわけだから、国際政治には影を投げかけるだろう。
ニコラ・セラコビッチ外相は「すでに4カ国がコソボの承認を撤回した」と報告した。

 アレクサンダー・ヴチッチ大統領は国名を特定しなったが、「セルビア外交の成果だ」とし、中国、ロシアを念頭に、セルビアは世界の多数の支持を得ていると発言を続けた。
「私と外務大臣の引き出しにコソボ承認を確認する 7 つの文書がある」とヴァチッチは演説を続けた。

他方、コソボはベトナムとケニアにアプローチし、外交承認を求めている。
 現在、国連加盟国の半数以下の国々(日米を含めて)がコソボを承認している。IMF・世銀も承認し、通貨はユーロだ。しかし EU 加盟国のなかでも、ギリシャ、ルーマニア、スロバキア、スペインはコソボを承認していない。

G20 のメンバーでは、BRICS(ロシア、中国、インド、ブラジル、南アフリカ)に加えてアルゼンチン、インドネシア、メキシコの8ヶ国がコソボを認めず、したがって大使館も代表所も首都のプリシュナティに置いていない。

 セルビアにとっては『コソボはアルバニアに盗まれた』という認識であり、人口180万人のうち、若者は英米へ出稼ぎに、数十万人のセルバビア人はセルビアに避難し、コソボ北部にも相当数の非アルバニア系が残留している。
コソボの産業主体が農業なので、かなりの農地は荒れ果てている。

 コソボはユーゴスラビアが大分裂を繰りかえして内戦に陥った時に、欧米が無理矢理に独立させた経緯があり、立場上、米国はいち早く厳戒警備の大使館を開設した。

 日本は米国からの要請に基づき、独立承認はしたものの、2021年まで大使館を開かなかった。業務代行はウィーンに日本大使館が負担していたが、プリシュナティの日本大使館を開設したといっても、駐在員オフィスていどで、ウィーン大使が兼任。

 中国が大型輸送機でセルビアに武器を搬入した。
 かくしてコソボでまた悶着が起こりそうな気配だが、年初来、ウクライナに「熱中」の欧米にとって、コソボへの関心は稀釈化して居る。


鍛冶俊樹の軍事ジャーナル (2022年8月29日号) *トーク:岸田内閣の致命的失敗 https://youtu.be/kB5mGP3vjqQ

2022-08-30 15:27:32 | 日記
鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
(2022年8月29日号)
*トーク:岸田内閣の致命的失敗
 前号「岸田内閣の致命的失敗」をテーマにしたトーク番組がUPされた。下記をクリック
https://youtu.be/kB5mGP3vjqQ



 番組でも触れたが、岸田総理は中国の習近平主席との首脳会談を11月に行うように調整している。これもまた岸田内閣の致命的失敗だと言える。今月4日に中国軍は日本の排他的経済水域に弾道ミサイルを撃ち込んだ。おかげで周辺の漁民は出漁を取りやめた。
 日本国民に被害をもたらした中国軍の最高指揮官の習近平主席と、習主席の謝罪もない状況で首脳会談はあり得ない。本来であれば、駐中日本大使を召還して中国に謝罪を求め、首脳会談をキャンセルするのが筋である。

 そして9月の故・安倍元総理の国葬に台湾の蔡英文総統を招待するべきだった。今般、フランスのマクロン大統領は来日を見送ったが、蔡総統が招待されていないのが、本当の理由だろう。
 もし蔡総統が来日するとなれば、マクロンはもちろん米国のバイデン大統領も来日を表明したであろう。彼らが来日しないのは、岸田内閣の対中姿勢に疑問を感じているからに他ならない。

 岸田総理は昨年、親中派の林芳正氏を外相に任じて米国の不信を買った。8月の内閣改造で林外相を留任させたことで欧米の不信を更に買った。もはや欧米は日本が対中腰砕けになったと見ていよう。岸田内閣の致命的失敗である。

ペロシ氏訪台で新局面、日本も準備を 櫻井よしこ

2022-08-30 15:25:39 | 日記
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ペロシ氏訪台で新局面、日本も準備を
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       櫻井よしこ

