福島の友人、カンカンの家は
桃の畑と林檎の畑に囲まれて建っている。
訪れた８月の終わりの時期は
熟れごろの桃がたわわに実り、
林檎はそろそろ色づく兆しのころだった。
５年ほど前だったか、東北で花の仕事が入った時に
カンカンの家に泊めてもらい、
リンゴ畑の向こうの幼なじみの友達や
いろんな人にお世話になったことがある。
その時も同じように桃が実り、
リンゴがまもなく、という季節だった。
そう、確かにあの時と同じ
豊かな光景が広がっているのだけど . . .
これまでと変わらず、丹精込めて育てても、
今年は誰にも食べられないままかもしれない
３月11日以降の非情な現実。
この地の人々が心に受けた傷を
慮るにも私にはなにもできず、ただ辛かった。
安全な場所で穫れたという桃を頂いたが、
この夏は天候に恵まれたため
それはもう甘くみずみずしく、最高の味だった。
だからなおさら悔しいのだ。
鳥の鳴き声とともに美しい朝が来て、
今日の命を生きる花が咲く。
友人たちの笑顔と、交わされる挨拶。
あれは悪い夢だったのかも、
と思うほどの朝のひととき。
一日も早く、カンカンの美しい故郷に
平和な生活がもどりますように。
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