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シネマの森の迷走と探索

FBに投稿した映画作品紹介を整理し、再掲します。

☆は「満足度」(☆5個満点、★で補足)。

早川千絵監督「PLAN75」(2022年、112分)

2024-03-19 23:31:31 | 日本・2020年~
架空の話ですが深刻です。

高齢者問題の解決策として、75歳以上の高齢者で、申請すれば安楽死の権利を得ることができる法律(プラン75)が国会で採択されたという設定です。

78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は身寄りのないひとりもの。健康で身体は丈夫、ホテルの客室清掃員に従事。しかし、高齢を理由に解雇されます。生きていくための次の仕事として夜間交通整理員以外に見つからず、生活保護を受けるのに抵抗のあるミチは、プラン75の申請手続きをします。

役所の窓口で無料の「埋葬合同プラン」について説明する職員、岡部ヒロム(磯村勇斗)。他人とまとめて火葬・埋葬されれば、葬式や墓の費用の心配がないコースでした。そんなヒロムの窓口に幸夫(たかお鷹)が現われます。幸夫は20年間も音沙汰のなかったヒロムの叔父でした。

既に父親を亡くしており、叔父との交流を持とうとするヒロム。しかし、プラン75を心待ちにしていた幸夫は、75歳の誕生日に申し込みをします。多少の動揺を見せながらも、死に場所の施設に向かう幸夫。

死に場所の施設で診察台に横たわるミチ。酸素マスクからガスが流れれば、眠りに落ちて死亡するはずでした。隣の台で静かに死んで行く幸夫。だが、手違いからミチの
マスクにはガスが流れませんでした。

幸夫はせめて火葬は合同ではなく身内で行おうと奔走します。そして生き残ったミチは施設を抜け出し、・・・・。

中江裕司監督「土を喰らう十二ヶ月」(2022年、111分)

2024-03-18 19:54:14 | 日本・2020年~
水上勉によるエッセイ『土を喰らふ日々 わが精進十二ヶ月』が原案。

グループサウンズ「ザ・タイガース」の歌手、ジュリーこと沢田研二さん、味のあるいい俳優になりました!

舞台は信州。

啓蟄、立春、春分、・・・、立冬、冬至。季節が移ろう自然を背景に、初老の作家ツトム(沢田研二)は愛犬「さんしょ」と信州の山荘でひとり暮らし。

9歳の頃に禅寺へ奉公に出され、そこで精進料理を学んだ経験から、自ら「土に育まれた」野菜と山菜を採り、まかない料理をつくっては、日々の生活を原稿に記しています。時々、ツトムの担当編集者で若い真知子(松たか子)が訪れ、彼が手をかけた料理を堪能しています。

そのツトムは13年前に亡くなった妻、八重子の遺骨をいまだ納骨できずにいます。八重子の母のチエ(奈良岡朋子)を訪ねたツトム。八重子の墓をまだ作っていないことを咎められます。

その矢先、チエは亡くなり、彼女の葬儀はツトムの山荘で営まれました。真知子も東京から駆けつけ,かいがいしく手伝います。

葬儀が終わり、ツトムは真知子に山荘で一緒に暮らすことを提案。真知子は「考えさせて」と応じました。

直後、ツトムは心筋梗塞を患い倒れます。案じて同居を申し出る真知子。しかしが、ツトムは断ります。

夜、死を覚悟して眠りについても、朝は変わらず訪れます。チエと八重子の遺骨を湖に撒くツトム。後日、真知子が別の若い小説家との婚約の報告にやって来ました。祝福して帰したツトムは・・・・。

杉山嘉一監督「帯広ガストロノミー」(2022年、106分)

2024-03-08 23:05:54 | 日本・2020年~

帯広市開拓140周年・市制施行90周年を記念した作品。

「ガストロノミー」は美食学の意。

民間開拓移民の強靱な魂によって140年前に産声を上げた「帯広市」。その地を舞台に、人の想いや行動が途切れず繋がっていくことで未来が拓かれる様を描いた物語。
主人公は、独創的なアイデアと秀でたプログラミング能力を持ちながらも、極端に内向的で口下手な仕事人間、天笠航平(鈴木浩介)。三年前に料理好きの妻(田畑智子)を亡くし、その後、仕事に没頭して哀しみを紛らわせています。上司の黒岩と会社を立ち上げ、その業績は、急成長を遂げました。