日本ルネッサンス 第1011回

外交上も安全保障上も難しい問題を引き起こすことにはなったが、米下院 議長、ナンシー・ペロシ氏の決断を評価する。だが、事の経緯を振りかえ れば、氏に中国の圧力を受けて訪台を取りやめる選択肢は残されていな かったのも事実だろう。

私がこの原稿を書いているのは8月2日である。ペロシ氏は今夜、台北に入 り、3日に蔡英文総統と会談するとのことだ。米国の専門家や政治家の間 で賛否が分かれる中での訪台だが、氏の行動は米国の台湾政策の行方を決 定づけ、必然的にわが国の外交、安全保障政策にも決定的な影響を与える だろう。

米国は安倍元総理が提言した通り、台湾に対する曖昧戦略を放棄して、有 事の際には台湾防衛の柱となる意思を示さざるを得ないことになる。そし て日本は米国と共に台湾擁護の方針を明らかにしなければならなくなるだ ろう。世界の在り方を中国の好きなようにはさせないという国家の意思を 日米台が結束して、明確な形にしていくときだ。

ウクライナ侵略戦争以降の米中間の対立を振りかえれば、米中の力関係の 概容が浮かび上がる。ウクライナ侵略を続けるロシア大統領のプーチン氏 を、習近平氏はロシア産原油の輸入をふやすことなどで経済的に支えては いるが、軍事的支援には踏み込んでいない。2月の北京五輪開幕直前の中 露首脳会談で「限りない友情と協力」を謳い上げたにも拘わらず、プーチ ン氏の軍事援助要請に、習氏は応えていない。これは米国政府も明確に認 めている点だ。

ここまできて、なぜ中国はロシアを軍事的に支援しないのか。外交戦略を 専門とする田久保忠衛氏は、「米国の非常に強い圧力ゆえ」だとしてこう 語る。

「中国には現在アメリカと四つに組む力がないのです。習近平体制は盤石 だと言われていますが、弱さもある。アメリカと事を構える状況にはない でしょう」

習政権の孤立感

ブリンケン米国務長官と王毅中国外相は7月9日、インドネシアで開かれた G20(20か国・地域外相会合)後に5時間以上を費やして会談した。詳細 は明らかにされていないが、ここで米国側は中国にロシアへの肩入れにつ いて強く警告したと思われる。ロシアに対する軍事的支援は絶対に看過し ない、そのようなことがあればアメリカは中国への追加制裁を断行し、中 国経済をさらに減速させる。このような内容だったのではないか。

それに先立つ6月12日、中国国防相の魏鳳和氏はシンガポールで行われた 「アジア安全保障会議」で米国防長官のオースティン氏に激しく反発し た。オースティン氏はその前日、「自由で開かれたインド太平洋」 (FOIP)が米国の大戦略の肝だと語っていた。

プーチン氏の侵略戦争については「大国がその帝国主義的欲望を平和志向 の近隣諸国の権利に優先させるとき」、このような許されざる惨禍が起き ると非難した。名指しこそしていないが、この非難が中国にも向けられて いるのは明らかだ。

米国はその強大な力と堅い意思で断固として自由と民主の世界を守ると 語ったオースティン氏に、魏氏は「中国への中傷(smearing)だ」と以下 のように激しく反論した。

FOIPは「自由」と「開放性」の名の下で排他的小グループを形成して 中国に対立するものだ、台湾は何よりも第一に、中国の領土だ、独立を目 論む者にはロクなことがない。中国は台湾については最後まで戦い抜く、 外国の介入勢力は必ず失敗すると、氏は昂ぶった様子で中国年来の主張を 繰り返したのだ。

オースティン氏の断固とした内容ながら冷静な演説に較べて、魏氏はいき り立っていた。この感情的な反応は魏氏にとどまらず、現在の習近平指導 部の傾向ではないか。習政権が全体として理性的というよりも感情的な印 象を与えるのはなぜだろうか。習政権の感じている孤立感と関係はあるのか。

