東海地区大会の準優勝校が選抜への出場を逃すという『聖隷クリストファーの悲劇』から日数が経過しても、話題に上り続けているということは、やはり世間的なインパクトが相当大きかったと言えそうですね。
この選考の裏には語られていない本当の理由が隠されている筈です。しかし、高野連と毎日新聞社は説明に補足することなく、早期幕引きをしたいという意図が見え見えです。
何やら様々な憶測が乱れ飛んではいますが、真実はその中にあるのでしょうか?
この話を進める上で外して通れないのが、「高野連に嫌われている学校」の存在です。当落線上に何校かが残った場合に真っ先に落とされる運命にある学校です。そして、ここには静岡県という東海地区でも特異な存在も起因しているように感じます。
東海地区では旧来から『東海三県』という仲間意識が根強くあり、「東海は、愛知・岐阜・三重の3県のことであり、静岡は含まない」という考え方が強く持たれていました。それがどういうことになるかと言えば、選抜出場枠が2校しかない東海地区で「愛知・岐阜・三重」の3県から1校も選ばれないという事態は決して認めないというものです。
話が逸れますが、「東海地区の高校数と中四国地区の高校数はほぼ同数である。しかるに選抜出場枠は前者が2校、後者が5校というのは余りにも不公平ではないか?」という人がいます。しかし、東海地区は4県、中四国地区は9県あります。高校数がほぼ同じと言ってもそれが不公平というのなら、夏の大会は不公平の極致ということになります。鳥取県と大阪府を比べて「どちらも1校しか出られない夏の大会は不公平だから見直せ」というのと同じことです。
大阪を2校にせよという声が出たとしても、鳥取をゼロにせよという声は聞かれません。それを言うなら、選抜に和歌山から2校選ばれたことも大いに批判されなければなりません。どっちに転んでも、砂かけ論に終始します。東海2校が問題だというなら、21世紀枠を完全撤廃して枠を増やせばよいことですよね。
選抜大会は限られた日程で開催することもあって、今の出場校数を増やすことは難しいと思います。ならば、32校しか出られないにもかかわらず、21世紀枠に3校分を当てはめることの問題点が議論されないことの方が、普通に考えればおかしいと思うはずなのですが・・!?
で、話を戻します。
聖隷クリストファーの野球を称して高野連は「頭とハートを使った野球」と言いました。これが落選のキーワードとなったとされています。対して、大垣日大は「個人の能力に勝っている」「甲子園で勝てるチーム」という理由で選ばれました。準決勝であわやコールド負けという試合をしたにもかかわらず・・・です。
その準決勝のイニングスコアは以下の通りです。
▽準決勝
大垣日大
200 000 210│5
200 044 00X│10
日大三島
(大)五島・山田・五島・山田・三松-西脇
(三)松永-野田
一方、聖隷クリストファーが決勝で日大三島に敗れた試合のイニングスコアは下記のようになります。
▽決勝
聖隷クリストファー
110 010 000│3
000 402 00X│6
日 大 三 島
(聖)今久留主・塚原-河合
(三)京井・松永-野田
日大三島との直接対決を比較すると、大垣日大が聖隷クリストファーを上回る要素はありません。内容を見ても聖隷クリストファーの方が優れていると言えます。
では、両チームの準々決勝までの勝ち上がりを見てみます。
【大垣日大】
▽1回戦
大垣日大
001 420 000│7
100 000 100│2
静 岡
▽準々決勝
大垣日大
010 001 100│3
200 000 000│2
享 栄
そういえば、大垣日大が静岡と享栄に勝ったことを高く評価する意見もありましたね。あくまで、結果論で何とでも言えますが(笑)
【聖隷クリストファー】
▽1回戦
津 田 学 園
011 001 01│4
100 210 43x│11
聖隷クリストファー (8回コールド)
▽準々決勝
聖隷クリストファー
000 100 003│4
002 100 000│3
中 京
▽準決勝
至 学 館
040 100 003│8
000 030 004x│9
聖隷クリストファー
逆転・逆転で勝ち上がった聖隷クリストファーの「頭とハートの野球」の真骨頂となったのが準々決勝の中京戦の9回です。公式記録には中京の投手・瀬戸亮太の走塁妨害としか残されていませんが、三本間に挟まれたランナーが故意に走塁妨害を狙ってぶつかりに行った結果だということです。日頃から隙あらばと狙う姿勢が「勝利至上主義で高校生らしくない」という意見が出たそうです。それなら大垣日大の「甲子園で勝てるチームを選んだ」という選考理由と大いに矛盾しているのではないでしょうか?
以前、熊本の済々黌がショートライナーで3塁ランナーがホームへ突っ込み決勝点をあげて勝利した試合がありました。刺殺時のアピールプレーの盲点を突いた頭脳プレーと称賛されたものです。しかし、これも日常的に隙を狙って練習していたそうです。これは公立進学校らしいプレーと褒めたたえられたのに、今回の聖隷クリストファーの故意に走塁妨害を狙ったプレーは「勝利至上主義で高校生らしくない」と批判され、選抜出場を逃した理由の一つとされた模様です。
何が違うのかというと、済々黌は公立進学校で聖隷クリストファーは私学だということです。選考の根底に「力で劣る公立校が頭を使って点を取る」プレーは称えられ、「力で劣る私学が同じことをする」と勝利至上主義と批判されるという、公立校の優位性を高野連が暗黙の内に認めているということです。同じ静岡県の学校でも、静岡がこれを行ったとしたら同様の批判を受けたかどうか?
結局のところ、東海地区高野連は「聖隷クリストファーを選びたくなかった」「汚いプレーをする学校だから落とした」とはっきり言えば良かったのです。そういう変なところに気を配るからモヤモヤが残るのです。
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勝利至上主義を批判して21世紀枠を肯定しながら、一方で「甲子園で勝てるチーム」を選んだという、高野連のダブルスタンダードが今回の悲劇の本質のように感じます。「嫌いだから選ばない」という最も人間らしい理由であったのに、言い訳と嘘で塗り固めようとしたからボロが出たというのが本当のところではないでしょうか? 当分、この問題は議論され、やがて時間と共に忘れ去られるのでしょうね。そうやって不可解な選抜が繰り返されるのでしょう。
一方、選抜に出場する大垣日大ナインは大会前からヒール扱いされて、負ければ大いに批判されるでしょう。この不可解な選抜の影響は落選した聖隷クリストファーだけでなく、選ばれた大垣日大にも不要なプレッシャーという重荷を背負わせました。「地区大会は予選ではない」ならば、優勝した学校が選抜されなくても不思議ではないですよね。「あの学校は準優勝したけど、選考委員が嫌っているので落選させました」と正々堂々と言えないならば、今回の悲劇の理由が分からないままに風化していくのでしょう。
本当のところが何なのかは私も分からないのですが・・・!?
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高校野球が勝利至上主義ではいけないならば、何のために優勝を目指すのでしょう? 勝利至上主義を否定するなら大阪桐蔭などは選ばれないはずなのですが(笑) 神宮大会優勝校を落選させたら、高野連を見直しても良いですね(爆)
ともあれ、選抜はやって来ます。コロナごときでゴタゴタするのだけは、もう御免被ります。普通に有観客で実施していただきたいものですね。
よろしくお願いします。