ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

(青森県むつ市)とびない旅館 ~ディレクターズ・カット版~ 後編

2021-10-19 22:31:32 | 日本全国!珍スポット・魔境訪問
2020年訪問。前編はこちら


2020年10月19日。午前8時ごろに気持ちよく起床。
深夜1時半、あれほどビクビクして布団に入ったというのに、いつの間にかぐっすり寝てしまったようだ。
故に残念ながら怪奇現象には遭遇できなかった。

とびないさんに挨拶しようと階段を降りると、台所で朝食の支度をしていた。
昨日の商品が見つかったよ~!」と嬉しそうだ。
どうやら昨晩寝る直前にボヤいていた、友人から探すよう頼まれていたモデルガンを無事に落札できたらしい。
その後、朝ドラ「●ール」の感想や戦争論、ミリタリートークなど、相変わらず朝から元気だ。
話に夢中になるあまり、作っていた豚バラの野菜炒めを焦がしてしまっていた。

ジャガイモ2個むいて!」と、私も台所に案内される。
そう、とびない旅館ではアトラクションの一つとして「とびないさんと朝食を作ろう!」が問答無用で組み込まれている。
一緒に「いもすり餅」を作るのだ。


この「いもすり餅」というのが、ココに来たら食べずに帰ることは許されない、とびない旅館の名物
下北の郷土料理のようだが、これがかなり絶品なんだとか。
とりあえず指示されるまま、ジャガイモをおろし金ですり、サラシで包んでデンプン汁をしぼり出す。


しぼった汁をつなぎにして小さく団子状に丸め、アジの煮干し、鶏肉と一緒に煮込む。
一方のとびないさんは野菜炒めにデスソースを入れている。
チ●ちゃん(N●K)で辛いもの食べると満足感が得られるって言ってたよ~」との故。


とびないさんが戦争の話に熱が入るあまり、鮭を焦がしてしまうなどしているうちに、昨日来ると言っていたむつ消防署の消火設備点検が来てしまった。
ほとんど朝食は出来ているため「ご飯食べてていいよ~」と言われ、ひとり台所に取り残される。
……ちなみに、駐車場の年代物の黄色い車(フェスティバ)はとびないさんの過去の愛車。ずっと置かれてある。

先に一人で食べるのも申し訳なく思ったので、しばらくテレビを見たり荷物整理をしたりして時間をつぶした。


結局点検は45分ほど掛かり、午前10時半、ようやくとびないさんと朝食だ。
白米or昨日の炊き込みご飯の選択制で焼き鮭、豚バラの野菜炒め、そしていもすり餅と大変豪華だ。


そしてこれもとびない旅館名物、聞いたこともない栄養ドリンク「スカールDX2000」がもれなくついてくる。
生卵に地元企業の納豆、味付け海苔と、ご飯に対してずいぶん多いなと思ったら「生卵をメレンゲ状にかき混ぜて納豆と合わせると粘り気が消える、ぜひ試して」とのことだった。
混ぜ方が足りずイマイチになってしまったが、ホタテ入り炊き込みご飯に納豆卵、そして生卵を追加でくれてこれまた贅沢。

楽しみにしていたいもすり餅だが、噂にたがわずまあ美味しいこと
すったジャガイモを丸めただけなのに弾力があってプニプニ、モチモチである。そして煮干しと鶏肉のダシが出た汁によく合う。
これもおかわり自由である。なんと素晴らしいことか。


食事をしながら、残念ながら座敷わらしに会えず怪奇現象を体験できなかったことを報告する。
だが、とびないさんは「風呂に入らず、快適なベッドでもないのに爆睡できたのは不思議な力が働いているからだよ」という。
ふむ……なるほど。


午前11時半、こちらもとびない旅館のアトラクションの一つ、道路を挟んだ向かい側の「下北妖怪ハウス」を見学させてもらう。
とびないさんが空き家を活用して作り上げたミュージアムである。




シャッターを開けてもらって内部へ入ると、まずはとびないさんの手による飛行機、戦闘機、戦艦、車などの完成品プラモがずらりと展示されており、圧巻である。


昨日会って早々盛り上がった旧・山田模型の車プラモや、私の入門キットだったアリイの1/32旧車シリーズもすべて揃っている。
すべて美しく着色されて仕上げられており感動である。
ジオラマ風に仕上げられた「終戦直後の大湊航空隊」はとびないさんの自信作で、展覧会で賞をもらったこともあるとか。
人物はパテなどを使ってイチから作り上げられている。