しかし、家庭では息子の黎生との間にコミュニケーションはなく、心の距離は隔たっています。家庭生活と教育は、家政婦の美冴(瀧本美織)に任せきり。

ある日、元部下で帯広市に住み、チーズ製造に取り組む都築(渡辺大)からチーズが送られてきます。そのチーズが切掛となり、さらに料理系YouTuber「ガストロハイク:氷川遥」が十勝にいるという情報を知った黎生は、航平、美冴と一緒に帯広へとびます。

三人はここで「帯広ガストロノミー」の構想を実現する仲間たちに刺激され、さらにわけありの氷川遥(長谷川京子)と出会います。帯広の食材、広大な大地、仲間たちの友情にふれ、航平は人間らしさをとりもどし、黎生とのコミュニケ-ションを回復しますが・・・。

大森研一監督「未来へのかたち」(2021年、112分)

2024-03-07 23:08:07 | 日本・2020年~


舞台は砥部焼で有名な愛媛県砥部町。

砥部焼の窯をもつ一家の葛藤と再生を描いた作品です。

陶房「りゅうせい窯」を営む陶芸家、高橋竜青(伊藤淳史)は、妻の幸子(内山理名)、学生の娘・萌(桜田ひより)の三人家族。アルバイトで雇っている青年・村上武(飯島寛騎)がひとり。竜青の座右の銘は“結昇”(けっしょう)で、互いに結び合うように高め合っていこうという意味の造語です。

竜青の父は砥部焼の巨匠、竜見(橋爪功)。そして兄、竜哉(吉岡秀隆)がいます。かつては家族の仲は良好でした。しかしある時、竜青の母・典子(大塚寧々)が竜見と陶器用の土を採取しに行った際、彼女が別行動を取った後に遭難し、数日後に遺体で発見されました。竜青はなぜあの時自分たちを一緒に連れていかなかったのかと父、竜見を責め、以来、長く反目状態でした。

また兄の竜哉もその時以来、半ば放浪のように全国の窯を訪ねる旅にでて行方知れず。いまは大学教授のポストにおさまっていましたが、父とも弟ともほぼ没交渉でした。その龍哉がひょっこり高橋窯にやってきました。

砥部町ではオリンピック開催決定を切掛に、砥部焼で聖火台を作る企画が動き出しました。コンペに出す聖火台のデザインを練り始める竜青。娘の萌は興味を示して、デザインを考えます。

これを切掛に、家族のわだかまりが少しずつ消えていきますが・・・。

井上昌典監督「種まく旅人~華蓮のかがやき」(2020年、108分)

2024-03-06 23:12:08 | 日本・2020年~

金沢市の伝統野菜「加賀れんこん」をキーワードに、後継者不在に悩む農業の現実を見つめた作品。

蓮根を育て、収穫する労働の苛酷さが伝わってきます。

大阪・堺市の信用金庫で働く山田良一(平岡祐太)。彼の実家は金沢でれんこん農家。幼い頃から農業経営の難しさとれんこん栽培労働の苛酷さを知り尽くしている良一は、農業を継ぐのがいやで、都会での金融関係の仕事についたのでした。市役所で働く伊藤凛(大久保麻梨子)との結婚も間近。

そんな折、母(吉野由志子)から父親(綿引勝彦)が脳梗塞で倒れたと電話が入ります。蓮根栽培がいよいよ立ちゆかなくなります。良一は農業を引き継ぐか土地売却かを迫られます。

一方、農林水産省かられんこん農家の視察として神野恵子(栗山千明)が金沢へとやってきます。彼女は農業をとりまく環境が、古い家父長制に支えられ、男尊女卑の風習にそまっていることに疑問をもち、新しい理想的な農業女子像を夢見ていました。
恵子はそこで、市役所職員の谷(駒木根隆介)に案内され、地元のレンコン農家「高津農園」を紹介されます。高津(平山祐介)が身重の妻・美紀(柴やすよ)と共に営んでいる高津農園は業績好調で、恵子は農園の女性従業員や高津からレンコン栽培のコツなどについて教わりました。

