ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

日本最強の秘境駅 小幌駅(前編)

2015-07-17 11:55:11 | ホルマリン漬け北海道 秘境編
(2009年取材 当時の記録に加筆・修正) 

 秘境駅訪問家・牛山隆信氏の「全国秘境駅ランキング」で堂々第1位、「キング・オブ・秘境駅」と呼ばれ、最近はマニアだけでなく一般の人にも有名となった駅が、室蘭本線に存在する。
 小幌(こぼろ)駅。もともと保線作業員のための駅であるため、周囲には深い森以外、何もない。後方は崖、両側はかなり長いトンネルに挟まれていて、どこに行くこともできない。唯一、海岸に降りる細い道はあるらしいが、その海岸も、まわりは断崖絶壁で、外界に出ることは一切できないという。この駅でいったん降りてしまうと、次の列車が来るまで駅から一切脱出不可能、まさに「陸の孤島」という言葉がぴったりの、すさまじい駅なのである。もちろん、降りる人はほとんどいない(いても、物好きか鉄道マニアくらい)。
 「キング・オブ・秘境駅」自分もその駅に降り立ってみたい。ということで、僕は小幌駅訪問の計画を立てることにしたのだが、なにしろ駅に止まってくれる列車が少ない(笑)。さすがに一般の人ならまず利用することのない駅なので、各駅停車も通過してしまうのだ。
 そんな少ない列車本数の中で、僕は午前11:34小幌駅到着の長万部行き下り列車で訪れることにした。しかし、この時間に駅に降りてしまうと、1つ問題があった。
 それは、帰りに乗る上り列車が午後15:26までないということである。つまり、小幌駅に約4時間も滞在することになってしまうのだ。他のプランも考えようにも、札幌からかかる時間や帰宅時間を考えると、僕が降りられるのはこの時間しかない。
 何もなくて誰もいない完全閉鎖空間で4時間も耐えられるのか…。そんな不安を胸に、旅は始まる。


・・・キング・オブ・秘境駅「小幌」駅から4時間脱出不可能!?襲いかかる特急列車の恐怖、秘密の入り江、そして見つけた謎の洞窟。はたして生きて帰って来れるのか!?
これは―
1人の高校生が、小幌駅4時間滞在に挑んだ
全記録である。



2009年10月24日・早朝。

さて、まず始発の地下鉄で札幌駅まで行き、6:48発「快速エアポート」に乗り込む。
今回、小幌駅訪問に使用するのは、JR北海道が毎年、休日・夏休みと冬休み限定で販売している「1日散歩きっぷ」。わずか2200円(注:2009年当時)でフリーエリア内の普通列車・快速列車が1日中乗り放題という超お得きっぷだ。普通にお金を払って小幌に行って帰ってくるよりも断然お得なので、なんともうれしい限りだ。

南千歳駅で快速エアポートを降り、7:22発東室蘭行に乗り換え。古くさい赤色の電車にかなり揺られて、9:04、ようやく東室蘭に到着。
次に乗る列車は約1時間の待ち時間があり、10:00、いよいよ小幌駅へ向かう列車が来たらしいので、ホームに降りる。

ホームにいたのは、かわいらしい2両編成。しかし車両に乗り込むと、とあるアナウンスが。
この列車は、豊浦駅で後ろの車両を切り離します。

…えっ、そんなのあり!?
札幌近郊ではまずあり得ない車両切り離しというアナウンスに、僕は少し戸惑ってしまった。豊浦駅と言えば、小幌駅の3つ手前の駅。やはり秘境だけに、利用者が少なくなるということか・・・。

列車は太平洋沿いをのんびり走る。この日は快晴なので、地平線まで見渡すことができた。
列車の低く味のある警笛を聞きながら、窓から浜辺の小さな村を眺めていると、気分は上京する若者である。
そして列車は豊浦駅に到着。アナウンスの予告どおり、駅員が出てきて、後ろの車両を切り離している。その作業風景は、人の全くいない秘境駅、小幌駅がじわじわと近づいているということを嫌でも実感させる物であった。もうすぐ、たった一人の4時間が始まるのだ。しっかり気を引き締めなくてはならなかった。

後ろの車両がなくなり、身軽になった鈍行列車は、まだ心の準備ができていない僕を乗せて、どんどん”秘境”に近づいていく。

列車は礼文駅に到着。とうとう次が小幌駅だ。しかし礼文駅周辺は、まだ人家も比較的あり、ほんとに次が「キング・オブ・秘境駅」なのか、と疑ってしまった。
しかし、その疑いはすぐに消えた。礼文駅を発車すると、列車は坂をどんどん登り、山岳地帯へ入り込んでゆく。トンネルも多くなってきた。そして3つ目くらいのトンネルに突入したところで、ついにその時が来た。
「まもなく、小幌です。」

利用者のほとんどいない駅なのに、他の普通の駅と同じように流れる女性のアナウンスが、やけに不気味だった。


・ついに小幌駅へ!