で、入った時から気になっていた鬼太郎やねずみ男、猫娘など妖怪の人形
かわいらしいイラストが描かれたベンチもある。
これらは、2003年にここむつ市で開催された「第8回世界妖怪会議」の時に製作されたもの。

まちおこしの一環として、パネラーに水木しげるをはじめ荒俣宏京極夏彦などを招待して行われたこのイベント。
下北妖怪夏祭り」も同時開催され、とびないさんが中心となって準備が進められ、これらの妖怪を商工会議所青年部らとつくりあげたそうだ。



館内に無造作に置かれた当時の資料には、とびないさんの作品と水木しげる氏が並ぶ写真が!
イベント後も下北を妖怪で盛り上げようという話もあったようだが、準備中のもめごと等々であまりうまくいかず、フェードアウトしたとか……。


さて、「下北妖怪ハウス」は2階建てである。
いいよって言うまで上ってこないでね~」ととびないさんは言い、階段を上って行った。どうやら準備があるらしい。




数分待ってから急な階段を上っていくと、そこには手作りの「八大地獄」が広がっていた。
巨大な閻魔像から始まり、臼でつぶされる「衆合地獄」や、嘘をついた者が舌を抜かれる「大叫喚地獄」などが、複雑に曲がりくねった通路に次々と展開される。
真っ暗な空間に赤、青などのセンス抜群のライトアップが効果的だ。




コミカルながら、細部までこだわった迫力あるジオラマは全てとびないさんの手作りだろうか。
これは徳島県「正観寺」とはまた違った見ごたえである。
最後にはちゃんと極楽もあるよ。






地獄を抜けると、突如リアルな商店街に迷い込む。
ここ、建物の2階だよな?と思わずにはいられない見事な場面転換である。


所々にとびないさんのコレクションであるブリキのおもちゃや、怪獣のソフビ人形が飾られており
昭和の雰囲気を演出。
そして、昔ながらの模型店を再現した一角には、これまたコレクションの年代物プラモが天井まで積み上げられ、説得力抜群だ。
個人で作ったとは思えないクオリティである。


最後に、離れにあるとびないさんの秘密のコレクションルームを特別に見せてもらった。
ここにも部屋を埋め尽くすほどの大量の昭和プラモ。いったい何か所にコレクションルームを持っているのだろうか。
見た事もない大型トラックや重機の模型、写真でしか見たことの無い、今は無き会社のものなど宝の山で、ついつい時間が過ぎるのを忘れてしまい話が盛り上がってしまう。
最後には駄菓子屋に売っていたであろう、年代物の小さな袋入りプラモを頂いてしまった。
ありがとうございます。頑張って作って持ってきます。


午後1時。昼前に出発する予定が、ついつい見るものが多くて大幅にオーバーしてしまった。
10時間以上マンツーマンでおもてなししてくれたとびないさんとお別れである。

最後には私の趣味を生かした「楽しく仕事をする方法」などのアドバイスもくれて、私を幸せに導こうとしてくれるいいおじさんだなと思った。
座敷わらしには会えなかったが、もしかしたらとびないさん自身が、この宿の座敷わらし的存在なのかもしれない。
何となく水木しげるの絵に出てきそうな風貌だし(失礼か)。

とびないさんは私が車で駐車場を出るまで、外で見送ってくれた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
とびない旅館(青森県むつ市田名部町8−6)
1泊2食付で6600円〜(とびないさんといもすりもちを作ろうプラン付)
※電話予約は2週間前に必要。また「一般の宿泊客ではない」旨説明し納得してもらう必要あり。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

完。

※本記事は青森ミステリー見聞録より記事を抜粋し、加筆・修正しております。
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(青森県むつ市)とびない旅館 ~ディレクターズ・カット版~ 前編

2021-10-19 22:31:10 | 日本全国!珍スポット・魔境訪問
(2020年訪問)
青森ミステリー見聞録より記事を抜粋し、加筆・修正しております。



唯一無二!超絶怒涛の圧倒的おもてなし!
妖怪テーマパーク&座敷わらしもいる……?

