いせ九条の会

「いせ九条の会」の投稿用ブログです(原稿募集中)。
会の趣旨に賛同される方、メールでご投稿ください。

「宇宙基本法案」衆院を通過/山崎孝

2008-05-16 | ご投稿
「宇宙基本法案」が年5月13日衆議院本会議可決されて、参議院にて送られてしまいました。この法案に反対する科学者たちの声明文を紹介します。なお、インターネット上で署名運動を行なっています。

声明文 すべての国民の皆様 国会議員の皆様

我が国の宇宙政策は、1969年の「我が国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」によって行われています。

以下にその全文を記します。

我が国における地球上の大気圏の主要部分を越える宇宙に打ち上げられる物体及び その打ち上げロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び人類社会の福祉を図り、あわせて産業技術の発展に寄与すると共に、進んで国際協力に資するためにこれを行うものとする。

これまで、この決議は、あらゆる軍事利用を禁止するものと解釈されてきました。

ところが、現在国会で審議中の「宇宙基本法案」は、この決議を逸脱し、我が国による宇宙の軍事利用を許容しようというものです。この法案は以下の3つの問題を孕んでいます:

1. 「宇宙基本法案」は宇宙の際限なき軍事化を招く。

2. 「宇宙基本法案」では「日米衛星調達合意」が撤廃されない(町村信孝官房長官2008年5月9日衆議院内閣委員会答弁など)ので、宇宙の産業利用はあり得ず、結局宇宙産業は「軍需」という官需に頼ることになる。

3. 「自主・民主・公開」は学問のいのちなのに、「宇宙基本法案」では触れられていない。(以下略)

★コメント 「宇宙基本法案」は、最終的には日米で宇宙空間にミサイル迎撃システムを構築するため、日本の科学技術を宇宙空間で軍事利用できるようにするものです。このような計画を進めれば日米と軍事的に対立関係にある国は軍拡に走ります。米国のミサイル迎撃システムを東ヨーロッパの国に配備しようとする問題で、ロシアは警戒心を露にして米国と鋭く対立しています。これを見ただけでも容易に推察できます。

近年は自民党の主導で公明・民主を抱きこみ、自衛隊の海外活動が本来任務に格上げされました。現在、検討中の恒久法は海外での武力行使が想定されています。核を持ち込めさせないとした原則も原子力空母の母港化で危うくなっています。

平和憲法の規定に沿った原則が次から次へと破られています。このままではいけないと思います。参議院選で自民党が大敗北しているにも関わらず、日本軍事化に拍車が掛かっています。問題は日本の軍事化に対して民主党が抵抗勢力となりえないことです。ここのところを国民は理解しない限り、庶民に対する負担が増しているのに、税金が軍拡に使われることを止めることはできません。「宇宙基本法案」に反対したのは社民党と共産党です。

男性顔まけの猛々しい心の女性議員/山崎孝

2008-05-14 | ご投稿
【「母の日」平和行動/イラク撤退を要求/ワシントン】(2008年5月13日付「しんぶん赤旗」)

 【ワシントン=西村央】「母の日」の十一日、米国の反戦女性団体「コード・ピンク」が呼びかけた平和行動がワシントン市内でおこなわれ、イラクからの米軍撤退などを市民に呼びかけました。

 会場では「母の日」の発祥となった、南北戦争直後に夫や子どもを戦争に送るのを拒否しようという一八七〇年のジュリア・ハウさんの「さあ、立ち上がろう」という宣言を参加者に配布。反戦イラク帰還兵も母親とともに駆けつけました。

 「コード・ピンク」のメンバーで、シリアやヨルダンでイラク難民の実態を調査してきたメディア・ベンジャミンさん(45)は「イラクでは国民の生活も、大学も、医療機関もひどく破壊されている。難民には心の傷もある。イラク戦争で息子を失ったお母さんにも呼びかけ、米軍は撤退すべきだという声を高めよう」と訴えました。

 参加者は、集会後、ピンクのカーネーションを手に市内をパレードしました。(以上)

