台風11号が日曜に通過してからも高気圧は発達せず、最終的には秋雨前線のようなものが日本列島を覆う始末。
台風一過を期待して夜行バスと山小屋宿泊の予約を入れていたので、10日・11日は天気図を見ながらいろいろ予想。
残念ながら雨は避けられないけれど、13日の水曜日には少なくとも晴れる時間帯が数時間はあるだろうと楽観的に構える。
いや、既に予約してバスとか入金もしていたから、それを正当化したい心理が働いただけですが。
で、11日月曜の夜行バスで翌12日の早朝に上高地に入り、その日は前穂高岳中腹の岳沢小屋に宿泊。13日の水曜日に前穂高岳から奥穂高岳を縦走して14日に下山するプランを実行しました。
穂高連峰の縦走コースとしては初心者向けと言えるルートですが、岩登りのような急登や岩稜のトラバースを含むコースであることに変わりはなく、風雨が厳しい条件であれば大げさな話ではなく滑落死もあり得るということで、その場合は素直に撤退することだけは決めていましたが。
毎日アルペン号で中湯温泉まで行き、そこからシャトルバスで上高地に入ったのが朝の5時半ごろ。中湯温泉でシャトルバスを待っている間に雨が降り始め、上高地バスターミナルに着いた時には本降り。少しは弱くなることを期待して1時間くらい朝食のパンを食べたりしながら待ったものの、雨の勢いはそのまま。河童橋周辺もこんな感じ。
仕方ないので7時少し前に岳沢小屋に向けて出発。それなりの数の登山者がいましたが、ほとんどの人は横尾方面に向かった模様です。涸沢に宿泊するか、槍ヶ岳を狙うのでしょう。
雨の樹林帯は土や木の香りが強まって趣があるのも事実ですが、レインウェアは通気性が限られるので汗地獄に陥ります。
レインウェアを脱いだら雨に濡れてビショビショ、着ても汗でグチャグチャ。救いのない2時間の登り。それでも今回は小屋泊装備で軽量なのが多少は有利。テント泊装備の人は本当に辛そうでした。
そして、いつものように高山植物に現実逃避する。ヤマホタルブクロ。
ミヤマアキノキリンソウ。たくさん咲いていました。9月まで息の長い花ですね。
たくさん咲いていると言えば、昨年はコバイケイソウがどの山でも大量に咲いていたのに、今年はまったく見ませんね。当たり年と外れ年の差が極端な花のようです。
群生地で大きな白い花が咲き誇っているのは壮観なので、自分が辛い縦走をする時は当たり年で現実逃避に使わせてもらいたいものです。
何だかんだで9時ごろには岳沢小屋に到着。しかし雨がひどい。当然ガスも。
上高地方面もほとんど見えない。
仕方ないので取りあえず小屋で待機。元々、この日は岳沢小屋に泊まって翌日に長距離を歩くつもりだったので、その意味では計画通り。
しかし、本来は午前中上高地を散策してから午後に小屋に登るつもりだったわけで、9時ごろから一日山小屋で時間を潰すというのもなかなか苦しい。が、それしか選択肢がない。
他の登山者の方や、長野県の山岳警察(救助隊)の方と情報交換したりして時間を潰し、あとは早めにチェックインして寝てました。
結果的には、これが体力温存という意味ではよかったかも。夜行バスだとどうしても睡眠の質が悪いので、疲れた状態で穂高岳の縦走をするのは嫌だったのだけど、天気が悪かったおかげで逆にしっかり休養を取ってから縦走に臨めました。
そして、午後3時ごろから雨が上がり、4時過ぎには晴れ間も出てきた。翌日に向けて希望の持てる感じ。乗鞍岳方面もはっきりと見えてきました。
天気予報も、13日だけは晴れ時々曇りくらいで雨は降らない模様。ただし、13日の夜からまたまたお天気は崩れるようで、本当にスポット的に間があるだけみたい。
はい、翌日です。晴れました。神に感謝。と言うか、本当に神のご加護があるような気がしました。
