烏有亭日乗

烏の塒に帰るを眺めつつ気ままに綴る読書日記

西田幾多郎の生命哲学

2006-12-08 23:58:18 | 本:哲学

 『西田幾多郎の生命哲学』(檜垣立哉著、講談社現代新書)を読む。先日読んだNHKブックスの『西田幾多郎』の巻末の読書案内に挙げてあった中から本書を選んで読んでみた。
 西田幾多郎の哲学を「生の哲学」という観点から捉え、ベルグソン、ドゥルーズの生成の哲学への漸近線を引いていくというものである。個物がその強度を内から外へと拡張しつつ動いていく、そのまさに動きを捉えようと西田が苦闘する姿を本書は伝えてくれる。この個物は静止した状態で外的な視点から捉えられるものではなく、常に世界に作用しながら世界を作り上げていく。強度を内側からの視線で捉えていくこと、いや視線という言い方は適当ではないだろう。産出-ポイエーシスとして捉えること。動くことがすなわち見ることであり、産出することである状態とでもいえばいいのだろうか。
 本書の最後のところで、「課題」としての世界ということが書かれている。生命が与えられた問題をその無限の潜勢力で解くことが、進化していく生命の姿であり、しかもその解答はひととおりではないこと、解答は解かれ終わることはなく解かれ続けるものだという記述は、非常に示唆に富んでいると感じた。光に対する眼は課題に対する一つの答えであるが、それは決して定まった目的ではない。