★【コメント】2008年5月14日の朝日新聞「ひと」欄は、佐藤紘彰さんを《男性遍歴がスキャンダルだった和泉式部。明治期に女性解放を唱えた平塚らいてう。古事記以降の女性歌人の系譜をたどる英書『日本の女性詩歌集』を米国で出した》と紹介しています。佐藤紘彰さんは近年、米国で反響があるのは与謝野晶子だといいます。「君死にたもふことなかれ」の言葉が、イラク戦争に揺れる米国学生の胸に響くといいます。

 2008年5月に発表された9条世界会議の声明文「戦争を廃絶するための9条世界宣言」の中で、

《…このような9条は、単なる日本だけの法規ではない。それは、国際平和メカニズムとして機能し、世界の平和を保つために他の国々にも取り入れることができるものである。9条世界会議は、戦争の廃絶をめざして、9条を人類の共有財産として支持する国際運動をつくりあげ、武力によらない平和を地球規模で呼びかける。

 人類は、戦争のない世界に向けてたえず努力してきた。歴史の中で、土着の伝統や偉大な人物たち―とりわけ女性たちは戦争に積極的に反対してきた―は、たえず人類を平和へと導こうとしてきた。》と述べています。

戦争に積極的に反対するとされている女性たちですが、しかし、現在の自民党の女性議員 小池百合子元防衛相は「現行憲法で自衛隊は軍の位置づけになっていない。軍法会議の設置が急がれる」などと述べ、日米同盟のための9条改憲論を展開しています。「自衛隊のいるところが非戦闘地域」と珍妙な国会答弁をした小泉元首相は小池百合子議員を将来の首相候補と持ち上げているそうです。

また、映画「靖国」を反日映画と捉え検閲まがいの上映会を要求した自民党の稲田明美議員は、日本の前途と歴史教育を考える会で、南京虐殺事件を否定的に捉える「百人切り」訴訟の勉強会の講師をしていました。これに目をつけた安倍前首相が福井1区に刺客として送り込み僅差で当選させた人物です。新憲法制定議員同盟の役員をしています。

かように二人の女性議員は、男性顔まけの猛々しい心を持っています。

サンゴは世界の宝なのに/山崎孝

2008-05-13 | ご投稿
5月13日のNHKの「お元気ですか日本列島」は、沖縄県大浦湾の海中の美しいアオサンゴの大群落を写していました。この番組でも触れていましたが、大浦湾に普天間飛行場の返還に伴う代替海上施設案が検討され、大浦湾にあるキャンプ・シュワブ水域がその移設先に決定されています。

キャンプ・シュワブは、国道329号を挟んで、名護市の久志岳を中心とする山岳・森林地帯のシュワブ訓練地区と辺野古の海岸地域にあるキャンプ地区からなっています。同施設では、実弾射撃訓練や水陸両用訓練が実施されており、訓練に伴う原野火災等の事故も発生しています。

大浦湾のアオサンゴの大群落は、長さ80メートル、幅27メートル、高さは12メートルあります。石垣島の白保海域と共に日本では大浦湾だけです。

番組は、サンゴは世界の宝と紹介していました。このサンゴに打撃を与えるのに、戦争と結びつく米軍基地を移設することは、価値判断の基準がずれています。

新憲法制定議員同盟は新憲法に「自然との共生を信条に、美しく豊かな地球環境をまもる」目標を掲げています。国家の最高法規の憲法に、美しく豊かな地球環境をまもることを掲げるのであれば、現在、失われる可能性のある、美しく豊かな地球環境を見殺しにしていては意味がありません。美しく豊かな地球環境を保つ題目は、空念仏に過ぎなくなります。

再度「宇宙基本法案」について/山崎孝

2008-05-12 | ご投稿
5月9日、与党と民主党は「宇宙基本法案」を国会に提出し、わずか2時間の審議で内閣委員会を通過させました。今国会で成立を図ろうとしています。「宇宙基本法案」は、今までの平和目的限定の宇宙開発が軍事目的の開発を可能にするものです。

この法律が出来れば、ミサイル防衛の中核となる高度ミサイル監視衛星の導入などが出来ます。ミサイル防衛の究極は、相手のミサイルの無力化を図ることです。この目論見は相手を警戒させ軍拡に向かわせる危険があります。

