その日その時 写真で見る歳時記

気ままに写した写真に気ままな言葉たちの集まり

思いがけない提案

2008年12月06日 | Weblog

 

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五十音村の住人たち

思いがけない提案

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小さな「つ」が色々学んでいる頃

すべての文字さんたちが

集会場に集まってきていた

眠そうに眼をこすっている文字さんもいますが

大抵は昼間に居眠りをしてしまっていたので

このときには思いのほか

みんな眠気も覚めて元気になっていた

でも、自分たちの命にかかわる

大問題が起こっていることは

みんなよく分かっていて

気持ちは沈んでいた

もし、人間たちが日本語の代わりに

英語を話し出したら?

ひらがな、カタカナ、漢字の代わりに

ローマ字を使うようになったら?

また、手話で話し始めたら?

多分、日本語はすたれ、消えてなくなってしまうのだ

「あ」さんの言葉を借りれば

「人間たちが使ってくれなければ

みんな役立たずになって

そしていつか古い靴のように

我々も捨てられてしまうんだ

死んでしまうんだよ

わしは絶対死なんぞ 死にたくない」ってことなのだ

何か早急に手を打たなければならないのに

どうしたらいいのか分からない文字さんたちは

この日も何も手がかりがないまま

小さい「つ」を捜しに出ようとしていた

が、その時 村一番の長老で

一番賢い「こ」さんが立ち上がり こう提案した

「日本はとても大きく 小さい「つ」はとても小さいので 

彼を見つけるのことは難しいだろう

そこでじゃぁ わしに良い考えがある

みんな聞いて呉れるか」

みんなが自分に注目していることを確認してから

低い落ち着いた声でこう告げた

「人間の力を借りて小さい「つ」を捜すのじゃよ」

思いもよらないことを聞かされた

文字さんたちからは、しばらくの間

「おぉぉぉぉぉぉ~~」という驚きの声や

「あぁぁぁぁ~」と言う感嘆が聞こえてきた

「でも人間が私達の言うことを聞くのかしら・・・」

「そんなことは一度も聞いたことがないぞ、

でもどうやって人間に助けを頼むんだ?」

文字さんたちは、いつも人間に使われていたから

自分たちが逆に人間を使うなんて

考えもしなかった

だから みんなどうすればいいか

全く想像もつかなかったんだ

「人間が話すときは 普通なら

わしらが彼らの手助けをする

何を言うか何を書くかはにんげんが決め

わしらがその意志に従い順番に並ぶ

たとえば 人間が「おはよう」といいたいときには

「お」さんと「は」君と「よ」さんと「う」さんが組んで

力を合わせて人間が望んでいる

言葉の順番に並び

「おはよう」と言う言葉を作るわけじゃ

だが 今回は逆じゃよ

わしらがその語順を決めるのじゃ!!

そうすれば わしらの習慣を破らねばならんから

簡単なことではない

でも みんなが力を集めれば不可能ではない

大切なのはどんなことが起ころうとも

順番を守り 人間に言わせることだ

そして わしらの伝言を

小さい「つ」が受け取るまでやり続けるのじゃ

何があろうとも

順番が崩れぬように

腕を組んだり 手を繋いだりしてがんばってくれ

これはたいへんな精神力と体力を必要とすることじゃ

だから 今日はみんな充分睡眠をとって

あすのしごとにそなえようじゃないか

みんなある意味「こ」さんの考えに

半信半疑ではあったものの

ほかによい方法がない今

全員一致でこの提案に賛成した

それになんといっても「こ」さんは

村一番の長老で 一番賢い文字でもある

この晩 みんなで小さい「つ」への伝言を書き

早めに寝ることにした

なにせ明日は大切な仕事が待っているからね

 

つづく

・・・

三修社発行

「小さい つ が消えた日」

ステファノ・フォン・ロー著から抜粋

 

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小さい「つ」を捜すために・・

糸井と大作戦が行われます・・

どうなるか・・お楽しみに~

 

 

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今日の写真は

「う」さんと「か」さんの写真(笑)

うまくゆくといいなと遠い目で眺める鵜さん

うまくゆくカァ~なぁ~とカラス

小さい「つ」を捜す伝言は?