学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

高野文子『ドミトリーともきんす』を読む

2020-04-26 18:07:44 | 読書感想
みなさんは本をどのように読みますか。私は目で文字で追い、気になるところには線を引きます。そうして、その本を読み終えると、忘れないように簡単なメモを記して、あとは本棚へとしまい込む。小説、ノンフィクション、学術書と、いずれもそういう付き合い方をしています。

高野文子さんの『ドミトリーともきんす』(中央公論新社、2014年)は、本とのとても素敵な付き合い方を表した作品です。とも子さんと、その娘でまだ幼いきん子さんが、ドミトリーともきんす、という架空の下宿を営む設定で、下宿人、すなわち、朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹の4人の科学者と対話するストーリー。といっても、科学の難しい話が出てくるのではなく、もし彼らと会話ができるとしたら、こんなことを教えてくれるのではないか、という夢のようなお話なのです。もちろん、作者とこの4人は直接お話しをしたことはないので、彼らの本を読んだうえでの、想像された世界観で構成されています。しかし、それが面白い。

この本を読んだとき、同じく高野文子さんが書かれた『黄色い本』を思い出しました。あれは『チボー家の人々』の世界に入り込んだ女子高生のお話し。今回は科学の世界に入り込んだお母さんと娘のお話し。過去の本の著者と、友達のように対話しながら進んでいく手法はとても魅力的です。いまの私の読書の方法はとても事務的なのですが、本とのこういう付き合い方はいいなあ、と素直に思いますし、私もそういう方法で本を読みたい、と思うのでした。
コメント
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