ミサイル防衛を進める根拠に日本への軍事的脅威の存在があります。日本への脅威を根拠にミサイル防衛を推進してきました。この事例を示しますと、北朝鮮のテポドン1号(衛星実験という説もある)は、1998年8月に発射実験を行われました。日本のミサイル防衛の研究開発は、システムの有効性と膨大な経費を要するため躊躇していました。しかし、この実験を契機に1999年に研究と開発を進めることが決めています。だが配備はしないという考えは示していました。しかし、2006年7月に北朝鮮のテポドン2号の発射実験を背景にして、2007年3月と11月に埼玉県の入間基地、千葉県の習志野分駐基地に陸上迎撃型のPAC3が配備されました。

日本への脅威を考えて見ます。冷戦時は盛んだった旧ソ連の脅威の宣伝は、今は影を潜めています。現在、一番宣伝が盛んなのは北朝鮮の脅威です。しかし、北朝鮮の核の廃棄の問題は6者協議で取り組まれ、北東アジアの平和と安全のメカニズム作りを目指しています。

現在は6者合意の第2段階を取り組んでいます。焦点の北朝鮮の核の申告について、5月11日付の東京新聞は、《ソウルの米国大使館は10日、核計画申告問題で北朝鮮が米国側に提出した資料について、1986年以降の寧辺の実験用黒鉛減速炉と核燃料再処理施設の稼働記録だと明らかにした。同資料は「申告が完全で正確であるかを検証する重要な第一歩になる」としており、米国は内容を慎重に分析する方針だ。核施設の無能力化作業については「11工程のうちの8つが完了した」と説明、実験用黒鉛減速炉の約8千本ある使用済み核燃料棒は「3分の1以上が抜き取られた」としている。資料は訪朝していたソン・キム米国務省朝鮮部長に提出された》と報道しています。

米国は核の申告が完全なものと判断すれば、北朝鮮のテロ国家支援の指定解除を行なう意向を示しています。このように進む状況を見れば6者協議が大きく後退して崩壊するとは思えません。6者協議の原点は、2005年に北朝鮮は6者協議で、北朝鮮の安全を保障すれば軍事用の核兵器を廃棄すると約束し、米国は北朝鮮の核兵器の廃棄を実現すれば安全を保障すると約束していることにあると思います。

中国の脅威の宣伝もありますが、中国の国家主席が来日、日中共同声明で相互に脅威にならないことを確認したばかりです。日中は経済面においては相互扶助の状況となっており、中国は交易で生きる日本の最大の輸出国です。

「宇宙基本法案」趣旨説明で自民党の桜田義孝議員は「安全保障環境や国際情勢も変化しているため、宇宙開発利用を日本の国家戦略に位置付ける」と述べました。北東アジア情勢の大きな変化の特徴は、冷戦時には鋭く対立したロシアと米国、中国と韓国、中国と米国が、6者協議の枠組みで東北アジアの平和と安定のために協力し努力していることです。

現在の韓国と北朝鮮は少しギクシャクしていますが、基本的な関係を二つの事例で見ると2007年6月21日に高圧の電気を送ることができる南北間の送電線が59年ぶりに連結された。韓国電力はこれまでも、汝山変電所を通じ1万5〇〇〇キロワット程度の電気を変圧した形で開城工業団地に送電してきたが、今回の送電線完成で飛躍的に電力供給が増えることになった。朝鮮半島を縦断する鉄道も軍事境界線を越えて連結されています。この鉄道を使用した定期貨物列車の運行が開始されています。

日本のミサイル防衛システムの経費は、海上迎撃型、地上迎撃型と合わせて、1999年の研究開発から2007年度までに5,638億円を投入され、2008年度は1,338億円の予算が見積もられ、現在の計画完成まで1兆円を超えると言われます。更に日米共同で宇宙空間からミサイルを迎撃する次世代ミサイル防衛システムが検討されています。

このように膨大な経費がかかるミサイル防衛計画は、国家の財政の逼迫を理由に庶民に対して負担増が続いている政治と比較されて検討されなければならないものと思います。6者協議の到達点、北東アジアの平和と安全が達成されればミサイル迎撃システムは「宝の持ち腐れ」のようなことが起こると思います。