列車が、かなり長いトンネル内で減速し始めた。駅はもうすぐそこだ。
はっきり言って、まだ降りたくなかった。
これからたった一人で過ごすことを考えると、怖かった。
期待より不安の方が、断然、大きかった。

まだ心の準備ができていないが、列車は待ってくれない。降りるため、席を立ち、ドアへ向かう。
ドアのガラスに反射した乗客の様子をみると、全員、自分の方を見ている。「まさか、降りるのか!?」といった顔で。

トンネルを出たと同時に、ついに列車が停止した。
しかし次の瞬間、僕の不安はぶっ飛んだ。

アレ?やけにひとけが。
何と駅では7人ほどの作業員が保線作業の真っ最中。さらに、僕の後にもう1人、おじさんが下車した。この人も秘境駅マニアかな?
今までの不安は何だったんだろう。全然一人ぼっちじゃないではないか。少し安心した気分でホームに降り立つ。

自分とおじさんを降ろすと、列車はうるさいディーゼル音を響かせながら、ゆっくりと長いトンネル内に消えていく。
だんだんと見えなくなってゆく赤いライトを見送った。
うわ・・・。何この心細くなる光景・・・(汗)。


興奮冷めやらぬ状態で、改めて駅全体を見回してみる(一緒に降りたおじさんはどこかへ行ってしまった)。
…すごい!!なんという所に駅が!
かなりの山奥にあることは言うまでもないが、一言で言うと「トンネルに挟まれた駅」。


僕が降りた下りホームは、なんとトンネル出てすぐ。かなり短いホームなので、2両編成の列車が来ると(ときどきだが)、後ろの車両はトンネルの中、というふうになってしまうらしい。
鉄板でできた簡易型のなさけないホームである。
ちなみに、向かい側にある上りホームは、コンクリート製の比較的立派な物であった(こっちも短いけど)。


長万部側を見てみる。こっちもトンネル。反対側のトンネル出口から、こっちのトンネルの入り口まで、100mもないだろう。これが「キング・オブ秘境駅」と呼ばれるゆえんか・・・。
ホームの柵にくくりつけられた時刻表によると、1日に小幌駅に停車する列車は、上り(長万部方面)が5本、下り(東室蘭方面)が3本のみであった。それ以外はすべて通過してしまう。

保線作業員の方に変な目で見られながら、駅周辺を観察する。

下りホームにある駅名標。なぜかススのようなもので薄汚れている。その恐怖の理由は、このあと思い知ることになる。


ホームのすぐそばには、作業員の事務所か、休憩所とおぼしき建物があった。線路を挟んだ反対側にも、倉庫のようなものが。もちろん、中には入れない。


駅構内には3本の線路が敷かれているが、真ん中の一本は現在使われていない。3つあるトンネルの出口も真ん中がふさがれていた。
ちなみに、駅周辺は森林のみで、さぞ静かだろうと思っていたのだが、駅のはるか上の方に国道の橋が見え、自動車が橋を渡る「カコンカコン」という音がかすかに聞こえてくる。
むろん、その国道にたどりつくのは不可能であろう。


線路に立って撮影していると、突然、不気味なサイレンが鳴り始めた。しばらくすると、スピーカーから女性のアナウンスが。
列車が入ってきます。線路を横断しないでください!
急いで下りホームに避難する。


そのうち、トンネルの奥から「ドカン!!」という振動とともに、カビ臭い風が吹いてきた。列車がトンネルに入ってきたようだ。
列車が近づいてくるにつれて、その風がだんだんと強くなってきて、ついには台風並みの暴風に!あまりに強いので目も開けていられず、ホームに普通に立っていられない!
そして、列車の轟音がものすごい勢いで近づいてきた。嫌な予感・・・。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・。


ギャーーーーーー!!!
特急だった~!!



恐ろしいほどの暴風!!耳に突き刺さる爆音!!
響き渡る警笛!!


…列車は猛スピードで、あっという間にトンネルの中に見えなくなった。
このホーム、かなり狭く、限界まで後ろに下がっても目の前を特急が通過していくので、立っていると生きた心地がしない!

列車が去った後のホームは、ディーゼルの出すものなのか、濁ったほこりっぽい煙で覆われ、周囲がかすんで見える。なるほど、駅名標が汚れていたのはこのせいだったのか。
そう、この小幌駅、「キング・オブ・秘境駅」と呼ばれているが、幹線である室蘭本線に存在しているため、
頻繁に列車が通過する。
上り・下りの特急はもちろん、貨物列車、さらには1両編成まで、かなりの数の列車が最高速度で通過する。そのたびにこの恐怖を味わわなければいけない。

…ホームにいるのが怖くなったので、次は海岸に行ってみることにする。

次回!
不気味な洞窟を発見し…駅の謎も明らかに!

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