5時にお弁当を受け取り(岳沢小屋のお弁当は買いです。後述参照)、意気揚々と登り始めます。何せ神が味方じゃ。
前穂高岳に登る重太郎新道は、岩場の急登で危険なようですが、ガイドブックなどによると事故の多くは下山で発生しています。今回、この道を登りで使うことにしたのは安全のためと、前穂高岳に登頂したいという気持ちの2つが理由です。昨年の紅葉シーズンに徳沢にテントを張ったとき、そこから見えた前穂の威容に感動したからです。
最初の30分ほどはストックを使って登ります。つまり、手を使って岩場をよじ登るような道ではありません。
高山植物も、晴れた日に見るものは雨の中で見るものとはちょっと感じが違います。
クガイソウ。重太郎新道でしか見ませんでした。
トリアシショウマ。上高地に下るまで、いたるところに咲いていました。
モミジカラマツ。高山帯でしか見ませんでした。
ミヤマシャジン。これも重太郎新道でしか見ませんでした。
少し登ったところから上高地方面を見ると、焼岳が朝日に照らされて輝いていました。
目を上げると、穂高連峰の稜線が綺麗に見えます。見るだけなら楽しいですが、自分が歩くことを想像するとかなり恐ろしい道ですね。西穂高岳から奥穂高岳に続く稜線は上級者向けですが、確かにギザギザです。あれを踏破するのは辛そうだ。
最初のハシゴが出たところでストックをしまい、その後は手を使って登る所が多くなります。
しばらくするとカモシカの立場という開けたところに出ます。西穂からの稜線、明神岳方面の稜線、上高地方面などが見渡せます。
明神岳はクライマーのためのルートが多いようで、確かに絶壁でした。
重太郎新道は確かにかなりの急登で手を使わないといけないところばかりですが、登りで使う限りはそれほど危険ではないと感じました。
むしろ、延々と足だけで稼ぐルートよりは楽しめると思います。まあ、これもお天気がよかったから言える話なのですが。
高度があがってくると、明神岳方面の稜線もハッキリ見えるようになります。西穂方面に負けないギザギザ度です。
途中、雷鳥広場と呼ばれる辺りから見た上高地方面。絶景。
そして、2時間強でついに重太郎新道を登り切り、紀美子平に到着です。ここでザックを置き、前穂山頂への最後の30分ほどの急登に向かいます。
その前に左右の絶景を。
これが紀美子平からの登り。
この登りも楽ではないですが、これまでに八ヶ岳の赤岳、阿弥陀岳、あるいは最近の甲斐駒ヶ岳などの岩の直登ルートを経験していたためか、あまり恐怖感なく登ることができました。下りもしかり。昨年は阿弥陀岳の下りとかかなり怖い思いをしましたが。
で、その登りの途中にも奥穂高岳の威容を眺められます。
そして、やっと前穂高岳山頂、標高3,090メートルに到着。昨年来の目標を果たしました。山頂はまさに360度の大パノラマ。穂高連峰から槍ヶ岳、その後ろに立山連峰と後立山連峰、至近には常念山脈、振り返れば富士山と南アルプスまで見渡せます。
前穂高岳の北尾根は、やはりバリエーションルートとして上級者に人気のようですが、この日は登っている人は見かけませんでした。北尾根は昨年の紅葉シーズンに登った屏風の耳に続いているので、懐かしい感じです。
山頂は意外と広くて、絶景を見るために端から端まで移動して楽しみました。
30分くらい山頂にいたと思います。ある程度感動が落ち着いてから、紀美子平まで戻りました。
戻ったら弁当です。体質的に起きてすぐはほとんど食べられないので、このくらいの時間がたってからの方がいいのです。そして、吊尾根でシャリバテしないためにも栄養補給は重要です。
写真を撮る前に一口がっついてしまったので鮎が半分になっていますが、岳沢小屋のお弁当は豪華です。濃い味付けも、汗で失ったミネラルの回復に役立つはず。たいへん美味しゅうございました。
