その日その時 写真で見る歳時記

気ままに写した写真に気ままな言葉たちの集まり

小さい「つ」の大冒険 2

2008年12月05日 | Weblog

 

***

五十音村の住人たち

小さい「つ」の大冒険

その2

***

 

政治家の演説を聞いた

ほかの評論家は

政治家がコミュニケーションの崩壊に

困らなかったのは

政治家の演説を真面目に聞く人は

もともといないからだと説明した

(その説は「ビールを飲む人は

バケツに穴が開いているかどうかに

興味をもたぬ」説と呼ばれていた)

こんな風に人間たちが大変な思いをしているころ

小さい「つ」はとっても楽しい一日を過ごしていた

この日

自分のお腹がグーグーなる音で目を覚まし

小さい「つ」は森の中で

きのこ、木の実、果物

そして蜂蜜で腹ごしらえをしたんだよ

お腹が一杯になった小さい「つ」は

この日も今までやってみたかったことをしようと

森の中を先へ先へ進んでいった

森の中には沢山の植物があって

ネズミやリスなどの動物たちが一杯いた

動物たちの足跡をおいかけたり

狐の巣を覗いたり

時には大きなクモが目の前に

ぶら下がって怖い目にあったりした

折を抜けて川に出た小さい「つ」は

この日は小さな葉っぱを舟にして

川を漂って海まで下った

川沿いにある村や森や野原

さらに山や谷 動物や植物を見て

この世界が

とても良く出来ていることに気づいたんだ

広い海に出ると

砂浜まで舟をこぎ 葉っぱから下りて

海岸沿いをしばらく散歩した

楽しいときの過ぎるのは早く

気がつくともう日が暮れようとしていた

今夜は散歩の途中で見つけた

さかさまになった漁師さんの舟を

屋根の代わりにしてそこで寝ることにした

眠りに落ちる前 小さい「つ」は

いつもと同じように

今日したことを思い起こし

この一日で学んだことを

一つ一つあげていった

一つ目は 蜂蜜は甘くてとってもおいしいと言うこと

蜂蜜を採ろうとすると ハチさんたちは怒って

おしりから針を出して刺そうとすること

そして 怒ったハチさんは

箸って逃げる自分よりも早く飛ぶことが出来ること

二つ目は 足が六本ついている「くわの実」は

くわの実の味がしないと言うこと

もしかするとそれは くわの実ではかったかも

三つ目は それは小さい「つ」の

鋭い観察力のおかげで分かったのだが

この世の中には 声を持っていても

言葉を使わないものが沢山あると言うこと

滝はゴウゴウと大きな声を持っているし

海は波が押し寄せたり引いたりして

話しかけてくるし

風だって気分次第でそよそよとささやいたり

ヒューヒューとうなったりもする

だけど 滝も海も風も

少なくとも自分が知っているような

言葉で話すことはないのである

それでも彼らがこの世界にとって

とても大切な存在であることに変わりはない

・・・言葉を話せないことが

自分の勝ちを決めることには

ならないんじゃないかな

この考えに小さい「つ」は慰められて

その晩 眠りに落ちたときには

穏やかな笑みが顔一杯に広がっていた

 

つづく

・・・

三修社発行

「小さい つ が消えた日」

ステファノ・フォン・ロー著から抜粋

 

***

 

今日の写真は

しつこく昨日の写真の二番煎じ

赤がくどかったので

少し色合いを変えて

ズーム感を減らしてみました

山茶花の花が中心です