(青森県むつ市田名部町8-6)

青森県の北の果て、恐山で有名な下北半島のむつ市にあるとてつもないインパクトの旅館である。
私がその存在を初めて知ったのは、フジテレビのテレビ番組「何だコレミステリー」だったと思う。
座敷わらしの噂がある旅館を原田龍二が調査するシリーズで登場し、鏡の隅で動く白いカタマリの撮影に成功していた。

その後も「座敷わらしがいる旅館」としてネットでも度々ヒットしたが、調べていくうち、どうも妖怪のウワサ以前にオーナーがとんでもなく個性的らしいという事に気づいた。
まとめると下記の通りである。


・「とびないさん」という、プラモやモデルガンなど工作が趣味のおじさんが一人で切り盛りしている。
・館内は「とびないさん」のコレクションや創作物で溢れている。
・「とびないさん」はともかく話好きで、チェックインからチェックアウトまで
 終始マシンガントークを展開し、付きっきりでおもてなししてくれる。
・そのサービスの特性上、1日1組しか泊まれない。
 

……以上である。珍スポット好きにはたまらなく気になる場所ではないか。
という事で2020年10月、青森県の摩訶不思議な場所を巡る青森ミステリーツアーを決行する際、旅に最もふさわしい旅館という事で宿泊を決意したのだが、案の定、予約の段階から一風変わっていた。


電話を入れた際、とびないさんが「もしもし」とお出になったので「とびない旅館さんですか?」と聞くと「そうでございますけれども何か事件でございますでしょうか」と訳の分からぬ返答……。
戸惑いつつも「いえ、宿泊したいんですけど……」と伝えると
大丈夫?ちゃんと調べた?ここ普通じゃないよ??」と半笑いで呆れたようなご様子。

だが、これは想定内。
事前の下調べで、この旅館を利用する際は普通の宿泊客ではない旨、納得してもらう必要があるという事を知っていたのだ。
「日本全国の変わった場所を巡っている」「プラモ製作が趣味で、ぜひコレクションを見たい」「座敷わらしにも会ってみたい」などと慎重に伝えるとようやく「合格!」のお言葉が。やれやれである。


そしていよいよ宿泊当日、2020年10月18日
恐山の観光を終え、ついにむつ市のほぼ中心部、下北交通のバスターミナルや観光物産館のすぐ近くにある旅館に到着した。
時間は午後4時半過ぎである。

事前情報では、駐車場に車を停めるや否や、音を聞きつけたとびないさんが飛び出してくるという話だったが、車から降りてもしんと静まりかえっている。
しかし、年季の入った外観を何枚か撮っていると、正面のガラス戸がガラガラと開き、開口一番「大変な事に気付きました~」と笑顔のおじさん登場。手にはなぜか猟銃のモデルガンを持っている。

とびないさん(59)だ。
お姿はネットなどで何度も見ているので、有名人に会えたかのような感覚である。

何から突っ込めば良いか分からないが、ともかく大変な理由を聞くと、どうやら夕食の炊き込みご飯に入れるホタテを買い忘れていたらしい。
あとで一緒に行こうね。これも旅のうちでしょ。まぁ入って」と館内に入れてもらう。


マスクをせずに来客対応ができる最新システム(段ボールを重ね、顔部分に透明シートを貼ったもの)
などの説明を受けながら、とびないさんの事務所(兼制作場所、兼接客スペース)へと案内されると
さっそく荷物を置かせてもらうのもそこそこに仕事の話、政治の話などが次々と飛び出す。
廊下に旧・ヤマダ模型の車のプラモがあったので、私も再販版を作ったことがある旨を伝えると
話の分かる人でよかった!来るべくしてきたね」と大層喜んでくれた。
気に入ってもらえたようで良かった。


5時半ごろ、ホタテの買い出しのため一緒に車へ乗せてもらい、むつ市内へ繰り出す。
北海道から来た私のために、大間産のホタテをぜひ夕食に使用したいという。
生は焼くと出汁が出て最高だからね」と話す。

行きつけのスーパーや鮮魚店を巡り、3店舗目でようやく発見。喜ぶとびないさんを見て、
こちらもほっとする。
買い物中も模型の話が尽きないが、レジに並んでいるときに突然表情を変え
ところで、夜に何か『出る』のは大丈夫だよね?」と念押しされドキッとする。
そういえば「座敷わらし」の存在をすっかり忘れていた。

