いせ九条の会

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九条を国際貢献に利用していく証拠を示す必要/山崎孝

2008-05-04 | ご投稿
平和外交で日本示せ/きょう那覇で憲法講演(2008年5月3日付沖縄タイムス)

アフガニスタンや東ティモールなど世界の紛争地域で、武装解除に取り組んできた自称「紛争屋」の伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授(平和構築・紛争予防講座長)が三日、那覇市民会館で開催される憲法講演会に登壇する。イラク戦争を契機に、憲法九条の価値を見いだすようになったという伊勢崎さん。「今の日本に九条はもったいない」と苦言を呈する。

武力で平和は絶対につくれない。ただ目の前で行われている虐殺を止めるなど、国際貢献には武力介入が必要な場面もある。中立的な武力が必要だったアフガンで、なぜ自衛隊が貢献できないのかという疑問があった。憲法の前文には積極的な国際貢献がうたわれているが、九条が足かせになっているのではないか。なんとかしなければという思いがあった。

イラクへの自衛隊派遣は、単なる政局劇。国連決議もなく、世界の半数が反対したイラク戦争に大義はなく、何よりも軍事的なニーズがない。内向きな政局によって自衛隊が使われるのは、国威高揚のためだ。それなら第二次世界大戦の時と何も変わらない。ふがいない日本政府にブレーキをかけられるのは、九条しかないと思うようになった。

日本の九条は世界でほとんど知られていない。日本は官民ともに、とりわけ近隣諸国にPRしてこなかった。人畜無害さを国防力にするという観点があれば、もっと積極的になるはずだ。九条を防衛力として認識していない。自分たちのためにも、世界のためにも活用していない。今の日本に九条はもったいない。

国際協力をしたいが九条のせいでできないと言っている人は、外務省の中にも結構多い。彼らをこちら側につけるためには、九条を国際貢献に利用していく証拠を示す必要がある。日本のイメージを生かした平和外交をもっと売るべきだ。(粟国雄一郎)(以上)

自民、民主、公明の議員が結集する「新憲法制定議員同盟」は、憲法のあり方として《国際平和を願い、他国と共にその実現のため協力しあうことを誓う》としています。

伊勢崎賢治さんは《イラクへの自衛隊派遣は、単なる政局劇。国連決議もなく、世界の半数が反対したイラク戦争に大義はなく、何よりも軍事的なニーズがない。内向きな政局によって自衛隊が使われるのは、国威高揚のためだ。それなら第二次世界大戦の時と何も変わらない。ふがいない日本政府にブレーキをかけられるのは、九条しかないと思うようになった》と述べるように、「新憲法制定議員同盟」のいう国際平和協力は9条を取り除いて行える国際平和協力です。

現行憲法下で「PKO協力法」が制定されています。PKOは停戦合意と紛争当事者の国際部隊を受容れた場合に行なわれ、「PKO協力法」には、国際平和協力業務の実施等は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならないと定めてあり、これ以外の活動の人道に基づく活動は行なえ、現実に行なわれています。憲法を変えなくても国際平和協力は出来ます。

改憲の核心部分を認識しよう/山崎孝

2008-05-03 | ご投稿
朝日新聞の憲法に関する世論調査が5月3日付に掲載されていました。以下、朝日新聞の記事を引用しながら述べます。

憲法全体を見て、「改正する必要がある」は56%で「必要がない」は31%でした。改正する理由の多くが「新しい権利や制度を盛り込むべき」という理由でした。

しかし、憲法9条について、「変えない」とする人は今回、自民支持層でも57%にのぼり、「変える」は半分の30%。2007年4月の調査では「変えない」が41%、「変える」が43%でした。自民と政権を組む公明支持層では今回「変えない」が約8割に達している。民主支持層は71%、無党派層は67%でした。

9条を「変える方がよい」と答えた人(23%)には、どう変えたらよいかを聞いた。憲法に自衛隊の定めがないことを踏まえ、「いまある自衛隊の存在を書き込むのにとどめる」「ほかの国のような軍隊と定める」の二つを示したところ、「存在を書き込むにとどめる」が56%で多数を占め、「軍隊と定める」は38%でした。