 「宇宙基本法案」は総則の条項に「日本国憲法の平和主義にのっとり」との文言が入っています。1969年5月の国会決議で確立した宇宙の平和利用の原則を放棄しておいて、平和主義に則りとはよく言えたものです。憲法の示す平和主義とは、周知のように国際紛争を武力の威嚇や行使で解決しないことです。具体的には、平和外交を徹底し、ミサイルの飛ばない北東アジアの平和な環境を築くことに最大限努力するだと思います。

憲法9条を守る根っこは、政治記者の想像以上に張っている/山崎孝

2008-05-11 | ご投稿
【「9条」の集客力】(2008年5月10日の朝日新聞「論説委員室から」国分高史論説委員)

3日間でのベ2万2千人。こんなにたくさんの人が集まるとは予想していなかった。4日から千葉市の幕張メッセで開かれた「9条世界会議」のことだ。

 「武力によらない平和、という9条の考え方を世界に広げたい」。翻訳家の池田香代子さんらの呼びかけに、世界各国から賛同者が集まったイベントだ。

 北アイルランドの平和運動家でノーベル平和賞のマイレッド・マグワイアさんの講演や歌手のUA(ウーア)さんらのライブなど多彩なメニューだった。

 実行委は「初日で4千人ぐらい」と予想していた。だが、労組などを通じた宣伝とは別に、ネットで知ったらしい若者たちが初日だけで1万5千人も押し寄せ、3千人が会場に入りきれなかった。

 「9条の交戦権の否認は、世界の多くの人々を勇気づけてきた」。マグワイアさんのこんな言葉に送られた拍手は、人気アーティストの熱唱に寄せられる喝采と同じ種類のものだった。

その3日前。改憲派議員が開いた集会では、安倍首相が「憲法を自分たちで書く決意が、新しい時代を切り開く魂につながる」と声を張り上げていた。

安倍さんの力みように比べ、幕張に集まった人たちの言葉や掛る舞いは、とてもしなやかで自然だった。

 憲法9条は、ふだん国会で取材をしている政治記者の想像以上に広く、深く、若者たちの間に根を張っているのではないか。世界会議の盛況を見て、こんな思いを強くした。

憲法の平和主義を愚弄した「宇宙基本法案」/山崎孝

2008-05-10 | ご投稿
【防衛目的での宇宙利用容認 基本法案、衆院委可決】(2008年5月9日付東京新聞)

自民、公明、民主三党は共同で九日、従来非軍事を原則としていた宇宙利用を防衛省による偵察衛星の開発運用など非侵略の防衛目的でも認める「宇宙基本法案」を衆院内閣委員会に提出した。

同日午後、委員会で可決した。今国会で成立する見通し。

法案は、一九六九年の国会決議以来の宇宙開発利用の非軍事原則を緩和。

宇宙条約やその他の国際約束に従い、憲法の平和主義の理念にのっとった上で「安全保障に資するよう行う」として、防衛目的の利用に道を開く内容となっている。

趣旨説明で自民党の桜田義孝議員は「衛星利用測位システム(GPS)などが生活に重要な役割を果たし、安全保障環境や国際情勢も変化しているため、宇宙開発利用を日本の国家戦略に位置付ける」とした。

法案は、政策の司令塔として内閣に首相を本部長とする宇宙開発戦略本部を設け、施策の推進のために宇宙基本計画を策定するとしている。

また、法施行後一年をめどに、本部機能の内閣府移行や宇宙航空研究開発機構など関係機関の組織見直しをする。(以上)

★コメント 法案の趣旨説明で自民党の桜田義孝議員は、「安全保障環境や国際情勢も変化しているため、宇宙開発利用を日本の国家戦略に位置付ける」と述べています。国際情勢が変化している方向は、北東アジアの地域ではミサイルの飛ばないようにする環境作りが6者協議で取り組まれていることです。6者協議は第2段階にあり、5月8日の報道では、北朝鮮は核の申告に関係する核施設の稼動記録を米国に提出したと伝えられています。米国の高官は「北朝鮮がこうした文書を出したのは初めてのはずだ」と評価しました。

