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俺の今生という名の道標

2014-03-30 23:55:00 | 






狂ったようにいくつもの音が頭の中で鳴り響く、魚眼レンズを覗いたように景色は不確かだ、俺はゆがみのみで現実を把握しながら、真っ直ぐに歩こうと今生に根差している、靴底が踏みしめる地面は誰かの血で赤黒く染まっている、俺にはそれが未来の俺が流したもののように思えてならないのだ、未来の俺が後悔のもとに流した血が時を越えて、阻止の意味を込めて今の俺の足元を染めているのではないかと…でもそんなものはちょっとした思い込みに過ぎないさ、未来に後悔があるのなら俺は今の俺のまま生きてきはしなかっただろう、誰かと同じように思い直して堅実に努めてきただろうさ、それを選択しなかったからこそ今ここにこの俺が居るのだ―そんなことがなんになるのだ、と、時折誰かが俺に尋ねる、あるものは本当に不思議だという顔をして、またあるものは鼻で笑いながら…彼らはそれが本当にどういうものなのかということについて考えてみたことがないのだ、ただただ誰かのいうままに人生を塗り固めることが美徳だと信じている…俺は誰にも俺のことを説明したりなどしない、そんなもの絶対に理解出来るわけがないからだ、もちろん誰の説明も聞きたくはない、俺に出来るのはなんとなく理解したという素振りくらいだからだ…巨大な手で捻られているかのような景色の中で俺は考えている―これはどこから生じるものなのだろうかと―俺は歪みの中を生きている、このところずっとだ、歪みの中を生きることを強いられている、そのなかでずっと…目の前を通り過ぎるものたちを眺めている、あるものを笑い、あるものを哀れに思いながら…そしてそれは時々は、洗面台の鏡の中にいる自分の像だったりする、三半規管は正常に機能することをどこかで諦めたらしい、冷汗が吹き出し…心臓が激しくノッキングする、壊れているのだ、いつかどこかで…眼球はぐるぐると彷徨う、失神した誰かの目玉みたいに…何を見つめようとしているのか?それがどんなものであれ厄介なものには違いないだろう―この前、何人もの人間が飛び降りた巨大な橋の袂に行ったよ、それはちょっとした偶然のようなものだったんだけど…橋の上からたくさんの終わった者たちの意識が薄い布のように風に舞いながら下りてきてまとわりつくんだ、始め俺はどうしてそんなものがまとわりつくのか判らなかった、巨大な橋桁が目に付いたところで初めて理解したんだ、それはそこから降って来る終わった者たちの意識なのだということに…終わった者たちの意識、終わった者たちの意識、終わった者たちの意識は、俺が感じることによって生きているみたいに思える、でもそれは、果たしてこの世界に属するものなのだろうか?俺にはどんな答えも出すことは出来なかった、ただ少しの間佇んで、そいつらが速度のない蝙蝠のようにふわふわと舞っているのを眺めていたのさ…橋のすぐそばには広い公園があるが、その中心部は浮浪者たちのテントで占拠されている、ちょっとしたアパートメントのようなものになっているのさ、時折そこに暮らしているやつらがうろうろと出歩いているのを見かけることがある、あんな暮らしのなにが楽しいのだろうかと俺は考える、俺には一日たりとも耐えられそうにない、投げ出した楽しさだけがある暮らし…群れて、騒ぐことでまるで幸せであるかのように錯覚するかのような…暮らし―そうさ、俺が何を言いたいのか判るだろう、それはテントの中だけに限ったことではないのさ、それはテントの中だけに限ったことでは…水準が上がったところで、根幹が失われているのならどんなレベルにいたって同じことなんだ、だってそうだろ、そうじゃなければ、イズムさえ定義出来るならどんなことをしたって構わないんだってことになる、俺はそんな甘っちょろいものにはどんな興味を抱くことも出来ない―ならば俺が望むものはなんなんだ、と俺は考える、考える必要などないのだ、本当は―考えることが大事なのではない、それがどんなものでもいい、追い求めることが必要なのだ…具体性など決して求める必要はない、的が見えていようが見えていまいが、正しい方向に放った矢はきちんと真ん中を射抜くものさ…知ることなんかそれが当たってからで構わないんだ、欲しいものに名前をつける必要なんかない、大事なのはどこを狙えばいいのかってことを判っているかどうかなんだ―そう、どうしてこんなものを書いているのだろうか?もういいと思えるまで、どうしてこの文章は続くのだろうか?俺はこの連なりの意味を把握しているだろうか―?そう、つまり、把握してはいないが知っている、そういうことさ…どんなに細工をこうじたって、水は流れやすい方向にしか流れていかないものさ、塞き止めないことが大事なんだ、こうしなければならないなんて、余計なこだわりを持って、流れをせき止めたりしないようにしなければ…真剣さと自由さを持ってすべてを進めることさ、それが一番大事なことなんだ、考えることなくぶちまけて、流れる先を見送ることが…歪みは生じた、俺は歪みの中で生きている、水は流れていく、それがどんなものでも、どこかに進んでいることが判るなら俺はゆっくりとその先を眺めているだろう…。