さて、腹も膨れていよいよ吊尾根です。
高低差も少ないし、大キレットのように急峻でもないです。しかし、そこは穂高連峰の稜線。注意して進みます。
吊尾根は意外と道幅もあるので滑落の可能性は低いでしょうし、ペンキでルートも示されているので間違って稜線に出てしまうような危険も少ないと思います。
この日は上高地方面の景色や進行方向の西穂~奥穂の稜線、あるいはコルを通過してからは涸沢方面がずっと見渡せたので、たいへん楽しいルートでした。
吊尾根途中から前穂を振り返った図。
これは涸沢方面。雪渓が見事です。下の方に、この日泊まった涸沢ヒュッテも見えています。
途中、オンタデを中心とした花畑なども見られます。
高山植物は、重太郎新道から吊尾根にかけてはイワツメクサとイワギキョウが多かったです。
あとは、ヨツバシオガマも結構ありました。今までもいろんな山で見かけましたが、穂高のヨツバシオガマは色が薄めで上品な感じ。今まで見た中で一番好きです。
ウサギギクは終盤でした。吊尾根に幾つか元気なものが残っていた程度。
数は少なかったけどタカネヤハズハハコ。肉厚な葉がおもしろい。
コメススキは地味ですが、いい味を出しています。
そして、吊尾根のハイライトの一つは雷鳥さんとの遭遇。一羽の子供を連れた母鳥との親子でした。とても可愛いですね。初めて本物に会いました。遭遇に感動してしばし眺めて声をかけたりしているうちに逃げられてしまい、後姿の写真しかありませんが。それにしても、何故か雷鳥はさん付けで「ライチョウさん」と呼んでしまう。
吊尾根で唯一気を付けるべきところは、奥穂山頂への直前ある南鐐の頭周辺。鎖もありますが、傾斜が急なだけでなく足場も下手をするとちょっと不安定です。ここだけは慎重に行くべきでしょう。
それを越えれば、あとは奥穂山頂への道を素直に登るのみです。西穂からの稜線には難所として有名なジャンダルムも見えています。確かにあれを越えて稜線を歩くのは危険そうだ。
そして、行動開始から5時間程度経過した10時過ぎに、奥穂高岳山頂に到着です。日本3位の高峰、標高3,190メートルを制覇しました。
常念山脈も、槍ヶ岳への稜線も、迫力の絶景です。
山頂はかなりの数の登山者で混雑していましたが、前日のお天気が悪かったのでこれでも少ない方なのでしょう。
それより、前日の大雨からは想像しがたい好天と、それがもたらす絶景に感謝です。
ここでも30分くらい景色を見入ってから奥穂山頂を後にしました。次は、涸沢岳との間の鞍部にある穂高岳山荘を目指します。途中、すれ違いのできない場所などで渋滞が発生していましたが、そんな時は高山植物を愛でていました。これはクモマグサ。かなり希少な花のようです。
この日の高山植物の写真で気に入っているものを幾つかアップ。
穂高岳山荘からは、涸沢カールが真下に眺められます。雪渓はまだまだ巨大でした。
穂高岳山荘は穂高連峰の稜線に建つ名物山荘ですから、ここに泊まって星空を眺めたり翌日のご来迎を見ることができたらいいなあと思っていました。
しかし、翌日の天気があまり期待できないようなので、それなら雨の中急な岩場のザイテングラードを下るよりは、この日のうちに涸沢まで下ってしまった方がいいだろうという判断に傾きました。
で、11時半ごろに穂高岳山頂に到着してからはコーラを飲んだりして少し休憩し、涸沢岳(3,110m)に空身でピストン(往復40分程度)してから下山することにしました。
これは涸沢岳山頂からの前穂(左)、奥穂(右)、穂高岳山荘。
そして涸沢岳から槍ヶ岳までの稜線。途中は北穂高岳。
涸沢岳を過ぎて北穂に向かうと上級者コースになるのですが、そこまで行かずに涸沢岳山頂で止まれば安全ですし、前穂と奥穂を一時に見渡せる絶景を楽しめるのでお得です。