「宇宙基本法案」はミサイル防衛と不可分の関係にあり、宇宙での軍事利用を解禁にしてミサイル防衛を推進することです。

「宇宙基本法案」は《1969年の国会決議以来の宇宙開発利用の非軍事原則を緩和。宇宙条約やその他の国際約束に従い、憲法の平和主義の理念にのっとった》としていますが、今まで守っていた平和利用の原則を消滅させておいて「憲法の平和主義の理念にのっとった」とは、憲法の理念を愚弄するものです。

脅威とならないことを日中は確認した/山崎孝

2008-05-09 | ご投稿
「日中友好の種、次代に」 胡主席、早大で講演(2008年5月9日中日新聞)

来日している中国の胡錦濤国家主席は8日、東京都新宿区の早稲田大学で学生ら900人を前に講演し、日中関係は「歴史上の新たなスタート地点に立ち、さらなる発展のチャンスを迎えている」と述べ、未来志向の関係に立ち、将来を担う青少年交流の重要性を強調した。また「中国は防衛的な国防政策をとり、軍拡競争をせず、いかなる国に対しても軍事脅威にはならない」とし、平和的発展の道を歩むことを公約した。

胡主席は中国の改革開放から30年間の歩みを紹介し、「日本の対中円借款が中国のインフラ整備や環境保護、エネルギー開発などの近代化に積極的な役割を果たした」と感謝の意を示した。「両国は一方が勝ち一方が負ける関係ではなく、共に勝つパートナーとなるべきだ」とした。

一方、今回の訪日で初めて歴史問題に言及し、「日本軍国主義が発動した侵略戦争により、中華民族に深刻な災難をもたらし、日本人民にも損害を与えた」と指摘。「歴史を強調するのは恨みを持ち続けることではなく、歴史をかがみに未来へ向かうためである」と強調した。

1984年に3000人の日本人青年を中国へ招いた経験を語り、「青年時代にまいた種は一生のものとなる。友好の種を代々に伝えていかなければならない」と主張。その一環として今年、同大学の学生100人を中国へ招待すると表明した。(以上)

★ コメント 胡錦濤国家主席が中国人を代表して「日本軍国主義が発動した侵略戦争により、中華民族に深刻な災難をもたらし、日本人民にも損害を与えた」と考え述べている状況で、日本の新憲法に「香の高い」という文脈で歴史を書くことが、日本の地位を高めるとは思いません。現行憲法は前文で、政府の行為により再び戦争はしない、と述べています。これは言うまでもなく過去の日本の戦争を教訓とした言葉です。

現在の中国は内政問題を見ると民主主義の到達段階は遅れています。チベット問題ではチベット人の心に配慮を欠くことで批判を受けています。しかし、その対外政策は、6者協議の場では、議長国として北朝鮮の核の問題を解決し、北東アジアの平和構築を目指し努力しています。東南アジア諸国との関係は韓国や日本を含め共同体を作ろうとしています。中国が日本の脅威になると考える必要はないと思います。今回の共同声明では、相互に脅威にならないことを確認しています。

福田首相の「傍論。脇の論ね」の発言に対して/山崎孝

2008-05-08 | ご投稿
福島重雄 元判事は、2008年5月1日付朝日新聞の記事で、《名古屋高裁判決は裁判のあり方としては常道》、日本国憲法第81条の規定では《「司法の審査に服さない国の行為」の存在を考える余地はない》と述べています。以下、その記事を紹介します。

【司法は堂々と憲法判断を】(新聞の見出し)

 航空自衛隊のイラクでの派遣活動について、名古屋高裁が4月17日に出した判決の中で、憲法9条に違反するとの判断を示した。9条をめぐる裁判での違憲判断は、私が札幌地裁の裁判長時代に言い渡した「長沼ナイキ基地訴訟」の自衛隊違憲判決以来、実に35年ぶりのことだ。

