不定形な文字が空を這う路地裏

miscellaneous valves(その他のバルブ)


細い光と目蓋の痺れ、サンドノイズの残響と湾曲した夢の欠片、不器用な蛇のように身体を捩じりながら、無意識に目覚めを追い求める、眠り続けていた時間の蓄積、宿命的な停滞、かすれた喉が覚える今日の空気、無意味な実験みたいな数分、データは記録されることは無い、痕跡を辿りたいなら細胞を引き渡すよ、じめついた空気、太陽はしぶしぶ顔を出しているらしい、オンボロ自転車の急ブレーキ、下手な女優の悲鳴のよう、光は、眠りは、目覚めはリセットかコンティニューか、疑問の答えはいつだって自分の日々の先にある、顔を洗う水はしばらくの間生温い、苛立ちと呼ぶには程遠いささくれ、冷たくなったところでなにが変わるわけでもない、自覚などしないが人生は必ず自分の中に在る、鏡に映る自分の顔には確かにそれが刻まれている、使い込んだタオルはあまり水を吸わない、まるで紙のようだ、でもその危うさは自分の一日にはよく似合っている、日常過ぎてもう自嘲とも呼べない、なぜ、なぜ、なぜ、思えばずっと、クエスチョンの答えを探してばかりいた、それは決して見つからないものばかりだった、だからただ生きることにしたのだ、受け止め方を間違えさえしなければ、それはいつの間にか細やかな解答に変わることもある、肝心なことは、自分を肯定するための理由を探し始めたらお終いだということ、インスタントコーヒーを飲みながらニュースをそこそこに聞き流す、暴力は制御出来ない自意識のなれの果てだ、簡単に言えば幼稚ってことさ、医者で貰って来た薬を飲む、パッケージから錠剤を取り出す音はなにかを秒読みしているかのよう、望むものも望まないものもいつだって同じだけある、飲み込んだものは喉元を過ぎるとほとんど感じられなくなる、ニュースは終わり、もはや形骸化した情報バラエティーが効力の無くなった経文のようにだらだらと続けられている、大丈夫、なにも変わらない、いつだって日常はここにある、いつからか沢山の唐変木たちがそんな嘘を長いことつき続けている、公の場に求められるのは大衆を肯定してくれる良く出来た嘘だけというわけさ、白紙の備考欄が一番誇らしいんだって、どいつもこいつも無意識にそんな自論を展開している、世間という松葉杖に頼らなければ一歩も歩けない連中の戯言さ、ソファーに座って詩集ばかりを選んで読む、死臭と同じ響きなのは決して偶然なんかじゃないはずさ、詩情の本質は遺書におけるそれと大差ないって、自分で書いてる連中の中にはそう思ってるやつも少なくない、そうでなければ俺に仲間など居るはずがないのだ、仮に俺がこの詩を最後に居なくなってしまっても、誰かが俺のことを覚えているはずさ、まあ、当分そんなことはないだろうと思うけどね、目が疲れると外に出掛ける、街は録画データをスキップし続けているみたいに忙しない、すれ違う人間のアラを探しているような目つきの奴ら、その目を自分に向けてみるんだね、お前の宝はガラクタだって気づけるかもしれないぜ、もうすぐ雨が降るってスマートフォンがお節介をする、この間までラブホテルが建っていた空地を通り過ぎると、太めのブロンドの外人女が道を探していた、近頃は海外の観光客が増えた、どうやらホテルを探しているらしい、彼らは決して母国語以外喋ろうとはしない、ラッキーなことにそれはすぐ近くにあるホテルだった、アリガトウゴザイマス、と、よくある感じで微笑んで彼女は去って行った、俺は黙ってバイバイと手を振った、国によっては日本の動作と意味が真逆になるってどこかに書いてあったな、ふたたび歩き出してからそんなことを思い出した、すべてをちょうどいい瞬間に思い出すことなど出来はしない、繁華街の近く、昔は女を売る店ばかりだったこのあたり、そんな店ももう三分の一程度になってしまった、欲望は流行じゃないのだ、時代の流れ、なんて言葉じゃ片付けられない、本能を忘れて行くかつての獣たち、死ぬまで吠え続けなけりゃ、決意というようなものではないが、そんな変化の中に居ると決まってそんな考えが血を滾らせる、血脈の中で生き続けているものたちがいつだってなにかを書き始める、明日のことなんて微塵もわからないけど未来なら知ってるさ、俺はきっとそこそこ満足して死ぬだろう、願わくば最後の咆哮までこんな風に記すことが出来ればいいな、飲み干した缶コーヒーの苦みは作為的だった、新しい靴の歩き方はまずまずだ、選好みさえしなければどんなものだって身体に馴染ませることが出来る、それについちゃ俺はちょっとしたもんだぜ、時代は流れて変わり続けている、変わらないためには変わり続けなければ嘘だ、自分を通すためだけの主張なんて誰も面白がりはしない、そうだろ?そこに嘘や矛盾があるからこそ、俺たちはそれを信じているんじゃないか。

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