エマニュエル・マクロン仏大統領は反シオニズムを人種差別として取り締まると宣言した。
フランスを含むヨーロッパでは
イスラエルがパレスチナで行っている殺戮と破壊に抗議するため、
民間レベルでBDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動が展開されてきた。
そうした運動の根幹には反シオニズムがあるとマクロンは判断しているのだろう。
ところで、シオニズムとはエルサレム神殿があったとされる「シオンの丘」へ戻ろうという思想。
ナータン・ビルンバウムなる人物が1893年に初めて使ったとされている。
近代シオニズムの創設者とされているセオドール・ヘルツルはその3年後に『ユダヤ人国家』という本を出版したのだが、
ビルンバウムより前、1891年にキリスト教福音派のウィリアム・ブラックストーンなる人物が
アメリカでユダヤ人をパレスチナに返そうという運動を展開、ベンジャミン・ハリソン米大統領に働きかけていた。
そのブラックストーンより前からエルサレムで動いていたのがイギリス政府。
1838年にエルサレムで領事館を建設しているのだが、そのイギリスは第1次世界大戦の最中にオスマン帝国の解体と分割を決める。
両国の話し合いはイギリスのマーク・サイクスとフランスのフランソワ・ジョルジュ-ピコが行った。
のちに帝政ロシアが加わり、1916年に締結された秘密協定がサイクス・ピコ協定。
この協定は1917年11月のロシア十月革命で成立したボルシェビキ政権によって暴露されてしまう。
シリアやリビアへの侵略にイギリスやフランスが参加した理由のひとつはこの協定を生み出した両国の戦略にあるだろう。
この戦略はシオニズムと深い関係にあるとも言える。
イギリスのパレスチナ戦略を考える上で忘れてならない書簡がある。
1917年11月、ロシアにボルシェビキ政権が出現したその月に同国のアーサー・バルフォアはシオニズムを支援していたライオネル・ウォルター・ロスチャイルドへ書簡を送り、
「ユダヤ人の民族的な故郷」の建設を支持したのだ。
これがいわゆるバルフォア宣言。
サイクス・ピコ協定の露見を見通しての宣言だったかもしれないが、同協定を生み出した戦略は生きていたはずで、それがバルフォア宣言とも考えられる。
また、イギリスのヘンリー・マクマホンは1915年7月から16年3月にかけてフサイン・ビン・アリと書簡をやりとりし、アラブの独立を認めている。
バルフォア宣言と矛盾しているが、この宣言もマクマホンとビン・アリの書簡でもパルスチナに住む人々は無視されていた。
マクロンはシオニズムだけでなくグローバリズム、つまり巨大資本が世界を支配する仕組みを作ろうという戦略とも結びついている。
2006年から09年まで社会党に所属、その間、08年にロスチャイルド系投資銀行へ入り、200万ユーロという報酬を得ていたという経歴を見るだけでもその理由は推測できるだろう。
その後、2012年から14年にかけてフランソワ・オランド政権の大統領府副事務総長を務め、
14年に経済産業デジタル大臣に就任すると巨大資本のカネ儲けを支援する新自由主義的な政策を推進、マクロンのボスだったオランドはアメリカ政府の侵略政策にも加わる。
そうしたオランドの政策に対するフランス国民の憎悪は強まるとマクロンは社会党から離れて2016年4月に「前進!」を結成した。
みえみえの目くらましだが、それに騙された人が少なくなかったようで、
2017年5月の大統領選挙で勝利し、大統領になれた。
その選挙でライバルだったマリーヌ・ル・ペンに有力メディアは「極右」というタグをつけて宣伝、これもマクロンの勝利に貢献しただろう。
しかし、大統領に就任した後、マクロンの支持率は大きく下落して今では20%台になっている。
ロスチャイルド資本をはじめとする富裕層を後ろ盾にしているマクロンは大方の予想通りに庶民に負担を強い、富裕層を優遇する政策を推進した結果だ。
そうした中、昨年(2018年)11月に始まったのが「黄色いベスト」運動。
マクロンの政策を批判している運動で、庶民の怒りの受け皿になっている。
30万人近くが集まったこともある抗議活動の鎮圧に政権側は必死で、2月中旬までに8000人以上を逮捕したという。
おそらく根幹でつながっているシオニズムとグローバリズムがフランスで噴出、
その鎮圧に巨大資本の操り人形は両方を押さえ込もうとしている。
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