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★米中貿易戦争の行方
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9月24日、米トランプ大統領が、中国の対米輸出品2千億ドル分に対し、10%の懲罰関税を課した。
中国が対米輸出で黒字を出していることへの懲罰だという。
トランプは、中国が報復してきたら懲罰の度合いを強めると宣言した。
その後、中国は米国の対中輸出品600億ドル分に報復的な関税をかけたので、トランプは、残りの2670億ドル分についても課税し、中国から米国へのすべての輸出(総額5千億ドル強)に対し、懲罰関税がかけられる見通しが強まった。関税率は来年の元旦から25%に引き上げられる。
これに対抗する中国は、6月に米国から懲罰課税されたとき、報復として米国からの輸入品500億分ドルに課税しており、今回の報復分と合わせ1100億ドル、米国から中国への輸出(課税対象品)の7割に報復関税をかけた。残りの3割は、航空機など、中国が米国から輸入せざるを得ない物品だ。
米中は10月に貿易交渉を予定していた。
だが、今回のトランプの懲罰関税の拡大を受け、
中国側は「脅されて交渉したくない」と言って、交渉をキャンセルした。
これで年内の妥結は不可能になった。
米国の対中課税率が来年25%に上がるのは不可避だ。
また米政府は9月20日、中国が昨年来、ロシアから戦闘機や地対空ミサイルなどの兵器を買っていることを理由に、
米国がウクライナ問題で行なっている対ロシア制裁に違反しているとして、中国政府の防衛担当部局を経済制裁すると発表した。
これを受けて、中国政府は、米国との間で予定していた軍事交流会合をキャンセルした。
トランプ政権は、台湾に追加で兵器を売ることも決めており、これも中国を怒らせている。
トランプは経済と軍事の両面で、中国との敵対を扇動している。
トランプは中国と冷戦を始める気になったという見方も出ている。
だが、これは冷戦でない。
トランプが中国との関係を冷戦状態にしたいのなら、北朝鮮との敵対関係を強め、米朝vs米韓日という構図にするはずだが、現実はそうなってな
い。
トランプは、平壌での南北首脳会談を称賛し、北朝鮮の金正恩とまた会談すると言い続けている。
トランプは中国だけでなく、日本に対しても、日本が断り続けている2国間貿易協定をゴリ押ししてくるなど、
日米関係を貿易面で悪化させようとしている。
トランプは冷戦を再開したいのでなく、世界に対し、米国と良い関係を結びたいと思うのをやめさせようとしている。
米国は、冷戦でなく孤立に向かっている。
トランプや側近たちは、中国が懲罰関税に困窮し、いずれ譲歩してくるに違いないと言っている。
だが実のところ、中国の習近平政権は、米国から懲罰関税を課されることを、前からやりたかった経済の
対米自立を進める好機と考えている。
中国経済は従来、加工組立型の製造業の対米輸出が牽引してきた。
しかも、中国から米国への製造業部門での輸出品の中心は、中国企業の製品でなく、米国(米欧日韓)企業が中国で加工組立して米国に輸出する製品だ。
中国は、米欧日韓など世界の製造企業が、安いコストで高品質な加工組立や部品調達を行える
「世界の工場」になる戦略を採ってきた。
中国は、この戦略をやっているうちに経済発展し、賃金が上昇したが、それによる不利を埋めるために、高付加価値のハイテク製品を扱えるように技術を強化し、世界の工場としての地位を維持してきた。
今や中国は、世界の製造業にとって不可欠な存在だ。
中国の「世界の工場」戦略に対しては従来、中国側も欧米側(企業)も満足していた。
だが近年、イラク戦争やリーマン危機後に米国覇権の陰りがしだいに顕在化するとともに、中国は経済面で欧米に従属する構図からの脱却し、アジアの地域覇権国になることを目指すようになった。