なぜ座敷わらしだと断定できるのか聞くと、妖怪研究の専門家が調査に訪れ、
その事象の特徴から座敷わらしと断言されたという。
興味深いので後でゆっくりお聞きするとしよう。


旅館へ戻ると「いろいろやってくるのでこれで遊んでて」と戦車のラジコンを手渡され、とびないさんは2階へ消えていった。
なんでも、モデルガンの修理に没頭するあまり、部屋の準備ができていないという……。
チープな戦車のラジコンは、とびないさんの手によって後退時に旋回するように改造されている。


事務所の隣にある、本来であれば食堂……のはずだが、机の上は作業中のモデルガンやプラモに占領されている。
壁には戦隊ヒーローのソフビや、アメコミのおもちゃなどが貼り付けられている。




なかなか立派な受付。薄暗い中でひとり写真を撮っていると、時計の7時の鐘がボーン、ボーンと鳴り出した。
これは結構雰囲気があるな……と急に怖くなる。
廊下には年代物のプラモが山積みに。見る限り、車、銃に限らず飛行機、船、建築など守備範囲はかなり広いようだ。

2階から降りてきたとびないさんが「これからご飯支度だから、それまでコレクション見てる?」と言うので、奥の部屋に案内してもらった。



かなり広い館内を一番奥まで進むと、元は宴会場だったとおぼしき大広間が。
電気が付けられると、ぜいたくに部屋全体にコレクションが散乱……もとい展示されており、圧倒されてしまった。



青いネコは、とびないさんと仲の良い青森のブロガー「ねこぜ」さんのキャラクター。ロボットの前には、なぜかGLAYのサイン入りポスター(2016年)まである。
奥には軍服各種と、戦車を走らせる自作のジオラマなど。



ガラスケースの中には、昭和アニメのキャラクター人形やメカの関連おもちゃがたくさん。特撮もお好きなようだ。
その他、スプレーで着色途中のプラモや制作道具などが机に置かれ、どうやらこの部屋では子どもたちへの制作教室なども開催しているらしい。


そして大広間の最も奥には、宿泊客のお供え物が並ぶ座敷わらしの祭壇があった。
なぜかとびないさんのファン?による肖像画まである。
しまった、私も六花亭のお菓子でも買ってくればよかった。


ご飯支度がひと段落したのか、とびないさんがやってきて展示物をいろいろ解説してくれる。
有線から無線に改造したラジコン戦車、アニメの通りにあらゆるギミックが仕組まれたメカ、苦労した戦闘機やロケットの模型などなど……。
詳しくは割愛するが、嬉々として語るとびないさんは少年のようだ。


午後9時15分、待ちに待った炊き込みご飯の完成だ。
ほらほら、出来たてのところ撮ってよ」と炊飯器を開けるポーズまで取ってくれる。サービス精神旺盛だ。
そのまま事務所(兼制作場所、兼接客スペース)でとびないさんと一緒に夕食だ。

おっしゃっていた通り、大間産のホタテがごろごろ入ったご飯は香りが最高。
好きなだけおかわりしていいよ!女性のお客さんだってたくさん食べてくんだから」という言葉に甘え、3杯ほど頂いてしまった。なんとも贅沢。


食後はそのままお酒を飲みながら、とびないさんの息つく間もないマシンガントーク
政治論、時事問題、地元の市議会議員のココではとても書けないゴシップネタ、土地トラブル……などなど。
ここも詳しくは割愛……というか、覚えてられない。突然話がぶっとぶので付いていくのも大変だ。
プラモの素組みはただの習作、消費」「落としたプラモの部品を手をかざして、念力で探し当てたことがある」などのありがたい(?)話も頂いた。

話の合間に、とびないさんの秘密のコレクション部屋や、2階の一室に作られたプラモ制作教室なども見せてもらう。
あぁ~、暗いのやだ」と言って、部屋を去るギリギリまで電気を消さないのが意味深で、少し怖かった。


いよいよ、気になっていた座敷わらしについて聞いてみる。
とびないさんによると、先代から引き継いだ築数十年のこの旅館は、見える人からすれば幼稚園のような場所だという。
かなり広大な建物内にとどまらず、屋外の敷地にも子どもたちが走り回っている状態らしい。

