書店の美術コーナーに足を向けると、作家の画集はもちろんのこと、全国各地の美術館を紹介するもの、日本美術・西洋美術の楽しみ方を記したもの、果ては専門家が書いた難しい学術書などが並んでいます。そうした数ある本のなかで、実は学芸員のために書かれた本、というのはあまりありません。それはそのはずで、日本で学芸員を仕事にしている人の数はそう多くはないのですし、出版社としても売れる本を世に広めたい思いがあれば、ターゲットを学芸員に絞りすぎるのはリスクが高い。でも、そうした状況が想定されながらも、出版された本があります。それは安村敏信氏がお書きになった『美術館商売』(智慧の海叢書)です。
安村氏は、板橋区立美術館の館長を長年お勤めになった方で、現在は日本美術の研究者としてご活躍されていらっしゃいます。『美術館商売』は、安村氏の泉の如く湧いてくるアイディアが、実際に板橋区立美術館でどのように実現していったのか、が記されています。安村氏の視点は、常に観覧者の立場に立ち、前例に疑問を持ち続けることで新たなアイディアを生み出します。キャプションの大きさはどれぐらいがいいのか、お固い解説文は誰のために必要なのか、ガラスケースに入った作品に親近感を持ち得るのかなど、主に本のなかでは展示についてのさまざまな工夫が紹介されています。
私はどちらかといえば頭が固いほうなので、この本を読んだ時に「こういう手もアリなんだ!」と目から鱗が落ちました。『美術館商売』から、私は様々な影響を受けましたが、実際に何度か板橋区立美術館に足を運び、展示の方法を勉強させていただきました。例えば、畳の上に屏風を展示し、それを座布団に座りながら鑑賞する。こうしたアイディアは頭の中で出ることはあっても、セキュリティ上の問題でなかなか現実的に実現しにくい。けれども、それを安村氏は実現していくわけです。学芸員が学ぶべきスキルは数多くあり、日々勉強は続きます。
現在、日経新聞には安村氏による「諸国の奇想絵師」のコラムが連載されています。それを読んでいて、『美術館商売』について思い出した次第です。私にとって大切な本の一冊になっています。
安村氏は、板橋区立美術館の館長を長年お勤めになった方で、現在は日本美術の研究者としてご活躍されていらっしゃいます。『美術館商売』は、安村氏の泉の如く湧いてくるアイディアが、実際に板橋区立美術館でどのように実現していったのか、が記されています。安村氏の視点は、常に観覧者の立場に立ち、前例に疑問を持ち続けることで新たなアイディアを生み出します。キャプションの大きさはどれぐらいがいいのか、お固い解説文は誰のために必要なのか、ガラスケースに入った作品に親近感を持ち得るのかなど、主に本のなかでは展示についてのさまざまな工夫が紹介されています。
私はどちらかといえば頭が固いほうなので、この本を読んだ時に「こういう手もアリなんだ!」と目から鱗が落ちました。『美術館商売』から、私は様々な影響を受けましたが、実際に何度か板橋区立美術館に足を運び、展示の方法を勉強させていただきました。例えば、畳の上に屏風を展示し、それを座布団に座りながら鑑賞する。こうしたアイディアは頭の中で出ることはあっても、セキュリティ上の問題でなかなか現実的に実現しにくい。けれども、それを安村氏は実現していくわけです。学芸員が学ぶべきスキルは数多くあり、日々勉強は続きます。
現在、日経新聞には安村氏による「諸国の奇想絵師」のコラムが連載されています。それを読んでいて、『美術館商売』について思い出した次第です。私にとって大切な本の一冊になっています。