 国防など高度に政治性のある国家行為については、司法は判断権を有しないとする、いわゆる「統治行為論」という考え方がある。しかし私は、判決でこれを採用しなかった。なぜなら憲法に違反する考え方と言わざるを得ないからだ。憲法81条は「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則または処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と規定しており、このような憲法のもとで、「司法の審査に服さない国の行為」の存在を考える余地はないと言える。

 そもそも三権分立の中で、司法が一定の分野について判断を避けるという姿勢は、政治に追従、譲歩することにほかならず、日本が「法治国家」ではなくなってしまう。合憲であれ違憲であれ、裁判所は証拠に基づいて堂々と判断を示し、それを積み重ねることによって国民の間で議論が深まることが、法治国家のあるべき姿である。私はこうした考えから、自衛隊と憲法9条を判断の対象にすることになんら迷いはなかった。

 その後の35年間、9条違反を主張した裁判はいくつか提起されたものの、憲法判断が示されなかったのは、統治行為論を原則とする最高裁の意向が強まったからだろう。

 残念なことに、憲法判断を避けるという裁判所の消極的な姿勢は、自衛隊の実態と憲法をめぐる議論が国民の間に広がっていかなかった、その一因になってしまった、と私は思う。国民が関心を持たなければ、裁判官も「わざわざ憲法判断をする必要はない」と、統治行為論に逃げ込みやすくなってしまう。こうした好ましくないムードがすっかり定着してしまったが、名古屋高裁の久しぶりの9条判断は、この現状を変えていくきっかけになるかもしれない。

 今回の違憲判断に対して、福田首相は「傍論。脇の論ね」と語り、素っ気なかった。判決が主文では国側の勝訴としつつ、理由の中で違憲判断を示した手法に、「主文に影響しない違憲判断は蛇足だ」とする批判も出ている。しかし、原告が主張するような憲法違反があるかどうかという事実認定をまず確定したうえで、その事実に基づいて原告に訴えるだけの権利、利益があるのかどうかを判断した手法は、裁判のあり方としては常道であり、なんら問題ない。

 航空自衛隊トップの「『そんなの関係ねえ』という状況だ」とする発言をはじめ、政府関係者の指摘の多くは、判決のインパクトを褒めようとする意図が感じられる。本来、違憲判断が示されたときは、判決内容を頭から無視するのではなく、不服であっても率直に受け止めたうえで、まず政策の内容を点検し、国民の議論が深まるように努めていくべきである。

 政府が判決を軽視する態度を取れば、司法への信頼は弱まってしまう。国民全体が「そんなことは関係ない」と受け止め、深い沈黙に陥ってしまうような事態は避けなければならない。

福島重雄さんの経歴 73年の長沼ナイキの判決後、東京地裁手形部、福島、福井家裁に勤務し、89年に定年まで6年残して退官。現在、富山市で弁護士事務所を開設。77歳。

★ コメント 福島重雄さんは「長沼ナイキ基地訴訟」で自衛隊は違憲という判決を下しています。日本の平和運動は、自衛隊の存在は憲法違反と捉えて日本の軍国化を防ごうとしてきました。しかし、野党が自民党と連立を組むために自衛隊を容認するようになり、自衛隊が災害救助活動に参加することやソ連の脅威宣伝、ソ連の崩壊後は中国や北朝鮮の脅威が唱えられ、日本が攻められた時に無防備ではいけないという保険的な考えで、国民意識が変化して自衛隊の認知度が高まりました。

現在の国民意識は、読売新聞社が4月4日に発表した世論調査で見ると、戦争放棄の1項の「改憲」は12.5%、「改憲必要なし」は81.6%。戦力不保持などの2項は「改憲」36.8%、「改憲必要なし」は54.5%となっています。9条2項を変えないで自衛隊は持っているほうが良いとする考えが多い状態です。

朝日新聞が本年5月に発表した世論調査で、9条を「変える方がよい」23%あり、その回答した人には、どう変えたらよいかを聞いたところ、憲法に自衛隊の定めがないことを踏まえ、「いまある自衛隊の存在を書き込むのにとどめる」「ほかの国のような軍隊と定める」の二つを示したところ、「存在を書き込むにとどめる」が56%で多数を占め、「軍隊と定める」は38%でした。全員に、自衛隊の海外活動をどこまで認めるか三つの選択肢で聞くと、「武力行使をしなければ認める」が最も多く2007年と同じ64%。「必要なら武力行使も認める」が17%(2007年22%)、「一切認めない」は15%(2007年10%)でした。

