ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

強制立ち退き

2009年10月12日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら

 橋の下で生活していたときも、被災後も、人々は同じ問題に直面しています。

 被災前、橋の下で生活していた約60の家族は、常につきまとう「強制立ち退き」の危機に対して、住民組織をつくり、政府と粘り強く交渉してきました。マリお母さん(仮名)は、この組織の副代表をしています。

 ICANのお母さんたちへのセッション(路上の子どもたちの親に対する生計向上の活動)が中盤まで差し掛かったころ、マリお母さんがとても疲れた様子でやってきました。話を聞くと、「すぐにでも政府による立ち退きが行われる」という情報を得たと、私に泣きながら話してくれました。「もしかしたら、今日の夜かもしれないし、明日かもしれない。」

 近く幼い子どもを含め家族がみな住む場所が奪われるという恐怖は、計り知れません。立ち退きにあった場合には、強制的にルソン島の南、マニラから半日かけて移動しなければならない所に再定住地が与えられるとのことでした。そこでは、仕事もなく、ただ土地が与えられるだけで、とても生きては行けないでしょう。

 住民にとっての頼みの綱は、今暮す場所からすぐ近くの教会が土地を提供してくれるという話です。多くの住民はその場所に移ることを希望していますが、そのためには1家族10,000ペソ(約20,000円)を用意しなければなりません。1日の収入が、50ペソ~150ペソ(約100円~300円)の住民にとって、とても大きな額です。

 ICANのセッション後、緊急に住民集会が行われました。マリお母さんは、今の状況を説明し、みなに再度結束を求めました。みんなの前では、涙は見せません。むしろ、みなをまとめる迫力に、私は圧倒されてしまいました。最後に「がんばろう!」とみなで声を合わせ、ともにに協力しあうことを約束して集会は終わりました。

 しかし、具体的な解決策は見出せないままです。





【台風直後より、大分家らしくなりました。】

 台風という自然の力により家を奪われ、今度は人の手によって住む場所を奪われようとしています。

 「危険な場所」だから「立ち退き」をする。それはもっともな理由かもしれません。では、「危険」から「誰を」まもるために、「立ち退き」をするのでしょうか。

 車がビュンビュン走る道路の中央分離帯で誰が生活をしたいと思うでしょう。その危険は、住民が身を持って知っています。幼い子どもたちが1歩でも家からでれば交通事故にあいかねない道路です。お母さんたちは、子どもから一時も目が離せずいっぱいいっぱいになっています。

 それでも、強制的に遠く離れた再定住地に連れて行かれることを断固として拒否する住民を前に、私は「住民」を「危険」からまもるために、最後まで自分ができることは何かを、考えざるを得ませんでした。

 Relocation of Poverty、問題を首都の中央から山奥の人目に付かないところに移すだけでは、人々が、そして現代社会が直面する解決策にはなりません。

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