けたたましい静寂の始まり

2014-03-17 22:36:00 | 






短い眠りのあとで生まれる叫びのように、日常に根ざした狂った思考と実行、猛スピードで走り抜けるトンネルの内部のような…いくつのことを見落としていくつのことを留めることが出来たのかなんてもう分からない、ただただまともな歪さを持ったおれが蛍火のような春の太陽の下でぼんやりと立ち尽くしている、いま出来るすべてのことは指先にあるだけのものしかなく、だけど…知らないふりをしているにはあまりにもしんどい確信だった、時が当たり前に流れてゆくものなら、命が当たり前に流れていくものなら…!配列を組み替える、正しくても誤っていても構わない、とにかくいつまでも同じものでなければどんなものでも…配列それ自体には大した意味などないはずだ、正解はあらかじめ用意された形式などではない、それは必ず変化の先にあるひとつのポイントだ、それを見極めるためにはすべての状態に反応出来るものでなければならない、おれはなんだ?おれはどんなものだ…?変化を必要としているか?変化の重要性を認識しているか?完成系など存在しない、節目節目に認識すべき状態があるだけだ、それはなにも思いのままにはならない、それはなにも思いのままにはならない―変化することに思惑など何の意味もない、分かるかい?それはこちらからはどんな手も加えることは出来ない、無数の出来事がいっぺんに始まる、無数の出来事がいっぺんに始まり、進行していく、繁殖した癌細胞が体内のあちこちで成長と繁殖を繰り返すようにさ…それが出来事というものだ、それは宿命やタイミングや、その他の諸々な要因によって認識出来るものと出来ないものに分かれる、もちろんそれは一秒たりとも同じバランスを保ってはいない、トンネルの中を猛スピードで走り抜けているみたいにさ!五感に訴えかけてきたものだけが蓄積していく、急ぐことはない…すぐに理解出来るものに大した意味なんかないのだ、じっくりと呼吸しながらそれが馴染んでくるのを待っていればいい、そうすればおのずと見えてくるものがある、真実は決定出来ない、いいか?真実は決定出来ない、決定は終点を意味する、終点に辿り着いてはならない、それは決定されるべきものではない、一時停止のままで残り時間を浪費するつもりが無いのなら―分かるか?決定しないのならそこに疑問は生まれない、そこに疑問が生まれないということはどういうことだ?現象としてすべてをいったん受け入れることが出来るということだ、美味い不味いに関わらずいったん飲み込んで、それがどういうものかと知ることが出来る、そういうことだ…何を望んでいる?どんなものを望んでいる?それは本物の欲望とリンクしていると思うか?これが分かるか?そこには疑問が生まれることは無い、それは本当の欲望とリンクしているのか―?蛍火のような春の太陽の下でぼんやりと立っている、薄汚れながら…空の遠くからはずっと先の雨のにおいがする、雨が降るのかもしれない、そう思ったときにはもう濡れているのだ、そういうものが真実だ、考えてごらん、傘を差せば雨は忘れられるか?屋根の下に居れば雨は忘れられるか?完全に音をシャットアウト出来る部屋の中に居れば、雨は忘れられるか?答えなど考えるまでもないはずだ―限定しなければアウトラインは存在しない、その領域ではすべてが真実になる、それはあらゆるものを語ることが出来る、それはあらゆるものに形を変えることが出来る、あらゆるものであり、またあらゆるものに成り得ない、おれは立ち尽くしている、それがすべてだろう、おれは…激しく吹きつける風があり、肌を掠めながら通り過ぎていくエンジンがある、そして、一秒たりとも同じ場所に留まっては居ない、何の為に?変化のためにだ、移動していくのだ、変化し続けるために…もっとも、そこに存在する連中のどれだけがそのことに自覚的なのかは分からないが…どちらにしてもおれには必要のないことに違いない、頬を変化がかすめてゆく速度、ぶっ飛んで…だからおれはそれを残そうとする、取るに足らないほんの一瞬の記録として、ここに残そうとする、文字列が変化していく、感情が、感覚が変化していく、おれが変化していく、ぶっ飛んで…ぶっ飛んでいるんだ、それはぶっ飛んでいて、そのせいでひどく静かな感じがする、遮られることがないからだ、それは遮断出来ない、雨のように遮断出来ない、ぶっ飛んでいく、すべてに真実がある、嘘も本当もない、ただただ自動的にセレクトされて飲み込まれていく、けたたましい静寂の始まり、おれはあらゆる感覚であり、またどんなものでもなかった、けたたましい静寂の始まり、狂っているが正常でもある…。








