ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

路上にあふれていく家族

2009年07月25日 | 路上の子どもたち
ゆきよ@まにら。

先日、路上教育事業の一環であるブルメントリットの診療に顔を出したときに、赤ちゃんを抱いた20歳の若い母親リーナ(仮名)と話をした。愛嬌いっぱいのその男の赤ちゃんは今10か月。頭にはいくつかおできができていて、その治療をお願いしたくて参加したという。



彼女の両親はブルメントリットの市場で野菜を売って生計を立ててきたが、稼ぎは十分でないのに父親が酒飲みで生活は大変だったそう。幼いきょうだいが物乞いをしてくれて、そのお金でなんとか自分は高校を卒業できたんだというリーナ。

4歳年上の夫と一緒になったが、立ち退きにあって、ブラカン州マリラウを再定住地として与えられたそうだ。一応そこに家があるが、結局ブルメントリットに舞い戻ってきて、マリラウには10日に一度か2週間ごとかに戻るだけだという。ブルメントリットでは路上の手押し車が彼らの住まいだ。

「だってあそこ(再定住地のマリラウ)にあるのは、ただ『空腹』だからね。」家があるからと言ってもそこに住めないと、夫が話す。

この夫がここブルメントリットでトライシクルの運転手をしてなんとか食べていっているのだそうだ。

「でもトライシクルも最近はあまり稼ぎは振るわないのよ。立ち退き前は、もっとたくさんの人がこの界隈にいたから、もっと稼ぎはよかったんだけど。。。」とリーナがぼやく。リーナも市場で売り子をして生計を手伝っている。

まだ長子が1歳に満たないというのに、次の子ができてしまったというこの若い夫婦。「えー、どうするの?大丈夫?」という私に、リーナは「そうなのよ、だからこのおなかの子を産んだらすぐにもう縛ってもらおうと思ってるの。」

この「縛る」というのは、「卵管結さつ」のことで、フィリピンでは確実で安全な避妊方法のひとつとして認識されている。でも教育を受けられなかった人たちの間では、どんな避妊方法も知らない場合も少なくないので、リーナはまだしっかり者のほうだ。



「母親から言われているのよ。自分の体を酷使してばかりじゃいけないって。だから縛るの。」

確かに子どもの数は10人以上という、体を「酷使」している女性は、フィリピンでは少なくない。

この日診療のあと、高架鉄道の下の手押し車の上で、リーナが診療でもらった薬を子どもに飲ませていた。今も雨が降っているが、あの手押し車に雨がふきこんでないだろうか。あの子の頭のおできはそろそろ良くなっただろうか。

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