従来の「世界の工場」戦略は、欧米企業の下請けであり、政治的に欧米への服従が必要になる。
中国が発展途上国だった従来は、下請けや服従もやむを得ないことであり、
トウ小平は「欧米にいじめられてもやり返すな」とする24文字の国家訓を遺言としていた。
だが近年、中国はかなりの経済成長を果たした。
しかも、覇権が陰りつつある米国は911以来、軍事的な強硬姿勢を振り回し、世界の秩序をむしろ乱している。
米国は、覇権国としてふさわしくない傾向が増している。
特にトランプになって、その傾向が加速している。
中国が、欧米の下請けを脱し、
米国の覇権体制が崩れて多極型の世界が出現しそうな中で、世界の極の一つになる好機が訪れている。
ちょうど2013年に、中国の最高指導者が、トウ小平に抜擢された胡錦涛から、
トウ小平の選択でない初めての世代である習近平に交代した。
これを機に、中国は欧米の下請けを脱し、アジアの地域覇権国になる道を歩み出した。
習近平は地域覇権戦略である「一帯一路」や、中国企業がハイテク分野で世界のトップになることを目指す「中国製造2025」を開始した。
2025戦略は、中国製品の主な市場を、米国(米欧)から中国国内市場に替える策でもある。
それから5年。
中国が一帯一路や中国製造2025を進めているさなかに、トランプ政権になった米国が、中国との貿易関係を断絶させる懲罰関税政策をとり始めた。
今の中国経済は、従来の「世界の工場」(米欧の下請け)体制から、今後の「2025」(中国国内や、一帯一路の中国圏を市場にする)体制へと転換しつつある過渡期であり、まだ下請け戦略に基づく中国から米国への輸出品は多い。
この輸出品は、トランプの懲罰関税によって打撃を受ける。
だが長期的に見ると、トランプの懲罰関税は、中国経済が、欧米の下請け(世界の工場)から、中国自身の地域覇権体制(2025、一帯一路)へと転換していくことを加速してくれる。
トランプは、中国を対米従属から引きはがし、
アジアの覇権国へと押しやっている。
中国製造2025は、中国の政府が公的資金を使って産業界をテコ入れし、国際競争力を強化する策だ。
トランプ政権は2025を、自由競争を阻害する中国政府による不当な貿易慣行であるとみなし、それが懲罰関税策の一因であるとされる。
だが実のところ、
トランプが懲罰関税をかけるほど、中国政府は2025戦略を進めやすくなる。
「帝国と資本の相克」において、中国は資本の側から応援されている。
かつて
資本家と英国エリート(英王室)が組んで産業革命をやって大英帝国を作ったように、
中国製造2025は、資本家と中共が組んだ、新たな産業革命の試みである。
本質的に国家を超越した
国際ユダヤ人である資本家群は、英米だろうが中国だろうが、彼らの覇権デザインに沿って動いてくれる相手と組む。
資本家群の番頭であるキッシンジャーは、最近また訪中した。彼は50年前から中国をテコ入れしている。
▼米中貿易戦争は軍産の賛同を得たので経済界に反対されても長期化する
中国企業の中には、対米輸出で儲ける従来構造に満足し、上(中共中央)から言われても国内市場重視にならない傾向があるが、
トランプの懲罰関税は、そうした傾向を破壊し、中国経済の転換を加速する。
同様のことは、米国から中国への輸入についても言える。
中国人は欧米からの舶来品が好きなので、中国で政府が産業界や国民に「輸入品でなく国産品を使え」と促しても進まなかった。
トランプの懲罰関税は、報復的な中国による米国製品への関税引き上げを生み、
中国における米国製品の価格が上がり、中国政府の悩みを解消してくれる。
これも中国にとって好都合だ。
人民日報は、これまで米国からの輸入品に押されて中国国内での販売が伸び悩んでいた国産品メーカー(たとえば実験装置製造業の「博科集団」)が、
トランプの課税後、国内販売を急増していると、誇らしげに報じている。