「何か変だな?」と思い始めたのは2009年ごろで、原発の整備員が泊まっていた部屋が
内側から鍵が掛けられ、扉が開かなくなる。
その後、女性の宿泊者がイヤリングや髪の毛を触られる、といったエピソードが増えていった。
体験談から1号室には男の子、2号室には女の子がいるといい、宿泊客の性別によって泊まってもらう部屋を分けているそうだ。
なお、とびないさんはその姿を見たことはなく「足音を2回聞いただけ」。


NHKのドラマ「赤毛の●ン」や「未来少年コ●ン」を見せられながら、なおもトークは続き、時間は深夜1時
時折うつらうつらするとびないさんを見て「もう、寝ましょう」と提案する。

ちなみに、きょう泊まってもらう1号室にも出たんだけど」ととびないさんは最後に切り出す。
心霊現象や妖怪否定派の人が冷やかしで泊まりに来て、その日は「いる」「いない」論争で半ば喧嘩状態になってお開きになったらしい。
翌日、とびないさんが朝ご飯の支度をしていると、2階からバタバタと慌ただしく降りてくる音がして
とびないさん、出た出た!いいことあるかな!」と興奮気味に報告したそうだ。
どんな現象に遭ったのかはあえて聞かなかったそうだ。

かなり信憑性の高い話だが、部屋に行く直前にそれを言うか!



とびないさんにおやすみを言い、ギシギシと鳴る階段を上って2階の部屋へ向かう。
ここまで、とびないさんの明るくにぎやかな人柄でかき消されていたが、
いざ一人になって急にしんとなると、その対比も相まって不気味な雰囲気が漂う。
南北に細長い館内は中央の廊下と共同の洗面所以外、消灯されている。


こんなに部屋数のある旅館なのに、いま館内に居るのは自分ととびないさんだけ。
とびないさんの「物理的に怖い状況だよね」という言葉が頭を巡る。


さて、長い廊下の突き当たり左側「1号室」に到着した。テレビ横の姿見が怖い。
チェックインから約9時間を経て、ようやく泊まる部屋を見たことになる。普通の旅館ではあり得ないだろう。
豆電球が灯された部屋に近づくにつれて、甲高い「ピーーー」という音が大きくなってきて早速身構えたが、部屋に設置された防災無線ラジオから発せられている音だった。もう。


洗面所の細長い鏡の前でぽつんと立って歯磨きしている時は生きた心地がしなかったが、何も起こらなかった。
廊下から部屋へ歩いて行く動画を撮ってみたりもしたが、これも違和感は無し。
セルフタイマーで自撮りしてみたが、何か変わったものは写っているだろうか??

もう少し検証したかったが、怖さがピークなのでさっさと布団に潜り込む。
いつもは完全に消灯するのだが、さすがに今日は豆電球以上に暗くできなかった。
まあ、「何か」がボンヤリと見えたらそれで怖いけれども。

後編へ続く。
コメント (2)
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(青森県むつ市)恐山

2021-10-17 21:49:39 | 日本全国!珍スポット・魔境訪問
(2020年訪問)
青森ミステリー見聞録より記事を抜粋しております。




・霊場恐山(青森県むつ市田名部字宇曽利山3-2)
約1200年前に、慈覚大師円仁によって開かれた霊場。「比叡山」「高野山」と共に日本三大霊場に数えられる。
火山ガスが噴出する一体の岩肌は地獄に、宇曽利湖畔の白砂の浜は極楽とされ、「人が死ねばお山に行く」という信仰と祈りの場として伝えられてきた。
今も故人をしのぶ信者が、日本各地から絶えず訪れる。


恐山へ向かう者がまず通らなければいけないのが、現世と霊界を隔てるこちらの「三途川」。
正確には、霊場が面する宇曽利湖(うそりこ)から唯一流れ出ている正津川。
湖が強酸性のためか、川面を覗くと水色とも緑ともいえない不思議な色をしている。
赤色の太鼓橋はかつては渡れたようだが、現在は老朽化により閉鎖されている。



人が亡くなって三途の川までやってくると、「奪衣婆」(左)が身ぐるみをはがし、「懸衣翁」(右)がその衣類を木の枝にかけ、その垂れ具合で罪の重さを計るという。
その後、閻魔様の前へ出されて極楽か地獄か、行き先を決められるそうだ。


改めて気を引き締めて三途の川を渡り、入山受付所へ。
いよいよ霊場へと足を踏み入れる。


総門をくぐった瞬間から空気が変わり、参道の傍らには巨大な卒塔婆が何本も立つ。想像していた通りの由緒正しき霊場の雰囲気だ。
本尊安置地蔵殿を参拝し、順路に従って地獄めぐりへ向かう。