良一の後継問題、凜との結婚、恵子の調査が三つ巴になってストーリーは進んでいきます。

三宅伸行監督「世の中にたえて桜のなかりせば」(2022年、87分)

2024-02-14 16:37:30 | 日本・2020年~


終活アドバイザーのアルバイトをしている不登校の女子高生が同僚の老紳士とともに、様々な境遇にある人の「終活」を手助けしていくなか、自分の生き方と向き合っていくというヒューマンドラマ。

尊敬していた教師の南雲先生(土居志央梨)が生徒からいじめをうけ学校を辞めてしまったことをきっかけに、不登校になってしまった女子高生の咲(岩本蓮加[乃木坂46])。

彼女は終活アドバイザーの事務所でバイトとして働くことになります。「依頼者の話を聞くだけの仕事」という仕事内容をたのみに応募した彼女は、依頼者に扮した先輩終活アドバイザーの敬三(宝田明)の相談にのるというネット広告のPR動画に出演。

仕事を終えた咲はニート状態の南雲先生のアパートに向かい、彼女の身の回りの世話をします。先生の精神状態は次第に悪化の一途をたどります。

終活相談の事務所には、次々に変わった人が相談にやってきます。遺書を書かねばならない仕事に就いたのだが、まだ健康で死ぬつもりのない自分はいったい遺書に何を書けばいいのかわからないという男。自分が経験してきた河川管理の仕事を動画に残しておきたいという男。

ある時、太平洋戦争時代に満州で暮らし終戦をむかえて日本に引き揚げてきた直後、自分も不登校児だった、と敬三から聞いた咲は・・・。

瀬々敬久監督「ラーゲリより愛をこめて」(2022年、133分)

2023-11-05 23:33:01 | 日本・2020年~

原作は辺見じゅんによるノンフィクション『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』です。

舞台はアジア・太平洋戦争期の満州、そしてソ連の強制収容所。

昭和20年(1945年)、妻モジミ(北川景子)と4人の幼い子供たちとハルピンで暮らしていた山本幡男(二宮和也)。アジア・太平洋戦争が激化するなか、現地招集で兵士となった幡男は、日本に帰還した妻子と離ればなれになり、ロシア軍の捕虜とされます。スベルドロフスク収容所、さらにハバロフスクの収容所に送られた幡男たちは、やっとのことで帰国のための帰還列車に乗車しましたが、途中で下車を命じられ、別の収容所へ。

冬期に零下40度にもなる過酷なシベリアで、強制労働に従事する幡男たち。生きる気力を失った仲間たちを、「諦めるな」と励まし続ける幡男。

その後、幡男は体調を崩します。彼をもっと設備の整った病院に移すことをもとめ、日本人捕虜たちは松田一等兵(松坂桃李)を先頭にストライキ。

2週間で病院から戻された幡男。咽頭癌の末期との診断でした。そんな彼に遺書を書くことを勧める捕虜の団長。

幡男は、1954年に45才で亡くなります。遺書を記したノートは没収。

1956年、ようやく帰国がかなった日本軍捕虜たちは、翌年から、収容所の仲間たちは幡男の家族の家を訪ね、記憶して来た幡男の遺書の内容を伝えます。収容所では日本語の書類は没収され、仲間たちは幡男の遺書を分担で暗記していたのです。

小泉堯史監督「峠 最後のサムライ」(2020年、114分)☆☆☆☆

2023-08-21 23:24:45 | 日本・2020年~
原作はベストセラーとしていまなお読み継がれている司馬遼太郎による歴史小説。動乱の幕末に生きた最後のサムライ、河井継之助の最後の一年を描いた歴史作品です。

慶応3年(1867年)、大政奉還。260年余りに及んだ徳川幕府は終焉をまつばかり。しかし、薩摩藩と長州藩のいわゆる薩長勢力はそれでは満足せず、徳川家の権力の完全消滅を目的に、王政復古の大号令を発布し、明治新政府の樹立を宣言します。