全員に、自衛隊の海外活動をどこまで認めるか三つの選択肢で聞くと、「武力行使をしなければ認める」が最も多く2007年と同じ64%。「必要なら武力行使も認める」が17%(2007年22%)、「一切認めない」は15%(同10%)でした。朝日新聞は「海外での武力行使には強い抵抗感がうかがえる」と指摘しています。

私はこの結果を見て、改憲に賛成する人には、自民党の主導する改憲の目的は、新しい権利や制度を盛り込むのが主眼ではなく、改憲に賛成する人でも多くが望まない、海外で武力行使をするのが主目的であることを理解して欲しいと思います。新しい権利や制度も、個人の尊厳を重んずる現行憲法下で出来ることです。

憲法を変える理由が見当たらない、新たな憲法のあり方/山崎孝

2008-05-02 | ご投稿
「憲法審査会の早期始動を」超党派議員ら憲法の4目標提示(2008年5月1日付読売新聞))

超党派の国会議員らでつくる新憲法制定議員同盟(会長・中曽根元首相)は1日、東京・永田町の憲政記念館で「新しい憲法を制定する推進大会」を開き、衆参両院に設置された憲法審査会を早期に始動させ、憲法改正論議を前進させるよう求める決議を採択した。

決議では、国会の憲法審査会が昨年8月の設置以来、野党側の反対で一度も開かれていないことを踏まえ、早期の開催を「強く願う」とした。また、新たな憲法のあり方について、〈1〉日本の歴史・文化・伝統の香り高い憲法〈2〉自由・民主・人権・平和・国際協調を基本とする〈3〉国際平和を願い、他国と共にその実現のため協力し合うことを誓う〈4〉自然との共生を信条に、美しく豊かな地球環境をまもる――の四つの目標を掲げた。

大会で、中曽根氏は「一意専心、不惑の信念を持って、戦後に生まれた憲法を正しい憲法に作り直し、責任を果たしたい。今の憲法体制、政治体制では、日本の地位が低下するのは必至だ」と訴えた。

自民党の伊吹幹事長、安倍前首相、民主党の長島昭久衆院議員、公明党の白浜一良・党憲法調査会長らのほか、政府から町村官房長官が出席した。(以上)

★コメント 新憲法制定議員同盟の憲法のあり方として掲げた、「自由・民主・人権・平和・国際協調を基本とするや国際平和を願い、他国と共にその実現のため協力し合うことを誓う」は、周知のように現在の憲法に包含されている理念です。国際協調は前文に述べられています。

新憲法制定議員同盟の考えている平和は、敵対するとみなした勢力を武力で鎮圧することで治安維持をはかろうとすることだと思います。

「自然との共生を信条に、美しく豊かな地球環境をまもる」は、現行憲法の下で既に取り組まれており、今年の洞爺湖サミットの主要議題となっています。憲法を改定するまでもないものです。

「日本の歴史・文化・伝統の香り高い憲法」は、具体的に何を意味するのか、憲法にどのように表現するのか検討がつきません。わざわざ憲法に書き込まなくても、日本人が各々に思う日本の文化・伝統を大切にしています。

日本の歴史は、近代において植民地主義政策や侵略戦争を起こした歴史があり、無条件に誇れるものではありません。日本の未来のためには歴史の教訓を汲み取ることが重要で、現行憲法はこの教訓に立脚しています。

日本の文化は外国の文化を取り入れて日本人に合う文化にした素晴らしい点はあります。私が特に素晴らしいと思うことは、漢字から日本語を容易に書けるように発明された、ひらかな、カタカナです。これが江戸時代において世界と比較して日本の識字率を高いものにしました。江戸時代に培われた庶民の学力が基本となり、明治時代に外国の文明を急速に日本のものに出来たと思います。

憲法は変える必要はなく、むしろ活かす政治が求められています。

過去と真摯に向き合った岡部伊都子さんと西口政一さん/山崎孝

2008-05-01 | ご投稿
随筆家の岡部伊都子さんが4月29日にお亡くなりになりました。謹んで哀悼の意を表します。

私はNHKの放送で岡部伊都子さんのお話を聞いたことがあり、そのお話がきっかけで、岡部伊都子さんの著書を読んだことがあります。その著書「沖縄の骨」にはNHKの放送で私が聴いた内容が書かれていました。以下はその抜粋です。