宇曽利湖を中心に釜臥山、屏風山、剣の山など八峰が囲む霊場一帯は火山ガスの噴気活動が盛んで、硫黄臭の漂う荒涼とした風景が広がる。
あちこちから湯気が上がり、硫黄で黄色く色が付いた地面には草木が生えず、鳥などの生き物もほとんどいない。
火山岩を縫うようにして、1周3キロほどの参道が延びている。




至る所で回るカラフルなかざぐるまは、水子供養のため参拝者が立てたものだという。
無色の風景の中で鮮やかさが強調されているのが物悲しい。
また、これも参拝者によるものだろうか、大小さまざまな石が積み上げられて山のようになっている。



そんな参道に、「千手観音」「慈覚大師堂」「水子供養ご本尊」などがあり、参拝者は起伏に富んだルートを順番に回ってゆく。
岩のくぼみに置かれた賽銭は、火山ガスで変色してしまっている。


八葉地蔵菩薩」と、水子供養の地蔵群。
なお、恐山と言えば「イタコ」だが、常駐している訳ではなく、恐山大祭と秋詣りのみにいらっしゃるそうだ。
今年(※2020年)は新型コロナウイルス感染拡大防止のため休止とのこと。


血の池地獄」。池の底にある苔の変色によって、本当に真っ赤に見えることもあるそうだ。
この日は緑色だったため、予想していたほどおどろおどろしい雰囲気ではなかった。


参道は、早くして亡くなった子供が親を想う「賽の河原」を経て、
宇曽利湖畔の「極楽浜」に辿り着く。



これまでの荒涼とした道中とは一変し、青々とした水面に白い砂浜の美しい風景が広がる。
参拝者もほっと一息、湖畔で記念撮影する人も多い。
「極楽」とはよく言ったものだ。


湖を前に、東日本大震災の供養塔が建つ。
また、砂浜にもかざぐるまが何本か立っており不思議な光景。傍らに妊娠検査薬が置かれているものがあり、思わず「あぁ…」と声が出てしまう。
カラカラと回るかざぐるまは輪廻の象徴であるという。


極楽浜から総門へ戻る道中は、仏教の世界に8つあるとされる地獄になぞらえた場所を通る。
重罪地獄」「賭博地獄」、そして最も過酷とされる「無間地獄」。硫黄の臭いに耐えながら、火山ガスに気を付けて進まねばならない。


地獄めぐりを終えて総門へ戻り、車で「三途川」を渡り終えるとほっと一安心。
ツアー客などもおり、これまで恐山のイメージとして抱いていた恐ろしさ、不気味さはそれほど無かった気がする。
私が霊感が全くないためかもしれないが。

完。
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(青森県つがる市)JR五能線木造駅

2021-10-16 22:48:07 | 日本全国!珍スポット・魔境訪問
(2020年訪問)
青森ミステリー見聞録より記事を抜粋しております。



・JR五能線木造駅(青森県つがる市木造房松)


青森県つがる市内の「木造(きづくり)」地区。
少し古めの住宅や商店などが立ち並ぶ長閑な町並みだが、メイン通りの先に建つJR木造駅を見ると度肝を抜かれる。
誰もが一度は目にしたことがあるでろう、あの遮光器土偶の巨大オブジェが駅舎中央に張り付けられているのだ。その高さ17メートル
閑散とした駅前の風景には不釣り合いなほどの存在感があり、壮観だ。
実はフィギュアを部屋に飾っているほど遮光器土偶が好きな私。細部までよく作り込まれたディテールにしばし見入ってしまう。


駅舎は1992年に建設。モチーフとなった遮光器土偶(縄文時代晩期ごろ)はここつがる市の亀ヶ岡遺跡(※)から1887年に出土したもので、国の重要文化財に指定。地元では「しゃこちゃん」の愛称で親しまれているのだそうだ。
※2021年7月、「北海道・北東北の縄文遺跡群」としてユネスコ世界文化遺産に登録。

そんな「しゃこちゃん」および亀ヶ岡遺跡をアピールしようと、この奇抜な駅舎が建てられたというわけだ。
なお、列車接近時にはスリット状になった目が光るというギミックがあったそうだが、現在は子供が怖がるからという理由で停止しているらしい(未確認)。


