いせ九条の会

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外交は国の専管事項だとすれば、姉妹都市締結は越権行為となるのでは/山崎孝

2008-05-18 | ご投稿
【原子力空母問う住民投票条例/自公・民主系が否決/横須賀】(2008年5月17日付け「しんぶん赤旗」)

 神奈川県横須賀市議会は十六日、原子力空母の横須賀配備と安全性を問う住民投票条例案の採決を行い、日本共産党などの賛成八、自民、公明、民主系など反対三十三、退場一で否決しました。

原子力空母配備予定が八月十九日と決まるなか住民投票条例を求める市民は条例案が否決された昨年に続き、条例制定へ立ち上がりました。前回より一万人余を超す五万二千四百十七人(有効署名数四万八千六百六十一人)を集めました。有権者の七人に一人にあたります。

採決に先立ち反対討論をした自民党の竹折輝隆市議は「日米安保体制と、(通常空母がなくなったなかでの)原子力空母の必要性」を強調し、住民投票の実施は「地方公共団体の範疇(はんちゅう)を超え」「将来に大きな混乱」を起こすとのべ、公明党の板橋衛市議は「賛否を問えば地方自治体が外交処理に関与し、制限する可能性がある」とのべました。

日本共産党の大村洋子市議は賛成討論で、蒲谷亮一市長が「国の専管事項であり住民投票はなじまない」としたことを批判し、「市民が『賛成』『反対』の意見を表明したいのは当然。それを受け止めることが市長の役割だ」と主張しました。また、地方自治、地方分権に照らして同条例制定の意義を強調し、住民投票条例の制定を強く求めました。

条例案の否決後、国に原子力空母の安全性の確保と防災体制の強化などを求める意見書を全会一致で可決しました。(以上)

★コメント 自民党の竹折輝隆市議は「日米安保体制と、(通常空母がなくなったなかでの)原子力空母の必要性」を強調しました。竹折輝隆市議の空母の必要性を具体的な事実で表現すると、イラク戦争を比喩すると、神奈川県横須賀を母港にしている空母キティーホークの艦載機が、5375回出撃し、イラクに約390トンもの爆弾を投下していますから、如何なる国の領土も侵犯してはならないとする国連憲章を破り他国を攻撃し、罪のない民衆を巻き添えにして戦争する(殺す)ことに、郷土が横須賀市民が協力しても良いと言っていることになります。

原子力空母は巨大な原子力兵器です。核兵器を日本に持ち込ませないとする原子力の平和利用の原則に反します。

4月17日の名古屋高裁は、平和的生存権について

《憲法9条が国の行為の側から戦争放棄や戦力不保持を規定していることから、平和的生存権は憲法上の法的な権利として認められるべきだ。憲法9条に違反する国の行為、すなわち戦争の遂行などによって個人の生命、自由が侵害されたり、戦争の遂行への加担・協力を強制されるようなときには、裁判所に違憲行為の差し止めや損害賠償請求により救済を求めることができる場合があると解することができ、平和的生存権には具体的権利性がある。「平和」が抽象的概念であることなどを根拠に平和的生存権の権利性や具体的権利性の可能性を否定する見解があるが、憲法上の概念はおよそ抽象的なもので、否定されなければならない理由はない》と判断しています。

これを見れば、原子力空母の横須賀配備と安全性を問う住民投票条例案を求める行為は「戦争の遂行への加担・協力を強制されるようなときには、裁判所に違憲行為の差し止めや損害賠償請求により救済を求める」ことと同じ範疇に入る事柄だと思います。蒲谷亮一市長の「国の専管事項」という主張は正確ではありません。

憲法第12条の自由や権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならないと規定してあります。憲法が保障する平和的生存権は政府が憲法の理念を活かした政治を行わない以上、国民は不断の努力によって、憲法の理念を保持しなければならないことになり、住民投票条例案を求める行為は憲法を守り活かす精神に適うことです。

外交が、国・政府の専管事項というのであれば、当時の政府の外交方針 台湾政府が中国の国連代表権を持つとしたのとは違う立場で、日本卓球協会の後藤押二会長は中国選手の招聘を行ない、名古屋で世界卓球選手権大会を行なう。地方都市がいろいろな縁で自主的に結ぶ外国の都市との友好を図る姉妹都市関係があります。これらは論理的に言えばこれはしてはいけないことになります。自分たちと考えが違うことを理由に専管事項と主張するのは説得力がありません。地方議員は憲法の規定に従う義務が一般市民より重いのです。政府の外交も憲法の理念に従うべき事項です。

参考 1970年12月31日の毎日新聞の報道

【「台湾除き中国招く・名古屋で開く世界卓球後藤協会長が決意」】

 1971年3月18日、名古屋で開く世界卓球選手権に中国を招く問題について、アジア卓連加盟の台湾への配慮からこれまでに明確な態度表明を避けてきた日本卓球協会の後藤押二会長は30日「国際卓連の規則に従ってアジア卓連から台湾を除き、中国の世界選手権参加を推進する」ことを決意、同協会・四十栄伊久治事務局長にその準備を進めるよう指示した。この結果、同協会は新春早々にも日中文化交流協会・中島健蔵理事長らに会って中国参加への協力を求めることになり、実力ナンバーワンの中国が4年ぶり(第29、30回欠場)に世界選手権に登場する道が開かれる。(以上)

「世界選手権を名実ともに世界選手権とするために中国に出場してもらわなくてはならない。国際卓連の規則に従い台湾を除外するよう主張する」という後藤会長の談話も報ぜられています。

第31回世界選手権大会は、ピンポン外交と言われる外交の場を与えました。周恩来首相は米国との関係を改善する一つとして、世界選手権大会で中国選手は米国選手と接触して友好的な交流をするよう指示していました。これがひとつの役割を果たして1972年2月のニクソン大統領の衝撃的な訪中、これにより中国と米国は国交回復に向かいます。当時のニクソン米大統領も米中の関係改善を模索していました。その後、日本も田中角栄首相の訪中で国交回復を果たします。