神の遊びし入り江、願いはそこに残りつづける
西の河原(北海道古宇郡神恵内村珊内)
積丹半島の西側、神威岬から岩内方面に数キロ下った場所に「西の河原(さいのかわら)」と呼ばれる場所があります。
場所は神恵内村の端ということになるらしい。
日本全国に「賽(西)の河原」と呼ばれる霊場はいくつかありますが、ここ神恵内村の西の河原は「ジュウボウ岬」と呼ばれる小さな半島の付け根部分にあるようです。
私は長らく、この霊場の行き方はおろか正確な場所すらも知りませんでした。ネット検索をしても、ヒットするのは国道沿いの普通の海岸の画像のみ。てっきり「西の河原なんて名ばかりの場所だな…」なんて思いこんでいたのですが、いざ訪問するにあたって改めて調べてみたところ、今回の真の場所が判明したというわけです。
ウワサによると「遊歩道は封鎖され…」「海岸沿いを数十分歩き…」などと訪問は容易ではないとのことですが…果たして?
8月6日(土)
半日以上かけてせたな町の太田山神社の訪問を果たした私は、そのまま車で折り返して寿都町まで戻りました。
午後6時、眠い目をこすりつつ辿り着いたのは、スマホで見つけた日帰り温泉施設「ゆべつの湯」。
入館料500円で山登りの汗を流してサッパリ。ついでに休憩コーナーでヴォリュームたっぷりの天丼を食べて満足満足。
この施設はキャンプ場が併設しており、駐車場には旅人のバイクがたくさん。隣の広場ではライダー達が宴会の真っ最中でした。
この場所が丁度いいや!ということで、そのまま車のシートを倒して車中泊することに。
私が乗っているスズキエリオというマイナー車はトランク容量が大きいのが自慢。後部のシートを倒して身体をナナメにすると、身長168の私なら足を延ばせる事が判明。おかげで朝までグッスリでした(*^_^*)。
翌8月7日、朝6時に気持ちよく起床し、再び積丹半島へ向けて北上。
途中でとまりん館に寄り道したりしつつ…(後日取り上げます)。
午前11時、「西の河原」付近に到着!
「西の河原トンネル」と「大天狗トンネル」の間に小さな駐車場があり、そこへ車を乗り入れます。
海水浴か釣り目当てと思しき車が2~3台停まっているだけで非常に静か。かつては駐車場に面してレストハウスがあったといいますが、近年解体されてしまったらしく何もありません…。
話によると、この駐車場から海岸沿いをしばらく歩くと「西の河原」に辿り着けるらしいのです。
それにしても、バス停の名前が「西の河原」ってなんかイヤですね…(^_^;)笑
国道より「西の河原」方面を望む
あの尖った先端がジュウボウ岬か?と思いましたが、地図を見ると違いました。
尖った部分を越えた向こう側に、小さく半島状に飛び出した岬と、その付け根に存在する「西の河原」が隠れるように存在しているのです。
…かなりの距離を歩く事になりそうです。
涼しい服装に着替え、駐車場から海へと降ります。
ここはまだ普通の海岸で、かつて私が見た「西の河原」の画像はこの場所を写したものだったと思われます。
さっそく「ジュウボウ岬」方面へ、ひと気のない海岸沿いを歩いていきます。
…転がっているのは大きな石ばかりで、随分と歩きにくく疲れます。
15分ほど歩き続けると、しばらく先に年配の男性が歩いているのに気付きました。
岩場を探検するのには適していなさそうなごく普通の服装で、遠目に見ても少し心配になりました…。
この場所、参拝に訪れる人は意外と多いのでしょうか。
来た道を振り返ってみると、さっきまでいた駐車場が小さく見えました。
そして私の後ろからもキャンプ用具?を背負った若者3人組が歩いてきています。
さらに歩いていくと…険しい岩場が。
画像では伝わりにくいですが、起伏がかなり激しく非常に危険。
岩の裂け目は2~3メートルほどありそうな箇所も多く、もはや素人は歩くべき場所じゃありません(笑)。
想像よりも遥かに険しい行程に冷や汗が…(^_^;)。
「太田山神社のオマケ」的な軽い気持ちで来てしまった自分を責めつつ、慎重に進みます。
大きな岩をよじ登ると、先ほど遠くに見えた年配の方がいらっしゃいました。
私を見つけると「この先ってどうなっているかご存知ですか?」と話しかけてきました。
なんでも、随分と前に西の河原を訪問された事があるらしく、あの場所をもう一度見たくてここまで来たといいます。
「遊歩道が無くなっちゃったから、すっかり来るのも大変になっちゃったね。」と残念そうです。
おじいさんと共に、なんとか岩場を攻略。
駐車場から遠目に見えていた岩壁、いったいどうやって越えればいいのか?と心配していましたが、ちょうどよく壁に裂け目があり、斜面を登って行けば難なく越えられそうです。
おじいさんが心配で待っていたら、後から来た若者3人組に抜かれてしまいました…(^_^;)笑。
斜面を登りながら、おじいさんは色々と思い出話を聞かせてくれました。
昔から探検するのが大好きならしく、駒ケ岳が噴火したときは噴火口を覗きこんだらしいです。
「しかも、こんな服装でね(笑)」と自信のポロシャツとズボンを指さし、少年のような笑顔を浮かべていました。
さて、予想以上に険しかった「ジュウボウ岬」および「西の河原」までの道のり。
岩壁の間の斜面を登りきると、ようやく努力が報われました。
見えた!!!
半島状に突き出した岩山の向こう側が「ジュウボウ岬」、そしてそこへと通じる細長い陸地部分、小さな小屋があるのがお分かりでしょうか?
あの辺りが、目指す西の河原!!小屋の正体は地蔵尊のようです。
私に続いて登ってきたおじいさんも、目の前に現れた秘境の景色に感動していました。
「実は先月、ウチの猫が亡くなってね。10年以上一緒だったから辛いんだ。」とポツリ。
彼がこの地を訪れたのは、そういう理由もあったのかな。
ようやく西の河原を望むことが出来ましたが、まだ油断はできません。
斜面の向こう側にも、険しい岩場が続いていました。
歩ける場所を探しながら、巨大な岩の間を登ったり降りたり。雨の日じゃなくて良かったです。
ようやく平坦な海岸に降り立つと、そこには昔の遊歩道と思しき階段が草に埋もれていました。
「私がむかし歩いたのはこれだったんだな。」と、おじいさんは再び感慨深げです。
次回……ついに聖域へ足を踏み入れる。
続く。
北海道内でこのような光景が見られるとは思っていなかったので、訪問した甲斐がありました(*^_^*)
山頂なのに西の河原とは…。やはり危険な場所を意味しているのでしょうかね…。
ここの西の河原はかつて航海の難所と言われていたようです。
なぜ「賽」ではなく「西」なのかは調べてみてもよく分かりませんでした(^_^;)
まさに一歩まちがえば冥界の危険地帯ですね。
秘境の旅は危険が付きものですが、古くから神聖な場所とされている所も数多いです。その地に宿る神様に頼りながらいつも探検しています(笑)。
一枚目の積み石がなんともシュールですね。
日本一の山の山頂にも西の河原と呼ばれる場所がありました。
ひとたまりもありませんね。くれぐれもお守りをたくさん身に
つけて秘境の旅をされてくださいませ・・・。(^^;)