さて、穂高岳山荘まで戻ってから涸沢に向けて下山を開始します。前穂への登りで使った重太郎新道ほどではないかもしれませんが、こちらも急峻な岩場として有名なザイテングラードを下るので、気は抜けません。
お天気はずっと晴れていて暑いくらいだったのですが、下りに入るころになって飛騨側から雲が出始めました。そのせいで少し涼しく感じ、実際には岩場の下山も順調でした。
ザイテングラードでは手を使う場所も多かったですが、1時間程度でこれを抜けて普通のガレ場に出てからはストックを使いました。
左右を眺めると、前穂や北圃の威容が見える、贅沢なルートでした。
ある程度下りてくると、涸沢のお花畑に入ります。オンタデの群生が見事だった。
個人的に好みのアオノツガザクラもいっぱい咲いていました。
そして涸沢の花といえばチングルマ。
高度が下がってくると、広い範囲で上を見渡すことができるように視界が開けます。涸沢の雪渓を前穂、吊尾根、奥穂が囲む図。
2時間少しで涸沢小屋に到着。しかし、かなり混雑しているようだったので1段下の涸沢ヒュッテを目指しました。ヒュッテの方が大きいので、いざという時の収容人数に余裕があると思ったからです。1つの蒲団に二人寝るとかあり得ないので。
幸いヒュッテはまだまだ余裕があったようで、素泊まり6,000円(モンベル会員の割引500円後)で布団を確保しました。
その後は濡れタオルで体をふいてからビール。合計9時間半ほどの行動時間を経て、前穂、吊尾根、奥穂、涸沢岳、ザイテングラードと歩いてきたので、その疲れを癒します。
この日頑張った道具たち。
夕食はパスタを作って食べました。涸沢ヒュッテは、屋根のあるテーブル席でバーナーを使わせてくれてありがたかったです。岳沢小屋も、室内での調理が許されていました。ありがたいです。
夕食を食べている6時過ぎに早くも雨が降りだしました。本当に、晴れていたのはこの日に縦走していた時間帯だけでしたね。ラッキーです。
そして、翌朝の涸沢はこんな感じ。奥穂も前穂も何も見えません。
14日の木曜日、弱い雨の中6時少し前に下山開始です。
雨の沢筋の道は、沢の音や樹林帯の香りが強くて悪くないです。途中で高山植物も結構見ました。登りだとムレて辛いけれど、下りならそれほどでもありません。まあ、最後には汗だくなんですが。
それにしても梓川の透明度は凄まじく、雨でもまったく濁っていません。
アキノキリンソウとソバナ。ソバナは横尾までの登山道にたくさん咲いていました。珍しい白花も。
お盆の終盤ということで、土日にかけて穂高や槍を狙う登山者と雨の中ですれ違いましたが、残念ながらこの週のお天気は回復しなかったようです。
上高地も徳沢辺りまで戻ってくると、登山者よりも観光客が多くなりますそして、キツリフネやタカラコウなどと花も変化します。私は徳沢園でソフトクリーム食べました。去年食べなかったので。
結局雨は止まず、10時20分ごろ小梨平まで下りてきました。ここの食堂で山菜そばを食べながら時間をつぶし、11時にお風呂が営業を開始したので汗を流しました。
その後は雨も降ったりやんだりでしたが、バスの時間までバスターミナル近くでお土産を買ったりして過ごしました。
時間つぶしで入った河童橋の五千尺ホテルのコーヒーは絶品でした。
河童橋から岳沢方面を眺めると、着いた日と同様にこの日も穂高岳は雲の中。まったく、前日の好天は返す返すラッキーでした。
3,000メートル級のピークを3つ縦走し、昨年来登ってみたかった前穂・奥穂を制覇したので充実感ある山旅でした。ライチョウさんにも会ったし。何より、事故もなく安全に帰ってこられたのが一番でしょう。
紅葉シーズンまであと1,2回は北アルプスに行くかもしれませんが、今度は後立山連峰を狙いたいと思っています。