……1943年2月、見習い士官となって別れを告げに来られた。(中略)

初めてわが部屋へ通した木村氏は、本の並んでいる部屋を見て「いい部屋だ」と言った。そして南の窓のそばの椅子に向い合わせに坐って、居ずまいを正した。

「自分はこの戦争はまちがいだと思っている。こんな戦争で死ぬのはいやだ。天皇陛下のおん為になんか、死ぬのはいやだ」

はっきり言った。はっきりきこえた。

そして少し声を落して、「君やら国の為になら、喜んで死ぬけれども」と、そう言った。

びっくりした。生まれてはじめてきく言葉。

「天皇陛下のおん為になんか、死ぬのはいやだ」

とは、聞いたことはもちろん、読んだことも考えたこともない。しかも軍人だ。見習い士官だ。

教育は、すべては「天皇陛下のおん為に」だった。「喜んで死ね」「忠君愛国」。

幼い頃から小学校時代、そして結核になって「お役に立たなくて申しわけない」と、「非国民」でしかないうしろめたさに、おびえてもいた。

木村邦夫氏は、心をきめて、「今、この婚約者に自分の本音を言っておこう」と毅然と姿勢を正されたのではなかったか。こういう言葉が、誰かから他に洩らされたら、どんな罪に落されるか、わからない時代である。うっかり誰にも言えない本音だった。

 親にも、兄弟にも、友人にも、町の人にも……、私は、他の誰にも言えない本音を、はっきり話してもらったのに、その意味が、肝心の私には、わからなかった。私は兄の戦死を名誉とし、婚約者のいのちがけの言葉が理解できなかった。

 「私なら、喜んで死ぬけど」と答えたのだ。(後略)

戦後になり岡部伊都子さんは、日本の伝統美を追求した随筆を書くようになります。そして「婚約者のいのちがけの言葉が理解できなかった」自分に対して痛恨の思いを抱きます。60年安保の時代にも遭遇して、平和に対する発言をするようになりました。

5月1日の朝日新聞に、深い後悔の念を抱き、反戦平和のために自分の経験したことを人々に伝えている元憲兵の西口政一さんのお話が掲載されていました。そのお話です。

20歳で軍隊に入り、中国東北部(旧満州)で、陸軍の警察、憲兵をしていました。ソ連との国境近くでのスパイ摘発が仕事でした。中国の若者をいすに寝かせ、通訳が馬乗りになって風呂の水を鼻とロに注ぐ。うめき声が狭い兵舎に響き渡りましたよ。最初は耳について寝られませんでしたが、先輩の憲兵と逮捕・連行を繰り返しているうちに、1年半で慣れてしまいました。

竹刀で殴ったこともありました。夜寝かさず、疲労と栄養失調で苦しみながらスパイの烙印を押された若者たちは(生物兵器開発のため人体実験をしていた)731部隊に送られました。加害者としての罪を忘れられません。(中略)

最近、戦争を反省することを「自虐」とみる風潮が強くなっています。ええ加減な、戦争を知らん人が、「アジア解放」「自存自衛」ということを美名に隠れて、そういうことを平気でいうことに激しい怒りを感じます。(中略)

【説明】西口政一さんは、戦後、鈴鹿商工会議所に勤務していました。仕事に夢中になり、専務理事などの責任のある立場でもあったので、戦時体験は語りませんでした。語りたくもありませんでした。話そうと思ったのは公職から外れた5年ほど前でした。(説明以上)

経済界の品川さんが憲法について積極的に発言しているのに、背中を押されたんです。戦争は一度始めると、100年後も被害者、加害者の心に傷を残す。戦場に孫や子を行かせてはならん。語り継がねばと思ったのです。(後略)

★コメント お二人は過去を真摯に見つめて、過去の自分を反省し、平和な未来に役立とうと決意しました。

国家も同じです。戦争を行った歴史を反省し未来に向かう鑑となるのは日本国憲法です。