その日その時 写真で見る歳時記

気ままに写した写真に気ままな言葉たちの集まり

小さい「つ」へのメッセージ

2008年12月07日 | Weblog

 

***

五十音村の住人たち

小さい「つ」へのメッセージ

***

 

人間たちを使って小さい「つ」への伝言をすることを

半信半疑で皆賛成して眠りについた翌日

小さい「つ」が消えてから既に一週間が過ぎていた

その朝 日本にいた人たちはみなビックリ仰天

口をあければ 自分では そういうつもりでなくても

同じセリフしかでてこなかったからね それだけではない

日本全国の新聞、雑誌 全ての印刷物にも 同じことが書かれていた

テレビやラジオ番組もそうだった 何を聞いても何を読んでも内容は

小さい「つ」への伝言だけだった その伝言はこんなふうだった

~~~~~

これは 小さい「つ」へのメッセージです

一週間前 私達は 自分たちと比べて 君の事を取るに足らない

ちっぽけな存在といいました また私たちは 君が私たちのように

音を表わさないと言うことで 文字としての資格がないとも言いました

このとき 私達はとても大きな間違いをしました

きみは私達を含めこの世の全ての人にとて(っがない)

かけがえのない存在です

この世のどの存在にも劣ることなく 重要な存在なのです

たしかに君は音を出せないけれど 沈黙という瞬間を作ります

沈黙がなくて 音は存在できますか?

沈黙がない音とは 影のない光 谷のない山 黒が存在しない白と同じです

もしもこの世に 白ばかりで 黒が存在しなければ

誰も白という色を見分けることが出来ないでしょう

光しかなくて影が存在しなければ 私達はまぶしいばかりで

光は役に立たないものになるでしょう

同じように沈黙がなければ 音はただの雑音でしかないのです

他の文字達はどんなに努力しても 

君のように沈黙を作り出すことは出来ません

沈黙を作り出せる君は 誰にも負けず大きな役割をになているのです

今回のことで 君がいかに重要で人間社会の会話に欠かすことのできない

大きな存在であるのか痛いほど分かりましたなぜあのときあんなこといて

君の事を傷つけてしまたのかと とても悔やんでいます心から謝ります

みんな君がいなくて本当にこまています 

そして とてもさびしい思いをしています。 君の帰りをずとまています

かならず私達の元へかえてきてくれると信じています

はやくかえてきてください

五十音村の仲間より

~~~~

人間達はこの日 何か話せば この伝言を言うことになった

新聞、本、雑誌、そして街中の全ての看板

ポスターにも同じ文句が書かれていたし

テレビからもラジオからも全く同じ伝言が流れていたんだよ

自分の言いたいことが言えずに多くの人間達は困っていたが

唯一ここでも困らなかったのは政治家だった

それは いつもなら必ず意見が対立する

政治家達が満場一致である合意に達したからであった

与党の党員が演説したあとには

国会議員が全員 もちろん野党も含めて賛成し

野党の党員が演説したあとには

国会議員が全員 もちろん与党も含めて同意し

拍手で満場一致を祝ったのだ

それは「を」さんが大喜びするような光景だった

その日 ひとつの法案が反対意見なしで国会を通った

その内容もまた

小さい「つ」への伝言だったと言うわけだ

最後に残った問題はただひとつ

この伝言が小さい「つ」まで届くかと言うこと

小さい「つ」は新聞も読まないし

人の声が届かないところにいるんじゃぁないかという心配があった

あとは 何とかこの伝言が小さい「つ」の耳に届くよう

願うばかりだった

 つづく

・・・

三修社発行

「小さい つ が消えた日」

ステファノ・フォン・ロー著から抜粋

 

***

 

なんとか小さい「つ」が

この伝言を耳にしてくれるといいのですが・・

次回は

小さい「つ」は どうやって見つかったか

お楽しみに・・・

 

***

 

今日の写真は

 

小さい「つ」を迎えるために

薔薇が咲こうとしています(笑)

植物園にまだ薔薇が咲いて

朝露を浴びていました