右足付近が駅舎の入り口になっており、内部は有人のきっぷ売り場と待合室になっている。
駅の訪問記念のスタンプが4種類あって充実しているのが嬉しい限りだ(もれなく土偶付き)。
観光案内所も併設されているようだが、残念ながらまだ時間が早いので開いていなかった。


駅構内の至る所に「しゃこちゃん」がいるので面白い。
誇らしげに掲げられた金色のプレートによると「東北の駅百選」にも選ばれた駅らしい。
……ちなみに遮光器土偶、不思議な眼鏡を掛けたその見た目から宇宙人説も唱えられているが、実際は目の誇大表現なのではないかとのこと。



構内の写真を撮っていると、ちょうどよく五所川原方面に向かう普通列車が到着した。
古びた気動車に、待合室にいた数人の地元利用者が乗り込んでゆく。
この風景だけを見ると、北のはずれの風情あるローカル駅といった趣だ。


さて、駅の隣には縄文テイストな公園もある。
右側の竪穴式住居ふうの立派な建物はなんと公衆トイレ。左側の小さな建物は物置かと思いきや、石造りのベンチが置かれた休憩スペースだった。


(左)「木造ふれあいプラザ」と書かれた、こちらも竪穴式住居風の建物。公民館的な施設だろうか?
(右)駅前通りでひときわ目立つ年季の入った建物。歯科医院のようだが、現在も経営されているのだろうか?




駅周辺を散策してみると、やはり至る所に「シャコちゃん」。町内の掲示板やマンホールにまで。
ちなみに、土偶が出土した亀ヶ岡遺跡は「シャコちゃん広場」の愛称が付けられている。
肝心の土偶本体はというと、東京の国立博物館に収蔵されており、市内には縄文住居展示資料館「カルコ」があるが、展示の土偶は残念ながらレプリカ。
駅からは少し距離もあるので、申し訳ないが今回の訪問はパスした。



完。
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(青森県新郷村)大石神ピラミッド

2021-10-15 22:42:50 | 日本全国!珍スポット・魔境訪問
(2020年訪問)
青森ミステリー見聞録より記事を抜粋しております。


・大石神ピラミッド(青森県三戸郡新郷村戸来雨池)




青森県新郷村には世にも不思議なキリストの墓があるが、車で10分少々の場所には何とピラミッドもある。
竹内家(※キリストの墓の記事参照)の神代史によると、日本にはエジプトのよりも古い数万年前のピラミッドが7基存在しているといい、ここ大石神は昭和10年に発見された4基目。
ピラミッドの権威者・酒井勝軍によると、エジプトなどに見られる平面基礎から築き上げたものではなく、三角形の山の頂上に太陽石が置かれ、周囲に列石が配置されたもの。
十和田湖町と新郷村の境にある三角錐型の十和利山(標高990メートル)とを結ぶことで太陽礼拝所としての役割を果たしていたといわれる。


赤い鳥居をくぐると、配置された石を巡る散策路が整備されている。


順路を示す案内看板を頼りに獣道となった斜面を登って行くと、すぐに「太陽石」が現れた。
その昔は光っており、反射した太陽を礼拝するための石であったというから重要なものだったのだろう。
……残念ながら現在は苔むし、ただの岩にしか見えないが。


ぐるりと回り込むと、西方1メートルあまりで、割れ目が正しく東西を示しているという「方位石」が。
確かに人工的な割れ目のようなものが見受けられる(スマホのGPSで確認しておけばよかった)。


高低差のある順路を下ると「星座石」とされる大きな岩。
これに「めぼしい星座を記録しておいた」らしい。脇には小さな祠のようなものもあった。




どうもいくつかの岩が合体している(積み上げられている?)ようで、人が通れるように垂直に切り出されたような雰囲気もある。
岩と岩の間を進んでみると、終点には小さな洞窟のような空間が……。何かの儀式に使われていた?
崩れたら嫌なので、上半身だけねじ込んで撮影し撤収。


急斜面の下には、ひときわ大きな「鏡石」。
下方四囲12メートルの巨石で、かつては直立し表面に文字が彫刻されてあったが、残念ながら安政4年7月23日の大地震で倒れ、埋没したとされている(残念!)。
確かに言われてみると倒れたあとのような気もしなくも無い。

完。
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