楽園の鳥たち

2014-03-15 11:40:00 | 
 






小さな世界のすべてが皮膚の上を滑り落ち床に僅かな痕跡を束の間残すころ狂気を孕んだ桑の実は庭で機会を逃していた、幼子の泣き声は無くてもいいもののように思えそれでも、鬱血した母親は張った乳房を晒して喰わせるのだ、天井の四隅に激しく真夜中が生きている、記憶の一番嫌悪な部分を転がりながら…三本足の野良犬が打ち震えながら結び目の緩い塵袋を振り回して解き人間様の食いかすを存分に味わうのが常な表通り、目も当てられぬ思いに辱められて売春婦が泣き崩れているポリバケツ、髪の毛からはかすかに小便の臭いがした、タクシーが肉食獣のような週末だから迂闊に車道の近くを歩くと噛み付かれて引き擦り込まれる、行き先を示すランプはいつまでも絶望だけを灯すだろう、ほら、御覧よ、車道の南側に大きく抉れている箇所があるのが判るだろう、あれは先週人間の身体についていたベルトのバックルがやったのさ、製造工場のような音を立てながらね…酷い有様だった、隠しておかなければならないものがすべて週末の街路にぶちまけられてまるでこの世で一番おぞましい花火みたいだったよ、すべてが片付くまで片時も目が離せなかった、悲鳴を上げ続ける人たち、携帯電話で撮影する人たち、間抜けな電子音がどれほど不釣合いだったことか!巻き込まれたのはどこかのロックバンドで歌っていたというまだ若い女の子でね、そこそこ人気があったらしいよ、巻き込んだのはどこかの配送会社の二トントラックで、六十時間連続勤務の挙句に居眠り運転しちまったそうだ、たまたまそんなことになったんだって、記者会見で配送会社の社長はコメントしたらしい、本当かどうかなんて知ったこっちゃ無い、心にも無い言葉がこの街の連中の大人の証さ、赤ん坊は眠った、母親も眠った、運命を呪いながら―そこから少し離れた通りじゃ数年ごとに誰かが死んでるカーブがある、過去には禁忌が破られていた場所だという噂がある通り…ふざけてアクセルを踏み込む連中が今年あたりまたとんでもない有様になるだろう…子供のころにそのカーブの近くの川で水死体を見たんだ、パンパンに膨らんでいて酷い臭いがした、数日経ってそいつが着ていたシャツをどこかで見たことがあると思い当たってそれが同級生であったことに初めて気がついたんだ、容姿なんか判る状態じゃなかったからね、人間と同じ構成をしているということぐらいしか―そこから南にちょっと走ると大きな公園があるんだ、安らかな銀杏の木がたくさん植えられていて、昼間には園外保育の子供たちやただ幸せに生きてきたっていうだけの老人たちで牧歌的な雰囲気を漂わせている、だけどひとたび日が暮れたら異常者どもの巣で、股間を膨らませた女装の男色家や腕をぼこぼこにした中毒者なんかで溢れ返る、彼らが注射器に水を入れたり肛門を洗浄したりした水飲み場で昼間子供たちは遊びすぎて乾いた喉を潤しているんだ、なにが蔓延るのかなんて誰にも判りはしない、どんな子供が生まれるのかなんて…時にはすべての実が腐って落ちることもある、辺りには不快な臭いが立ち込める、死や腐敗で溢れているからこそ神経症的にこの世界は美しいのだ、みんな血眼になってそいつを隠すからさ、乾杯しよう、汚染血液の染み込んだドレスデンベッドに、乾杯しよう、錆びた鎖に繋がれた飼犬どもの見るも無残な皮膚病に、乾杯しよう、致命的に不衛生な針の曲がった注射器に、乾杯しよう、歪んだ性格の性器に、乾杯しよう、車道の派手な窪みに、乾杯しよう、闇の底で眠る母親に、乾杯しよう、餌に喰らいついたタクシーに、乾杯しよう、乾杯しよう、この死が生まれる土曜日の午前に、乾杯しよう、乾杯しよう