米国との貿易戦争が長引くほど、中国は、自動車やハイテク製品、航空機などの多分野で、米国からの輸入品を代替する国内産業を育成していく。
このまま2−3年ぐらいすぎてから米国が中国への懲罰をやめて関税を下げても、その時に中国では、米国製品を代替する国内製品、もしくは中国と良い関係を維持する欧州や韓国などの製品で穴埋めされ、米国から中国への輸出は元に戻らず伸び悩むことになる。
トランプの懲罰関税は中国側の報復策を生み、世界最大市場になる中国における米国製品の売れ行きをみすみす悪化させる
愚策となっている。
トランプが中国に懲罰関税をかけた理由の一つは、中国が米国企業の産業ノウハウの知的所有権を盗み、中国の製造業の発展に使っている点だとされる。
トランプは、懲罰関税によって対米輸出できなくなって困窮した中国勢が、米国から知的所有権を盗みだすのをやめるのを期待しているという。
だが、この点も実際は逆効果だ。
中国が対米自立し、世界経済が米国側と中国側に分割されてしまうと、
中国は、米国に制裁されても困らなくなり、米国勢の知的所有権を守ろうという意識もなくなる。
中国は、米国(や欧日)から産業ノウハウをとんどん盗み、発展を加速する。
トランプ政権は、懲罰関税で中国を困窮させると言っているが、
実際に困窮しているのは、米国(欧米日韓)企業だ。
売れ行きだけでなく、製造面でもそうだ。
企業が、製造拠点を中国から東南アジアなど他の新興諸国に移せば、トランプの懲罰関税の対象から外れる。
だが、電子機器など高付加価値製品は、産業インフラが整ってきた中国以外の新興諸国で作れないことが多い。
新興諸国の中で、中国並みの賃金などのコストで、中国並みの品質の製品を作れるところが少ない。
もっと付加価値が低い繊維製品などは、すでに中国でなく、もっと賃金が安い国々で作られている。
米国(欧米日韓)企業は、高付加価値製品の製造拠点を、中国から他の国に移すことができず、困っている。
米国では今後、中国への懲罰関税をやめてくれという圧力が、米産業界からトランプ政権に対して高まりそうだ。だが、トランプは課税をやめそうもない。
米国の経済界では反対論が多いが、政界では、トランプの敵だった軍産複合体が、中国敵視の懲罰関税に賛成し、共和党も民主党も、軍産系のタカ派議員たちがトランプの中国戦略を支持しているからだ。
軍産はトランプの対中関税を、中国との「経済冷戦」と呼び、永続化することを狙っている。
軍産は、マスコミに歪曲報道をさせられるので強い。
今はまだ「トランプのやっていることは全部悪い」という軍産仕込みの歪曲報道の一環として「トランプの対中関税は米国のためにならない」という正論が出ているが、
今後しだいに対中関税を支持する報道が増えるだろう。
米中貿易戦争は、おそらく来年の今ごろになっても続いているだろう。
アリババの馬雲は、米中貿易戦争は30年続くと言っている(
永続するほど中国に有利なので「中国万歳」という意味を込めて)。
実のところ、トランプの対中貿易戦争は、軍産のためにならない。
軍産の目標は、敵視策による米国覇権の維持拡大だが、すでに書いたように、トランプの関税は、中国を対米自立・アジアの覇権国化に押しやるものであり、長く続けるほど、米国の覇権を崩してしまう。
軍産は間抜けだが、彼らの間抜けさは以前からのものだ。
イラク戦争など、911後の中東強制民主化策も、軍産の強い支持を受け、マスコミの歪曲報道を伴いつつ続いたが、
その結果、米国は中東覇権を失い、
世界的な信用失墜(覇権の低下)を招いている。
軍産は、ネオコンなど隠れ多極主義者に入り込まれ、間抜けな結果を生む策に次々と加担させられている。
トランプの対中貿易戦争は、金融面でも米国の覇権を破壊していく。
中国が世界の製造業の下請けだった従来は、中国が米国(など世界)に輸出したドル建ての代金で米国債(など米金融商品)を買って保有し、