国連での投票行動から判断すると、西側のG7と共に行動する国は約90か 国だ。必ず中露の側に立つのが約40か国。中間にいるのが約60か国と見て よい。数だけ見れば中国も決して孤独なわけではない。しかし、中国は不 安なのではないか。経済力も軍事力も備えている有力先進国はおよそ皆、 中露と対立状況にある。中国に従う国々には貧しい発展途上国が多い。軍 事力と金融力で縛られている国も少なくない。中国の孤立感は、自分たち は本当のところ、真に尊敬されてもおらず愛されてもいないという自覚か ら生まれているのではないか。

習氏は7月28日、バイデン米大統領との2時間20分にわたる電話会談で台湾 問題に関して「火遊びは身を焼くことになる」と発言した。北朝鮮の金正 恩氏まがいの脅しを口にする主席を見習ってか、中国外務省や軍も強気で ある。

アメリカは台湾を守る

ペロシ氏の訪台計画の情報が伝えられるや、外務省が「中国軍は決して座 視することなく、必ず断固たる対抗措置を取る」と警告すれば、人民解放 軍(PLA)は東シナ海・南シナ海の5か所で軍事演習を開始した。7月30 日には台湾対岸の福建省の台湾に最も近い平潭海域で実弾演習を行った。 8月1日にはPLA東部戦区が「陣営を整えて待ち構えている」とする約2 分半の動画を公開した。動画では洋上に展開する部隊や、ミサイルを標的 に命中させる場面が強調されていた。

ペロシ氏の訪台がどのような顛末に至るかは予想できないが、台湾を巡る 米中間の緊張は高まり続けるだろう。その中で日本がどうしても学ばなけ ればならないことがある。それは中国の圧力に屈してはならないというこ とだ。ペロシ氏は国外に飛んで台湾を訪れた。靖国神社は日本国内にあ る。にも拘わらず、国内ですら日本国首相がどこに行くのか行かないのか 自ら決められず、祖国に命を捧げた先人たちに尊崇の想いさえ捧げられな い国であってはならない。中国の脅しに、日本は決して屈してはならない。

その上で台湾危機がいよいよ身近に迫ったことをはっきり認識すべきだ。 先にも触れたように、バイデン政権はペロシ氏訪台でこれまでの曖昧戦略 を変えてアメリカは台湾を守ると明確に打ち出し、台湾に対する安全保障 上の援助をさらに手厚くせざるを得ないだろう。

台湾有事は100%、日本有事だ。台湾を守ることはわが国を守ることだ。 そのことを肝に銘じて、憲法改正とGDP比2%の防衛費を急ぎ実現する ことだ。習氏の台湾侵攻は18か月以内にもあり得ると、米「ウォール・ス トリート・ジャーナル」紙が社説で言及した。準備が間に合わなければ日 本は消滅の道に落とされていく。


トルコでロシア人観光客が医薬品の爆買い    現在までにおよそ300万人。一流ホテルの薬局も深夜営業

2022-08-30 15:24:08 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)8月29日(月曜日)弐
        通巻第7445号 
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 トルコでロシア人観光客が医薬品の爆買い
   現在までにおよそ300万人。一流ホテルの薬局も深夜営業
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 NATOを攪乱するトルコ。エルドアン大統領の辣腕ぶりはつとに知られるが、米国が反対したロシア製イスカンダル(ミサイル防衛システム)を導入し、ロシアからのパイプライン敷設を断行し、さらに夏にはフィンランドとスウェーデンのNATO加盟に強烈な反対を表明し、ロシアに飛んでプーチンと談合を繰り返した。
 ウクライナからの小麦輸出が可能となったのも、トルコの仲介だった。

 そのトルコに『ロシア異変』が起きている。
 もとよりロシア人観光客はトルコに溢れていた。キプロスやスペインにもロシア人ツアーが目立ったが、ウクライナ侵攻後はEUの制裁に直面したため、なおさらトルコ観光が栄える。