台風一過を期待して夜行バスと山小屋宿泊の予約を入れていたので、10日・11日は天気図を見ながらいろいろ予想。
残念ながら雨は避けられないけれど、13日の水曜日には少なくとも晴れる時間帯が数時間はあるだろうと楽観的に構える。
いや、既に予約してバスとか入金もしていたから、それを正当化したい心理が働いただけですが。
で、11日月曜の夜行バスで翌12日の早朝に上高地に入り、その日は前穂高岳中腹の岳沢小屋に宿泊。13日の水曜日に前穂高岳から奥穂高岳を縦走して14日に下山するプランを実行しました。
穂高連峰の縦走コースとしては初心者向けと言えるルートですが、岩登りのような急登や岩稜のトラバースを含むコースであることに変わりはなく、風雨が厳しい条件であれば大げさな話ではなく滑落死もあり得るということで、その場合は素直に撤退することだけは決めていましたが。
毎日アルペン号で中湯温泉まで行き、そこからシャトルバスで上高地に入ったのが朝の5時半ごろ。中湯温泉でシャトルバスを待っている間に雨が降り始め、上高地バスターミナルに着いた時には本降り。少しは弱くなることを期待して1時間くらい朝食のパンを食べたりしながら待ったものの、雨の勢いはそのまま。河童橋周辺もこんな感じ。
仕方ないので7時少し前に岳沢小屋に向けて出発。それなりの数の登山者がいましたが、ほとんどの人は横尾方面に向かった模様です。涸沢に宿泊するか、槍ヶ岳を狙うのでしょう。
雨の樹林帯は土や木の香りが強まって趣があるのも事実ですが、レインウェアは通気性が限られるので汗地獄に陥ります。
レインウェアを脱いだら雨に濡れてビショビショ、着ても汗でグチャグチャ。救いのない2時間の登り。それでも今回は小屋泊装備で軽量なのが多少は有利。テント泊装備の人は本当に辛そうでした。
そして、いつものように高山植物に現実逃避する。ヤマホタルブクロ。
ミヤマアキノキリンソウ。たくさん咲いていました。9月まで息の長い花ですね。
たくさん咲いていると言えば、昨年はコバイケイソウがどの山でも大量に咲いていたのに、今年はまったく見ませんね。当たり年と外れ年の差が極端な花のようです。
群生地で大きな白い花が咲き誇っているのは壮観なので、自分が辛い縦走をする時は当たり年で現実逃避に使わせてもらいたいものです。
何だかんだで9時ごろには岳沢小屋に到着。しかし雨がひどい。当然ガスも。
上高地方面もほとんど見えない。
仕方ないので取りあえず小屋で待機。元々、この日は岳沢小屋に泊まって翌日に長距離を歩くつもりだったので、その意味では計画通り。
しかし、本来は午前中上高地を散策してから午後に小屋に登るつもりだったわけで、9時ごろから一日山小屋で時間を潰すというのもなかなか苦しい。が、それしか選択肢がない。
他の登山者の方や、長野県の山岳警察(救助隊)の方と情報交換したりして時間を潰し、あとは早めにチェックインして寝てました。
結果的には、これが体力温存という意味ではよかったかも。夜行バスだとどうしても睡眠の質が悪いので、疲れた状態で穂高岳の縦走をするのは嫌だったのだけど、天気が悪かったおかげで逆にしっかり休養を取ってから縦走に臨めました。
そして、午後3時ごろから雨が上がり、4時過ぎには晴れ間も出てきた。翌日に向けて希望の持てる感じ。乗鞍岳方面もはっきりと見えてきました。
天気予報も、13日だけは晴れ時々曇りくらいで雨は降らない模様。ただし、13日の夜からまたまたお天気は崩れるようで、本当にスポット的に間があるだけみたい。
はい、翌日です。晴れました。神に感謝。と言うか、本当に神のご加護があるような気がしました。
5時にお弁当を受け取り(岳沢小屋のお弁当は買いです。後述参照)、意気揚々と登り始めます。何せ神が味方じゃ。