飲み干したのはお前自身の深層にある体液さ、吐き出したらきっとそこで終わってしまうぜ…








すべてと擦れ違う

2014-03-02 18:27:00 | 









死を浮かべる白昼、路上の血液の跡、くびれた花が乾涸びてる、どこかの店の配電盤の下―有線放送が聞こえてくる、誰も演奏していないリズム、自動販売機ではひっきりなしに、誰かが殴られてるみたいな音を立てて製品が購買される、骨に響く強打の音さ、あれは…そうして喉が渇いている自分に気付く、小銭を数え、そんな現象の一部となる、飲み干した飲料は実によく出来ていた、日々開発されている果汁、内臓を塗り潰すように胃袋に降りてゆく―神様に祈りを捧げる声が聞こえる窓、隣接するコンビニエンスストアではそこで働く母親を呼び出して金をせびっている若い男…近くにはでっかい遊技場があったっけ、母親は周囲の目を気にしている、俺は目が合う前に見ないようにする、側溝を流れる汚水からは、大昔から営業しているクリーニング屋の糊の臭いがする、スマートフォンを器用に片手で操作しながら自転車を操る若い男と擦れ違う、先の角から乳母車を押して女が現れる、彼女はしばらく俺の前を歩く、カーゴパンツの尻が歩く度に揺れる、繁華街に近い停留所に停車したバスからは雪崩れるように年寄りが降りてくる、杖を突いた三本の足の生物たち…休日なのに制服の女学生たちのけたたましい話し声、そのすべてにユニゾンするハイブリット・カーの排気…犬を連れた白髪の老人が拡声器で何かを話している、変に金の掛かった大時計の前で―本屋の店先では小太りの男がしきりにニヤついて頷きながら週刊誌を立ち読みしている、そこに書かれてあることが彼には判っているのだろうか?「福島原発の現在」と見出しには書かれている、アーケードの路面からはまだ昨日の雨の臭いがする…新しく出来た若者向けのカジュアルショップの前はサーティワンアイスみたいなコーディネイトの女たちで溢れている、彼女らの話し声はビーズをたくさん入れたタッパーが鳴っているみたいにザラついている、ゲーム・センターでは誰かが太鼓を叩いている、ハイ・スコアらしく数人のギャラリーが出来ている、ほとんどが閉鎖された小さなビルの通路を通ってアーケードを抜け出す、小さな噴水のある小さな公園に出る―石のベンチに腰を下ろして少し休む、少し離れたところに座っている中年の男は型遅れの携帯電話に向かって借金についての話をしている、晴れていた空は少し雲が多くなる、歩き続けた疲れが消えるころ一人の痩せた男が現れてギターを弾きながら歌い始める、取るに足らない歌…音楽を売っている店を探す、小さな店を見つける、覗いてみてもめぼしいものは見つからなかった、そこにあるのはヒット・チャートでしかなかった、店を出ると夜に賑わう通りに出る、昼間のそのあたりはただただ疲労している、幾分黒ずんだ、くたびれた建物が続く―それが終わると汚れた小さな川のそばに出る、数十年前にはヘドロが流れ込んでいた川…やっているのかよく判らない喫茶店の前を通り、絶望的な毛並みの老いた野良犬と擦れ違い、「売」の文字すら掠れて見えなくなった小さな工場を過ぎる、ガソリン・スタンドの前では交通事故処理をしている、当事者らしい若者がしょぼくれた顔で立っている、でこぼこの路面にはまだ水溜りがちらほらと見える、首輪をつけた雑種の猫がうろついている、ケーキのような大きな乳母車を押す、お嬢様のようなドレスを着た白粉を塗った老婆と擦れ違う、どこかのOLが二人で、そんな老婆を指をさして笑っている、高校生ぐらいの自転車の男たちが並列で車道を走ってクラクションを鳴らされている―インスタント食品を買って家に帰る、胃に流し込むと体調を崩す、床に横になると天井の明かりで眼球がくたびれる、苦し紛れの短い夢の中でもう名前すら思い出せない記憶の中だけの人間に出会う、何か話をしたけれどそれはとうとう思い出せなかった。