このような世論調査の結果から言えることは、改憲しないで自衛隊の存在は認める、9条2項を変えるにしても自衛隊をなんでも出来る軍隊にしてはいけない=日本は戦争に参加してはいけないというのが現在の国民の多くの意識だと思います。自民党の改憲目的とは鋭く対立しています。

「必要なら武力行使も認める」が17%しかないことは、海外での武力行使を想定した自衛隊の海外活動の恒久法制定とも対立しています。私たちはこのような国民意識を変える政治宣伝と対決していく必要があると思います。

自衛隊を軍隊にしてはならない/山崎孝

2008-05-06 | ご投稿
憲法記念日を迎える前日に、信濃毎日新聞は、改憲をめぐる動きは、水面は穏やかでも、半面、改正論議は煮詰まった状態にあると指摘します。そして戦後、憲法9条が果たしてきた役割を述べ、自衛隊と軍隊の違いを述べて、9条の縛りを緩めてはならないと主張しています。以下、記事を紹介します。

【憲法記念日(上)九条は暮らしも支える】 (2008年5月2日付信濃毎日新聞論説記事)

61回目の憲法記念日がめぐってくる。これまでの数年間に比べれば、改正論議が落ち着きを見せている中での記念日だ。

 福田康夫首相の姿勢が影響している。「広く国民、与野党で議論が深められることを期待している」。改正について国会で問われると、そんなあいまいな答えでやり過ごしている。

 小泉純一郎元首相は「非戦闘地域」という奇妙な理屈を編み出し、戦闘の続くイラクに自衛隊を派遣して憲法の足元を掘り崩した。安倍晋三前首相は、憲法に立脚してきた戦後日本の歩みを「戦後レジーム(体制)」と呼び、そこからの「脱却」を訴えた。

<水面は穏やかでも> 前任者2人に比べると福田首相は憲法問題から明らかに腰が引けている。内閣支持率が30%を割る現状では、憲法どころではない、というのが本音だろう。

 半面、改正論議は煮詰まった状態にあるのも事実だ。

 憲法とセットで定められた教育基本法は安倍政権の下で見直され、教育の目標に「わが国と郷土を愛する態度を養う」ことが盛り込まれた。改正の是非を問うための国民投票法は2年後、2010年に施行される。

 例えて言えば、湖の水面は穏やかでも、水位はかなり上がっている。首相が代わったり政界再編が起きたりすれば、水は一気に流れ出す可能性がある。

 そのときに備えるためにも、憲法のあり方について、いま、考えを深めたい。

 大事なのは、憲法を暮らしの視点からとらえ直すことだろう。

<高度成長の基礎に> 元駐アフガニスタン大使、駒野欽一さんから聞いた話を紹介したい。日本政府は新憲法の制定を進めるアフガン政府に対し、法律の専門家を派遣して支援してきた。アフガンの人たちがいちばん聞きたがったのは、日本が経済大国への歩みを進むに当たり、平和憲法がどんなふうに役だったかの話だったという。

 戦後日本が経済建設にエネルギーを集中できたのは、軍備を切り詰めたことが大きかった。

 九条の歯止めがなければ、東西冷戦が厳しさを増す中で、日本は米国からより大きな軍事的役割を求められていたはずだ。韓国のように、ベトナム戦争を米軍と一緒に戦って死傷者を出していた可能性だって否定できない。日本企業のアジア進出にも警戒の目が向けられていたかもしれない。

 日本人が享受してきた安全で豊かな暮らしは多分に、憲法に支えられている。このことは繰り返し強調されてよい。

 防衛庁の制服組トップ、統合幕僚会議議長を務めた西元徹也さんは、九条が日本の安全保障政策の足かせになっていることを講演などで繰り返し訴えてきた。その西元さんも、日本が軍事的野心を持たないことを世界に向けて証明する上で、憲法が大きな役割を果たしてきたことは認める。