前穂高岳に登る重太郎新道は、岩場の急登で危険なようですが、ガイドブックなどによると事故の多くは下山で発生しています。今回、この道を登りで使うことにしたのは安全のためと、前穂高岳に登頂したいという気持ちの2つが理由です。昨年の紅葉シーズンに徳沢にテントを張ったとき、そこから見えた前穂の威容に感動したからです。
最初の30分ほどはストックを使って登ります。つまり、手を使って岩場をよじ登るような道ではありません。
高山植物も、晴れた日に見るものは雨の中で見るものとはちょっと感じが違います。
クガイソウ。重太郎新道でしか見ませんでした。
トリアシショウマ。上高地に下るまで、いたるところに咲いていました。
モミジカラマツ。高山帯でしか見ませんでした。
ミヤマシャジン。これも重太郎新道でしか見ませんでした。
少し登ったところから上高地方面を見ると、焼岳が朝日に照らされて輝いていました。
目を上げると、穂高連峰の稜線が綺麗に見えます。見るだけなら楽しいですが、自分が歩くことを想像するとかなり恐ろしい道ですね。西穂高岳から奥穂高岳に続く稜線は上級者向けですが、確かにギザギザです。あれを踏破するのは辛そうだ。
最初のハシゴが出たところでストックをしまい、その後は手を使って登る所が多くなります。
しばらくするとカモシカの立場という開けたところに出ます。西穂からの稜線、明神岳方面の稜線、上高地方面などが見渡せます。
明神岳はクライマーのためのルートが多いようで、確かに絶壁でした。
重太郎新道は確かにかなりの急登で手を使わないといけないところばかりですが、登りで使う限りはそれほど危険ではないと感じました。
むしろ、延々と足だけで稼ぐルートよりは楽しめると思います。まあ、これもお天気がよかったから言える話なのですが。
高度があがってくると、明神岳方面の稜線もハッキリ見えるようになります。西穂方面に負けないギザギザ度です。
途中、雷鳥広場と呼ばれる辺りから見た上高地方面。絶景。
そして、2時間強でついに重太郎新道を登り切り、紀美子平に到着です。ここでザックを置き、前穂山頂への最後の30分ほどの急登に向かいます。
その前に左右の絶景を。
これが紀美子平からの登り。
この登りも楽ではないですが、これまでに八ヶ岳の赤岳、阿弥陀岳、あるいは最近の甲斐駒ヶ岳などの岩の直登ルートを経験していたためか、あまり恐怖感なく登ることができました。下りもしかり。昨年は阿弥陀岳の下りとかかなり怖い思いをしましたが。
で、その登りの途中にも奥穂高岳の威容を眺められます。
そして、やっと前穂高岳山頂、標高3,090メートルに到着。昨年来の目標を果たしました。山頂はまさに360度の大パノラマ。穂高連峰から槍ヶ岳、その後ろに立山連峰と後立山連峰、至近には常念山脈、振り返れば富士山と南アルプスまで見渡せます。
前穂高岳の北尾根は、やはりバリエーションルートとして上級者に人気のようですが、この日は登っている人は見かけませんでした。北尾根は昨年の紅葉シーズンに登った屏風の耳に続いているので、懐かしい感じです。
山頂は意外と広くて、絶景を見るために端から端まで移動して楽しみました。
30分くらい山頂にいたと思います。ある程度感動が落ち着いてから、紀美子平まで戻りました。
戻ったら弁当です。体質的に起きてすぐはほとんど食べられないので、このくらいの時間がたってからの方がいいのです。そして、吊尾根でシャリバテしないためにも栄養補給は重要です。
写真を撮る前に一口がっついてしまったので鮎が半分になっていますが、岳沢小屋のお弁当は豪華です。濃い味付けも、汗で失ったミネラルの回復に役立つはず。たいへん美味しゅうございました。