 異変は薬屋においてロシア人の爆買いである。売れ筋は鎮痛剤、降圧剤、そして糖尿治療薬。一流ホテルでも列ができた。

 思い出すのはソ連崩壊直後のロシアの風景だ。ルーブルがみるみる下落し、1ルーブル=240円だったレートは、60円、1円、最後は12銭に大暴落を演じた時代、どこへ行っても街中で近寄ってくるロシア人は「ドルと交換してくれませんか?」、「栄養剤もってないか?」。そして「カラーフィルムを譲って欲しい」。
ホテルの従業員からは執拗に「栄養剤があったら欲しい」と要求された。あいにく当方は正露丸しかない(征露丸ではないが)。

 ちなみにトルコ観光局発表のロシア人入国は1月~7月で220万人(前年同期は155万人)。8月にはいって、さらに急増し8月17日までの速報で524000人だそうな。

インドネシア新幹線を日本から横取りした中国が工事をそっちのけに   新首都「ヌサンタラ」のインフラ整備にまたもや手を挙げて参入の構え

2022-08-30 15:23:24 | 日記
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)8月29日(月曜日)
        通巻第7444号 
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 インドネシア新幹線を日本から横取りした中国が工事をそっちのけに
  新首都「ヌサンタラ」のインフラ整備にまたもや手を挙げて参入の構え
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 インドネシア新幹線は第一期工事がジャカルタ~バンドン間の142キロ。中国が日本から横取りして2019年に完成予定だった。工事着工から7年が経過した。
現在の状況? 二割の工事予定区間で土地の整備が進んだ程度、完成は絶望的と見られる。ジャカルタ~バンドンは高速バスが30分毎にでており、また従来線の鉄道もあるので、もし完成しても利用客は期待するほどではないだろう。筆者はこの区間を従来線鉄道で旅したことがあるが、列車はがらがら、ともかくよく揺れた。

 インドネシア新幹線プロジェクトは、もともと日本が2012年に一年以上をかけて予定沿線すべてを測量士、土地の資質や、河には高架橋梁の必要性、トンネル工事予定地の調査などを済ませ「フィージビリティスタディ」をインドネシア政府に提出していた。総工費63億ドルと見積もられた。

 ウィドド大統領はにこにこ顔で来日し、インドネシア新幹線の建設協力に前向きだった安倍晋三首相(当時)と会談、その足で北京へ向かった。
逆転は習近平との会談直後に起きた。

 2015年9月、インドネシアは中国に新幹線工事を発注し、日本の関係者は驚いた。中国のオファーした総工費は55億ドルだった。2022年現在、工事費は四割増となり、すでに中国は建設資材、機材を運び込んだ。工事の遅れはコロナで労働者が帰国したためなどと言い訳されたが、それ以前から工事現場では動きが止まっていた。
 これが中国の遣り方で、納入済みの建設資材、建材などはちゃっかりと代金を回収し、儲けをはじき出している。

 中国との契約は対外機密となっており、契約内容は公開されていない。しかし過去の「実績」を見れば、すぐに了解できることがある。
 マレーシアは中国主導の新幹線プロジェクトを止めるとした。ところが、契約ではキャンセルにともなう違約金が工事費ほど高いため、クアラルンプール周辺に限定した部分的な工事をせざるを得なくなった。

 スリランカのコロンボ港近代化工事でもラジャパクサ政権をひきついだシリセナ政権がキャンセルを言うと、違約金が工事費に匹敵することがわかり、しぶしぶプロジェクトを継続している。
その後、またもラジャパクサ政権が復活し、こんどはコロンボ沖に人工島を建設して南アジアのドバイのような国際金融都市にするとした。人工島の埋め立て工事だけは出来たが、そのままとなった。ラジャパクサ三兄弟はスリランカから逃げ出した。

 世界で中国の「一帯一路」が絡む多くのプロジェクトには同様なことがおこり、ニカラグア運河はとりやめ、パキスタンのグアダール港も事実上取りやめとなって、カラチに移転した。
 また当初の予算はかならず途中で値上げになり、たとえばケニア鉄道は三倍、モルディブの病院は費用が2・6倍となった(JBプレス、22年4月11日)。
 まさしく「無用の長物」をおしつけ、カネが返せないと分かると担保物権を取り上げる。パキスタンで、スリランカのハンバントタで、ジブチで。。。