貿易の赤字分の資金が米国に還流し、米国の政府や金融界がどんどん借金を増やし(債券を発行し)ても金利が低く維持され破綻しない構図を維持していた。
中国は日本と並び、世界最多額の米国債を保有してきた。
だが今後、中国が米国への輸出を減らすと、それに伴って中国の米国債保有も減る(日本も、トランプに貿易戦争を吹っかけられ、米国債購入を減らしている)。
米国債の約半分は、米国外で買われている。
中国や日本が米国債(など米金融商品)を買わなくなると、米国は長期金利が上昇し、財政破綻や金融危機を引き起こす。
これまでの米中関係は「中国は製造業、米国は金融業で儲ける」構図だった。
米国の覇権は90年代以来、金融によって支えられてきた(軍事は派手なだけ)。
中国が米国の下請けをやめて自立することは、米国の金融覇権の崩壊につながる。
すでに、米中貿易戦争の激化とともに、長期金利の基準値である10年もの米国債の利回りが、重要な水準である3%を超えて上昇している。
これは危険なしるしだ。
トランプは世界との貿易に懲罰関税をかけるだけでなく、米国が敵視する諸国・諸勢力が
ドルを使った国際決済を行うことを禁じる経済制裁を発動している。
すでに書いたように米政府は最近、中国がロシアから兵器を買っていることを理由に、中国政府の軍事部門にドル決済を禁じる制裁を発動した。
トランプは、中国がイランから石油などを買い続けていることも、ドル決済を禁じる制裁の対象にしようとしている。
中国は、トランプから制裁されるほど、
ドルでなく人民元での決済を拡大し、米国に制裁されそうな他の諸国にも、人民元での決済を勧めている。
同様に、欧州のEUも、トランプのイラン制裁を不当行為とみなし、欧州企業がドルでなくユーロでイランや中国やロシアと取引できる決済システムを急いで構築している。
トランプが懲罰関税と経済制裁をやるほど、ドルが世界的に使われなくなり、貿易黒字の国がドル建て債券を買う傾向も減る。
まだ今のところ、中央銀行群のQE資金があり、トランプによる金融バブル扇動策も奏効しているため、米国の金融相場は高止まりを続けている。
だが、このバブル膨張策の効果がいずれ減ると、中国やEUやロシアがトランプの制裁戦略を嫌って非ドル的な国際決済網を構築している効果の方が大きくなり、米国の金融財政の崩壊(債券や株の大幅下落)が起きる。
トランプが懲罰関税と経済制裁は、世界の経済システムを、既存の米国覇権体制と、中国やEUやロシアなどが作る非ドル・非米型の多極型体制の2つに分割する流れを招いている。
米国側は金融(バブル)主導であり、中国側は製造業(実体経済)主導だ。
欧州は、米国から離れ、中国に近づいている。
欧州の対米自立が加速している。
トランプの目標は対米従属諸国の振り落とし(覇権放棄)であり、日本が擦り寄ってもトランプは日本を邪険に扱うことをやめないだろう。
カナダも「NAFTAはメキシコとだけで良い」とトランプに言われるなど、ひどい目に遭い続けている。
日本の軍産である外務省と傀儡勢力は、米中経済冷戦の勃発に喜んでいるようだが、それはぬか喜びに終わる。
軍産は、米国でも日本でも、間抜けに早合点させられる方向にねじ曲げられている。
軍産と対照的に、安倍首相は10月に訪中する予定を保持している。
長期的に、米国の覇権が衰退し、中国がアジアの地域覇権国になっていく以上、安倍は、一方で短期策としてトランプに擦り寄りつつ、他方で長期策として中国に擦り寄っていかざるを得ない。
http://tanakanews.com/180928china.htm
☆ 中国やロシアにすり寄るのなら
必ず 歴史修正を告白せざるおえないことになると 私は 思います。
そこからと 思います
日本人が 気がつくのは。
実際は 日本を殺すための 明治権力が 日本と言いながら 支配していたという維新の権力の 正体を はっきりと知るのは。
そこまでいかなければ 嘘と思います。