さて、腹も膨れていよいよ吊尾根です。
高低差も少ないし、大キレットのように急峻でもないです。しかし、そこは穂高連峰の稜線。注意して進みます。
吊尾根は意外と道幅もあるので滑落の可能性は低いでしょうし、ペンキでルートも示されているので間違って稜線に出てしまうような危険も少ないと思います。
この日は上高地方面の景色や進行方向の西穂~奥穂の稜線、あるいはコルを通過してからは涸沢方面がずっと見渡せたので、たいへん楽しいルートでした。
吊尾根途中から前穂を振り返った図。
これは涸沢方面。雪渓が見事です。下の方に、この日泊まった涸沢ヒュッテも見えています。
途中、オンタデを中心とした花畑なども見られます。
高山植物は、重太郎新道から吊尾根にかけてはイワツメクサとイワギキョウが多かったです。
あとは、ヨツバシオガマも結構ありました。今までもいろんな山で見かけましたが、穂高のヨツバシオガマは色が薄めで上品な感じ。今まで見た中で一番好きです。
ウサギギクは終盤でした。吊尾根に幾つか元気なものが残っていた程度。
数は少なかったけどタカネヤハズハハコ。肉厚な葉がおもしろい。
コメススキは地味ですが、いい味を出しています。
そして、吊尾根のハイライトの一つは雷鳥さんとの遭遇。一羽の子供を連れた母鳥との親子でした。とても可愛いですね。初めて本物に会いました。遭遇に感動してしばし眺めて声をかけたりしているうちに逃げられてしまい、後姿の写真しかありませんが。それにしても、何故か雷鳥はさん付けで「ライチョウさん」と呼んでしまう。
吊尾根で唯一気を付けるべきところは、奥穂山頂への直前ある南鐐の頭周辺。鎖もありますが、傾斜が急なだけでなく足場も下手をするとちょっと不安定です。ここだけは慎重に行くべきでしょう。
それを越えれば、あとは奥穂山頂への道を素直に登るのみです。西穂からの稜線には難所として有名なジャンダルムも見えています。確かにあれを越えて稜線を歩くのは危険そうだ。
そして、行動開始から5時間程度経過した10時過ぎに、奥穂高岳山頂に到着です。日本3位の高峰、標高3,190メートルを制覇しました。
常念山脈も、槍ヶ岳への稜線も、迫力の絶景です。
山頂はかなりの数の登山者で混雑していましたが、前日のお天気が悪かったのでこれでも少ない方なのでしょう。
それより、前日の大雨からは想像しがたい好天と、それがもたらす絶景に感謝です。
ここでも30分くらい景色を見入ってから奥穂山頂を後にしました。次は、涸沢岳との間の鞍部にある穂高岳山荘を目指します。途中、すれ違いのできない場所などで渋滞が発生していましたが、そんな時は高山植物を愛でていました。これはクモマグサ。かなり希少な花のようです。
この日の高山植物の写真で気に入っているものを幾つかアップ。
穂高岳山荘からは、涸沢カールが真下に眺められます。雪渓はまだまだ巨大でした。
穂高岳山荘は穂高連峰の稜線に建つ名物山荘ですから、ここに泊まって星空を眺めたり翌日のご来迎を見ることができたらいいなあと思っていました。
しかし、翌日の天気があまり期待できないようなので、それなら雨の中急な岩場のザイテングラードを下るよりは、この日のうちに涸沢まで下ってしまった方がいいだろうという判断に傾きました。
で、11時半ごろに穂高岳山頂に到着してからはコーラを飲んだりして少し休憩し、涸沢岳(3,110m)に空身でピストン(往復40分程度)してから下山することにしました。
これは涸沢岳山頂からの前穂(左)、奥穂(右)、穂高岳山荘。
そして涸沢岳から槍ヶ岳までの稜線。途中は北穂高岳。
涸沢岳を過ぎて北穂に向かうと上級者コースになるのですが、そこまで行かずに涸沢岳山頂で止まれば安全ですし、前穂と奥穂を一時に見渡せる絶景を楽しめるのでお得です。