その頃、越後国を治めていた長岡藩は藩主、牧野雪堂(仲代達矢)のもと、家老に就任した河井継之助(役所広司)が藩政改革をとりしきっていました。

翌慶応4年、鳥羽伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争が勃発。越後の小藩、長岡藩の長老・河井継之助は東軍西軍いずれにも与せず、戦争回避を画策します。密かにガトリング砲などの近代兵器を備えて、長岡藩をスイスのような武装中立の藩にする準備です。

しかし、平和への願いもむなしく談判は決裂。継之助は徳川譜代の大名として義を貫き、西軍と戦う断を下しますが・・・。

出演は他に松たか子、田中泯、香川京子、榎木孝明、吉岡秀隆、佐々木内蔵之介、井川比佐志、など。

成島出監督「いのちの停車場」(2021年、119分)☆☆☆★

2022-10-20 17:17:02 | 日本・2020年~
在宅医療をテーマにした問題作です。

主要な舞台は金沢。

主人公は東京の救急救命センターにて勤務していた62歳の医師・白石咲和子(吉永小百合)とそこの事務員だった野呂聖二(松坂桃李)。

冒頭、自動車衝突事故でセンターに運ばれてきた重症患者の治療に携わる咲和子。そこに子どもが負傷者として運ばれてきます。応急の点滴が必要ですが、咲和子は手が回らず、そのため野呂が代わりに措置を行います。医者でない者が医療行為を行ったことが問題になります。咲和子は責任をとってセンターを退職し、金沢の実家へ戻って在宅医療専門の「まほろば診療所」で訪問診療医として働き始めます。

在宅医療をスムースにこなせると思っていた咲和子は、勤務初日からいきなりその難しさに直面します。スタッフたちの支えを受け、老老介護、脊髄損傷により四肢麻痺となったIT企業社長、セルフネグレクトの独居老人、政府の在宅診療推進キャンペーンを指揮した後自らが末期の膵臓癌となり出身地の金沢へ戻った厚生労働省官僚、小児がんの6歳女児などさまざまなケースに向き合います。

一方、咲和子の実家では高齢の父が骨折の手術入院を契機に「これ以上生きていたくない」と口にするようになります。元医師の父が望む積極的安楽死を巡り医師として、娘として葛藤する咲和子は・・・。

出演は他に,西田敏行、広瀬すず、小池栄子、西村まさ彦,泉谷しげる、など。

山田洋次監督「キネマの神様」(松竹、2021年、125分)☆☆☆

2022-02-04 10:28:08 | 日本・2020年~


原田マハによる同名小説の映画化です。

舞台は東村山市にある円山家とその近くの映画館「テアトル銀幕」。

円山家は家庭崩壊寸前です。祖父・郷直(沢田研二)はギャンブルと酒にあけくれる日々。競馬に相当、金をつぎ込んでいる様子。謝金返済の催促電話が娘の歩(寺島しのぶ)が臨時勤めしている会社にかかってきます。

祖母の淑子(宮本信子)と歩は郷直の乱れた借金まみれの生活ぶりに、もう生活の援助はしないと、激怒。ふてくされた郷直は近くの映画館へ。この映画館を経営しているのは寺林信太郎(通称・テラシン、小林稔侍)です。

郷直とテラシンは仲のいい友達で、若い頃、将来の映画人を目指し、同じ映画撮影所で働いていました。撮影所に出前の食事を時々届けていたのが淑子で、テラシンは彼女に恋心を抱いていたもののふられてしまいます。結局、彼女が結婚した相手は郷直でした。

郷直は映画監督をめざし、女優の桂園子(北川景子)を主役に起用した脚本「キネマの神様」を書きあげましたが、撮影での監督の仕事がうまくいかず挫折。会社に辞表を提出して映画界から離れ、淑子をつれて故郷に帰ってしまいました。

それから数十年。ぐうたら生活の郷直は孫の勇太(前田旺志郎)の協力で、かつて書いた脚本「キネマの神様」を書き直し、脚本コンクールに応募しますが・・・。