ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

生き延びるための知恵

2009年08月01日 | ごみ処分場の子どもたち
(ICANの診療の日、ケアセンターにて医療スタッフに手当てをうける子ども。いつどこでこのようなサービスが享受できるか情報を持つことは、ぎりぎりの生活をしている住民たちにとって生き延びるための知恵である。)

ゆきよ@まにら。

パヤタスは人口20万人とも言われる巨大な町である。パヤタスにあるゴミ山周辺に住む人々はおよそ1万人。外からのイメージとしては、廃品回収で生計をたてている「貧しく」「教育のない」人々が住む「危ない」地域なのでタクシーにも乗車拒否されてしまう。しかし実際パヤタスと一概にいえども、階層レベルもさまざまで、生活の余裕度もまったくさまざまである。

先日訪れたゴミ山近くの家は、とくに生活状況の厳しさのうかがえる家だった。13人で8畳足らずのスペースで生活している。両親ともにゴミ山で働いていた。出戻りの長女に7人の子どもがいるので、圧倒的に家族数が多すぎる。子どもたちは公立学校でさえ通えない。学費は無料なので新学期には学校に入れるが、毎日のお弁当代や通学交通費が足りず十分にご飯も食べられない。

私たちが訪れた日も前の晩から食べていなかった。ゴミ山で働くしかほかに生活手段がない。学校にいけなくなった子どもたちも一定の年齢をすぎるとゴミ山で働き始めた。「楽しいこと、大変なことは何ですか?」という質問に、「楽しい気持ちになることが難しい。。。」長女の息子は持病を持っているが、毎日の食費も十分ないのに、治療費に有り金を使うことができない。やっと短大を出た次女は職探し中だが、交通費もないので、それもままならない。閉塞感に息が詰りそうな生活苦がそこにある。

一方同じゴミ山近くの家で、同様にゴミ山でお父さんが働いている家庭も訪ねた。
お母さんは、その地区のボランティアとして学校や役場の掃除をしたり、いろいろな世話役を引き受けている。そのような地区ボランティアは政府からの奨学金や手当てが出ることになったときに、優先的にそんな情報をゲットできる。実際、3人以上の学生のいる家に出るという政府の手当てや子どもたちの通学ための奨学金をその家庭はもらっていた。ここのお母さんのように、政府やNGOのサービスに敏感で、家族みんなが必要としているいろいろなサービスを受けられるように立ち回っているお母さんたちをパヤタスではときどき見かけることができる。それぞれのサービスを獲得するための知識は、ここでは生き延びていくための知恵なのだと思わせられる。同様に現金収入が限られていても、このような知恵を持っている家庭は生活の余裕を獲得できるのだ。

現金収入を求めて田舎からパヤタスに来た人々は、ゴミ山で1日働いても法定賃金の半額以下しか稼げない現実のなかで、それでもなんとかサバイバルしている。限られたリソースを入手するためには、どれだけ広いネットワークを持ち人間関係を築いているかが大きな鍵となる。「貧しさ」とは、ただ現金がないことではなく知識を持たないことだと言ったパヤタス住民がいたが、地域に広がる社会関係からの疎外もまた「貧しさ」の一部である。

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