 憲法は平和を旨とする日本の基本政策の、いわば“保証書”にもなっている。

 「実質的に自衛隊は軍隊だろう」。小泉元首相は5年前、国会審議でさらりと言ってのけた。

 自衛隊は軍隊なのだろうか。確かに、装備を見れば軍隊に見えないこともない。予算は世界有数の額である。

 「陸海空軍その他の戦力」は持たない、という九条の規定から遠く隔たったところまで、自衛隊は来ているのは事実だ。

 半面、自衛隊は専守防衛政策の「たが」をはめられている。航空母艦、戦略爆撃機など、国土を遠く離れて攻撃できる兵器は持っていない。集団的自衛権はむろん行使できない。

 「特別裁判所は、これを設置することができない」。憲法はこんな言い方で、政府に対し、軍事専門の法廷(軍法会議)を設けることも禁じている。

 国防の義務規定、軍事機密の保護規定、徴兵制…。軍事システムを運用するこうした法制度を日本は持っていない。

 自衛隊と軍の間には今のところ無視しがたい溝がある。自衛隊は軍のように見えて、まだ軍になりきれていない。

<「自衛軍」ができたら> 自民党の新憲法草案には「自衛軍」の創設がうたわれている。その方向で改憲が行われたら、社会の在り方も一変するだろう。

 軍事機密には特別の保護の網がかぶせられる。国会には秘密公聴会が設けられる。

 「自衛軍」の創設は、自衛隊の現状の追認にとどまるものでは決してない。日本は軍事的価値に重きを置かない社会であることをやめて、戦争ができる国になる。質的な転換である。

 平和で豊かな暮らしを守るためには、九条の縛りを緩めてはならない。自衛隊を「軍」にしてはならない。

3千人以上が会場からはみだし、かたや改憲側の集会は愚痴といらだち/山崎孝

2008-05-05 | ご投稿
憲法を巡る社会の動向を反映した二つの報道を紹介します。

【9条世界会議、大入り】(2008年5月5日付朝日新聞)

作家の井上ひさしさんらが呼びかけ人となった「9条世界会議」が4日千葉市の幕張メッセで始まった。憲法9条の意義や核兵器撤廃などについて議論する。9条を守ろうという趣旨に賛同する市民らが主催者の予想を超えて各地から集まり、主催者によると、3千人以上が会場に入りきれない事態になった。

 この日は、9条にエールを送る海外ゲストの発言が相次いだ。約1万2千人が入れる会場からあふれた人たちは近くの広場で、講演を終えたアメリカの平和活動家コーラ・ワイスさんらを囲んで、集会を開いた。

 会議は5日に分科会などを開き、6日に閉会する。(以上)

【改憲団体が集会 世論変化にいらだちも】(2008年5月4日付「しんぶん赤旗」)

 改憲団体の「新しい憲法をつくる国民会議」(自主憲法制定国民会議・堀渉理事長)は三日、東京都内で、「新しい憲法をつくる国民大会」を開きました。約四百人が参加。新聞各社の世論調査で改憲世論が軒並み減っていることもあり、盛り上がりに欠けました。

 自民党の船田元・憲法審議会長代理は「本来なら、いまごろ国会で(憲法改正)論議が相当議論されているはず」(山崎註 愚痴です)と述べ、昨年五月に改憲手続き法の強行成立後、世論の反発などで衆参両院の憲法審査会が始動しない事態にいらだちを隠しませんでした。

 また、名古屋高裁のイラク派兵違憲判決に触れ「いま自衛隊派兵のための憲法九条の解釈はギリギリのところ」と指摘。自衛隊派兵の一般法(恒久法)の早急制定と、九条改憲の緊急性を強調しました。

 小池百合子元防衛相は「(現行憲法で)自衛隊は軍の位置づけになっていない。軍法会議の設置が急がれる」などと述べ、日米同盟のための九条改憲論を展開。平沢勝栄衆院外務委員長は、国会議員の改憲集会(四月)で民主党・長島昭久衆院議員が「改憲は民主党の党是」と発言したのをとらえ、「民主党を含めた話し合いで憲法改正へ持っていけることを示した」と歓迎しました。(以上)