 ▲ウィドド大統領のレガシーは新首都建設だが、日本はつきあいきれない

 インドネシアの新首都はカリマンタン島の「ヌサンタラ」が移転先と決まり、2022年3月、正式にプロジェクトは動き出した。2045年完成予定、総工費は4・3兆円(このうちインドネシア政府は20%負担)。
 新幹線で懲りている日本は、新都心プロジェクトに関心が薄く、参入を期待されたソフトバンクも正式に「見送り」を表明している。

 ところが、ヌサンタラ予定地から700キロ北に「グリーン工業団地」を造成し、付近に水力発電所を建設中の中国が、この新都市プロジェクトのインフラ建設に参入すると言い出した。ウィドド訪問で、韓国、台湾は建設協力を前向きに検討するとしたが、一番近い豪政府は専門情報の提供のみにとどめている。日本企業は2024年の大統領選挙の結果待ちである。
というのもプロジェクトは沙汰止みの可能性があると踏んでいるからだ。

 とくにインドネシアに近い豪政府は6月にアルバジーニー首相が、豪財界ならびにウォン外相、ファレル貿易相らを率いてジャカルタを訪問し、洪水対策は港湾開発などに3・4億ドルを支援するとした。環境、気象などの開発に集中するが、新首都プロジェクトへの協力には言葉を濁した。そのうえ、豪訪問団は首都移転先視察をパスしてエネルギー基地があるマカッサルへ向かった。

 カリマンタン島というのはジャワ島、バリ島など1万7000の諸島からなるインドネシアで弐番目に広い面積を誇る。別名ボルネオ島。北西部がマレーシアとブルネイ、南東部(島の三分の二)がインドネシア領で、パリクパパン、サマリンダ、バンジャマシンなど中規模な都市がある。
新都市ヌサンタラは、密林地帯、極めてアクセスの悪い場所が選ばれた。途端に周辺の土地が数倍に値上がりした。

 ロシアが石炭鉱山かのタタイバットからパリクパパン(200キロ)の鉄道建設を言い出したことがあった。カリマンタン特産の石炭を奥地から港湾へ運べる輸送ルートが開けるとインドネシアをぬか喜びさせたが、2020年、ロシアは唐突に白紙に戻した。政治的揺さぶりが目的だったと言われた。

 ヌサンタラ(インドネシア語で群島の意味)の位置はバンジャマシンとサマリンダの間の密林地帯で、高速道路も鉄道もない。なぜこのような辺境に?

 カリマンタンの東側は、凸凹道を往くかローカル線の飛行機で行き来する。実際に著者は2019年にバンジャマシンとパリクパパンンを取材しているが、当時はスワラシ島のマカッサルも候補とされていたので、マカッサルにも足を伸ばしたことがある。
 凄く不便な地理であり、この首都移転プロジェクト、本当に実現するのかと訝った。


 ▲家康は江戸の建設に半世紀をかけた

 秀吉の命令で板東へ左遷された家康は、むしろこの危機をチャンスととらえ、新都市江戸の建設を決意した。当時の江戸城は掘っ立て小屋、日比谷も銀座も海だった。地質の悪い湿地帯の開墾、埋め立ては難儀をきわめ、とくに留意したのは飲み水の確保だった。
 だが、建設思想をもち、将来の政治都市は京からはなれているほうが良いと判断した家康は、不退転の決断を継続させ、そのための資金を捻出し、労働力は全国の大名から動員し、当時の世界最大の都市を半世紀の歳月をかけて構築した。

 習近平もレガシー造りを思いついた。北京の人口爆発に悲鳴を上げてのことだが、さて、河北省で建設中の北京新都心「雄安新区」はどうなったのか。この新都心は習近平の看板プロジェクトである。

 雄安新区は、2035年完成予定。総工費32兆円、人口200万の新都として、社会科学院など政府機関を強制的に移転し、新幹線も繋ぐ計画だ。なにしろ習近平の肝いりだから、道路は拡張されて、砂利トラ、ダンプカーがうなりを上げて驀進し、クレーンもフル回転していた。

 武漢肺炎が工事の進捗をとめた。プロジェクトは頓挫しているが、習近平の威光を損なうことになるので、公表はしない。