ホルマリンのマンネリ感

札幌出身苫小牧在住、ホルマリンです。怪しいスポット訪問、廃墟潜入、道内ミステリー情報、一人旅、昭和レトロなどなど…。

るびあ

2014-08-12 22:31:15 | 好きです札幌

珍しく朝早くに目が覚めた。

もしかしたら自分一人?と怖くなって横を向くと、隣のベッドに母がいた。

窓から差し込む朝日のおかげで逆光になっていたが、こちらをやさしい笑顔で見ているのがわかった。

すべてが無事に済んで、ほっとしたような満足げな笑顔だった。

「あぁ、ついにこの時がきたのか…!」と、僕はベッドの中でワクワクした。


残念ながら、この後の肝心の場面は全く覚えていない。
かれこれ15年以上も前の記憶である。

あれ以来、久しぶりにこの場所を訪れた。
残念ながら建物はとっくの昔に解体されてしまったようで、資材置き場になってしまっていた。

しかし、目の前に広大な児童公園が広がっているのは相変わらずであった。





目を閉じると、かつての記憶がボンヤリと、途切れ途切れに浮かび上がってくる。

当時4歳であった僕は、親に付き合わされてずっとこの場所に滞在していた。
ここに居なければいけない理由があったからだ。
しかし、僕はずっと退屈だった。


「●●クンにこれあげるよ!」
ある日、従業員のおばさんが僕にプレゼントを渡してくれた。

見たことも無いくらいに古い、ボロボロのセドリックのトミカ。
ベッドの隙間に落ちていたものだそうだ。
おそらく以前に滞在していた子供が忘れていったものだろう。

変な赤い模様が入っていたそのトミカは、天井部分に小さな穴が開いていた。
「あぁ、タクシーのミニカーだ。上の部分が取れちゃったんだ…」
と少し後になってから分かった。

当時から古いものが大好きだった僕は、この思わぬプレゼントが非常に嬉しかった。

お気に入りのミニカーだったはずだが、現在はどこかに行ってしまった。





ある日、父に連れられて近所に買い物に出かけた。
父もずっと退屈していた。
家族がみんな、「その時」を待っていたのだ。

近所と言っても、まだ幼い僕にとっては長い長い道のりであった。
こうして久々にその距離を歩いてみても、それなりの距離がある。
よくこの距離を歩いたものだと我ながら感心する。

雨上がりの、じりじりとした日差しがとても不快だ。
すれ違う人々が、みな暑さに顔を歪めている。

目を閉じると、再び過去の記憶が浮かび上がる。


どんよりと厚く雲がかかった空の下に、青い大きな看板が見えた。
長い道のりを歩き、ようやく辿り着いたスーパーマーケット。
手前の横断歩道がやけに大きく感じられた。

この時もミニカーをもらった。
退屈しているだろうと思った父が、僕に買い与えてくれたプレゼントである。

あまり売っていないような、少し古い形をしたものであった。
古いもの好きの僕は、やはり喜んだ。

このミニカーは、恐らくまだ部屋の奥に眠っているだろう。





この周辺の記憶はほとんどないが、近くの道路沿いに小さな喫茶店があったのは覚えている。

ひらがな三文字。

屋根に掲げられた3枚のパネルに一字ずつ、巨大な白文字で書かれていた。
丸っこく書かれたその三文字が、子供の目には面白く映った。

やはり空は厚い雲に覆われ、どんよりとしていた。


その三文字の店名がどうしても思い出せない。

親に何度か聞いてもすぐに忘れてしまう。
聞いたことも無い単語である。


あの喫茶店はまだあるのだろうか、と探してみたが、どこにも残っていなかった。
残念ながら、あの可愛らしい3つのひらがなを再び見ることは出来なかった。

あの三文字を見るために、僕はまた目を閉じる。
そして遠い過去へと戻る。


珍しく朝早くに目が覚めた。

もしかしたら自分一人?と怖くなって横を向くと、隣のベッドに母がいた。

窓から差し込む朝日のおかげで逆光になっていたが、こちらをやさしい笑顔で見ているのがわかった。

すべてが無事に済んで、ほっとしたような満足げな笑顔だった。

「あぁ、ついにこの時がきたのか…!」と、僕はベッドの中でワクワクした。


家族みんなが待ち望んでいた、記念すべき日がやっと来た。
その日から、僕は「おにいちゃん」になった。
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