さて、穂高岳山荘まで戻ってから涸沢に向けて下山を開始します。前穂への登りで使った重太郎新道ほどではないかもしれませんが、こちらも急峻な岩場として有名なザイテングラードを下るので、気は抜けません。
お天気はずっと晴れていて暑いくらいだったのですが、下りに入るころになって飛騨側から雲が出始めました。そのせいで少し涼しく感じ、実際には岩場の下山も順調でした。
ザイテングラードでは手を使う場所も多かったですが、1時間程度でこれを抜けて普通のガレ場に出てからはストックを使いました。
左右を眺めると、前穂や北圃の威容が見える、贅沢なルートでした。
ある程度下りてくると、涸沢のお花畑に入ります。オンタデの群生が見事だった。
個人的に好みのアオノツガザクラもいっぱい咲いていました。
そして涸沢の花といえばチングルマ。
高度が下がってくると、広い範囲で上を見渡すことができるように視界が開けます。涸沢の雪渓を前穂、吊尾根、奥穂が囲む図。
2時間少しで涸沢小屋に到着。しかし、かなり混雑しているようだったので1段下の涸沢ヒュッテを目指しました。ヒュッテの方が大きいので、いざという時の収容人数に余裕があると思ったからです。1つの蒲団に二人寝るとかあり得ないので。
幸いヒュッテはまだまだ余裕があったようで、素泊まり6,000円(モンベル会員の割引500円後)で布団を確保しました。
その後は濡れタオルで体をふいてからビール。合計9時間半ほどの行動時間を経て、前穂、吊尾根、奥穂、涸沢岳、ザイテングラードと歩いてきたので、その疲れを癒します。
この日頑張った道具たち。
夕食はパスタを作って食べました。涸沢ヒュッテは、屋根のあるテーブル席でバーナーを使わせてくれてありがたかったです。岳沢小屋も、室内での調理が許されていました。ありがたいです。
夕食を食べている6時過ぎに早くも雨が降りだしました。本当に、晴れていたのはこの日に縦走していた時間帯だけでしたね。ラッキーです。
そして、翌朝の涸沢はこんな感じ。奥穂も前穂も何も見えません。
14日の木曜日、弱い雨の中6時少し前に下山開始です。
雨の沢筋の道は、沢の音や樹林帯の香りが強くて悪くないです。途中で高山植物も結構見ました。登りだとムレて辛いけれど、下りならそれほどでもありません。まあ、最後には汗だくなんですが。
それにしても梓川の透明度は凄まじく、雨でもまったく濁っていません。
アキノキリンソウとソバナ。ソバナは横尾までの登山道にたくさん咲いていました。珍しい白花も。
お盆の終盤ということで、土日にかけて穂高や槍を狙う登山者と雨の中ですれ違いましたが、残念ながらこの週のお天気は回復しなかったようです。
上高地も徳沢辺りまで戻ってくると、登山者よりも観光客が多くなりますそして、キツリフネやタカラコウなどと花も変化します。私は徳沢園でソフトクリーム食べました。去年食べなかったので。
結局雨は止まず、10時20分ごろ小梨平まで下りてきました。ここの食堂で山菜そばを食べながら時間をつぶし、11時にお風呂が営業を開始したので汗を流しました。
その後は雨も降ったりやんだりでしたが、バスの時間までバスターミナル近くでお土産を買ったりして過ごしました。
時間つぶしで入った河童橋の五千尺ホテルのコーヒーは絶品でした。
河童橋から岳沢方面を眺めると、着いた日と同様にこの日も穂高岳は雲の中。まったく、前日の好天は返す返すラッキーでした。
3,000メートル級のピークを3つ縦走し、昨年来登ってみたかった前穂・奥穂を制覇したので充実感ある山旅でした。ライチョウさんにも会ったし。何より、事故もなく安全に帰ってこられたのが一番でしょう。
紅葉シーズンまであと1,2回は北アルプスに行くかもしれませんが、今度は後立山連峰を狙いたいと思っています。