学芸員のちょっと?した日記

美術館学芸員の本当に他愛もない日記・・・だったのですが、今は自分の趣味をなんでも書いています

外山滋比古『思考の整理学』を読む

2020-04-21 18:15:19 | 読書感想
就職して間もないころ、私はドイツ文学に夢中になりました。特にフランツ・カフカが好きで、今は亡き池内紀さんの翻訳で親しんだ覚えがあります。朝、昼休み、そして夜。おろかながら、美術の勉強もそっちのけで読んでいたのです。ところが、あるとき、活字が頭に入らなくなるということが起きました。例えるなら、箪笥のなかに衣服がぎゅうぎゅうに入っていて、もうどこにも隙間がない感覚。今考えると、どうもそれは、インプット(当時はそんなことは考えていませんでしたが)のし過ぎだったようなのです。

外山滋比古さんの『思考の整理学』(筑摩書房、1986年)を読みました。考えるということがいかに楽しいことなのかを教えてくれる本です。この本のなかでも、「整理」の項を読み、目から鱗が落ちました。著者によれば、「勉強し、知識を習得する一方で、不要になったものを、処分し、整理する必要がある」とのこと。そのためには「忘れる」ということを恐れてはいけないというのです。私は本を読んだら、その知識をいつまでも頭の中にとどめておきたいと考えます。だが、それではだめだと。本当に大切な知識は頭の中に残る。頭の中を知識でぎゅうぎゅうにしてはいけないというのですね。私はドイツ文学の件があったので、自分の経験から、とても腑に落ちた次第です。

「整理」を総合すると、知識をインプット(これは必要以上にしない)したら、忘れる、またはアウトプット(文章を書く)して、頭の中から余分なものを出してしまう。そうして頭の中に絶えず空きを作っておくことが大切であると学びました。近頃、書店にいくと、インプット、アウトプットの本を多く目にします。この本が書かれたのは1986年で、今から34年前というから驚きです。そういう意味では、時代を先取りした本だったのだと思います。著者の慧眼には感服します。
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