一風斎の趣味的生活/もっと活字を!

新刊、旧刊とりまぜて
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「汝、殺すなかれ」の生理的基盤

2007-05-02 07:15:01 | Essay
道徳律の中で、「汝、殺すなかれ」という「戒律」は、文化の違いを乗り越えて、かなり人類に普遍的なようです。

この「戒律」は、人類の生理的基盤に成り立っていることから説明がつくようになりそうです。

5月1日付けの新聞記事で、
「肉体的な痛みを連想させる写真を見ると、実際には痛くなくても脳は『痛い』と感じる」
という研究結果が、群馬大学大学院医学系研究科の斎藤繁教授によって発表された、と報じられました.

これは「痛み」に関して、他者のそれを我がことのように感じる、という生理的な機序が人間では働いている、ということを示すものと思われます。

そのような機序は、おそらく「痛み」だけではなく、他者の「死」についても働くのではないでしょうか。

以前に小生は、次のようなことを書きました(07年4月7日付け本ブログ)。
「極端な例では、やはり人を殺す/人が殺されるのを目撃することは、とてつもなく「気分が悪い」ことのようです(それをたび重ねることによって、無感覚に近くしていくのが、兵士への教育のようです。しかし、それにも無理があって、戦場から帰ってきた兵士には PTSD:心的外傷後ストレス障害が残ったりする)。――この辺りに「汝、殺すべからず」という倫理の根があるんじゃないかな」
「痛み」に関する研究は、このような「汝、殺すなかれ」という「戒律」が、人類の生理的基盤に成り立っていることを明らかにしていくのではないでしょうか。

*問題点は、現代戦争での「殺し」が、相手の存在を「見る」ことなしに行なわれうること。ミサイル、高空からの爆撃、遠距離砲撃などなど。
B29での東京爆撃で、搭乗員は日本人の死体の焼ける臭いをかいだ、と証言しているが、B52の爆撃で、搭乗員はベトナム人の死を感じることがあっただろうか。