ロシア軍が派遣した2機のTu-160戦略爆撃機、An-124輸送機、そしてIl-62が12月10日にベネズエラへ着いた。
共同軍事訓練に参加するためだとされている。
Tu-160は最高速度がマッハ2.3という超音速機で、An-124の最大積載量は150トンだ。
12月4日にベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領はロシアを訪問、
ロシアが石油開発に50億ドル、金の採掘などに100万ドルの投資をすることで合意している。
アメリカの経済的な攻撃で苦境に陥っているベネズエラだが、ウラジミル・プーチン露大統領は支援を約束した。
一般的に、アメリカ支配層の侵略はエリートの買収から始まる。
これに失敗すると経済的な攻撃、反対勢力への支援、プロパガンダや手先のグループ(配下の労働組合やNGOなど)を使った抗議活動で国内を不安定化、そして軍事クーデターやアメリカ軍の侵攻へと続く。
要人暗殺も行われてきた。
すでにドナルド・トランプ政権は経済戦争だけでなく、体制転覆の準備を進めている可能性は高い。
例えば、ニューヨーク・タイムズ紙は9月8日付けの紙面でトランプ政権が2017年からベネズエラの反体制派の将校と秘密裏に会い、
マドゥロ政権の転覆について話し合っていると伝えている。
今年(2018年)5月22日にベネズエラ政府はトッド・ロビンソン米大使と上級外交官のブライアン・ナランジョに対し、
「軍事的な陰謀」を理由に、48時間以内に国外へ出るように命じているので、そうした動きがすでに進んでいたのかもしれない。
アメリカ政府のベネズエラに対するクーデター計画はビル・クリントンが大統領だった1999年から始まる。
この年にベネズエラの大統領となったウーゴ・チャベスがアメリカから自立した体制を築こうと考えたからだ。
その計画は2002年にジョージ・W・ブッシュ政権が始動させた。
このクーデター計画で中心になったのはイラン・コントラ事件に登場するエリオット・エイブラムズ、キューバ系アメリカ人で1986年から89年にかけてベネズエラ駐在大使を務めたオットー・ライヒ、そしてジョン・ネグロポンテ国連大使だ。
ネグロポンテは1981年から85年にかけてホンジュラス駐在大使を務めていたが、
そのときにニカラグアの革命政権に対するCIAの秘密工作に協力、死の部隊にも関係している。
ベネズエラでのクーデターに参加していた時は国連大使を務めていた。その後、2004年から05年にかけてはイラク駐在大使だ。
2002年のクーデター計画の場合、事前にOPECの事務局長を務めていたベネズエラ人、アリ・ロドリゲスからウーゴ・チャベス大統領へ知らされたからだが、それでアメリカ支配層があきらめることはなかった。
例えば、ウィキリークスが公表したアメリカの外交文書によると、2006年にもベネズエラではクーデターが計画されている。
「民主的機関」、つまりアメリカの支配システムに操られている機関を強化し、チャベスの政治的な拠点に潜入、チャベス派を分裂させ、それによってアメリカの重要なビジネスを保護し、チャベスを国際的に孤立させるとしている。
この計画も成功しなかったが、チャベスは2013年3月、癌のため、58歳の若さで死亡した。
アメリカは発癌性のウィルスを開発、実際に使っていると言われているが、チャベスのケースがそれに該当するかどうかは不明だ。
ネオコンは1991年1月にイラクへ軍事侵攻して以来、自分たちの武力行使を誰も妨害しないと思い込んでいる。
そのとき、ソ連が軍事介入しなかったからだが、当時のソ連は混乱の最中にあった。
その思い込みは南オセチアへの奇襲攻撃におけるロシア軍の反撃、シリアでのロシア軍の介入で否定されているのだが、攻撃をエスカレートさせれば機能すると考えているようだ。
一方、ロシアはアメリカに見切りをつけたように見える。
アメリカがロシアや中国の周辺にミサイルを配備、部隊を送り込んでいるが、
ロシア政府はアメリカ支配層の頭に冷水を浴びせるため、ベネズエラで軍事的なデモンストレーションをするかもしれない。
ベネズエラにアメリカの傀儡体制が誕生した場合、同国の石油をアメリカが支配することになり、中東などで戦争を始めるハードルが下がる。
そうした事態をロシアは望んでいないだろう。
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