◆ 産前・産後の健康管理
妊産婦(妊娠中および出産後1年を経過しない女性)は、事業主に申し出ることにより、次の保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保することができる。(有給か無給かは会社の定めによる)【男女雇用機会均等法12条・13条】
〇妊娠23週までは4週に1回
〇妊娠24週から妊娠35週までは2週に1回
〇妊娠36週以後出産までは1週に1回
ただし、医師や助産師の指示でこれを上回ることもある。また健康診査等を受け、主治医から勤務時間の短縮や作業の制限、休業などの指導を受けた場合には、会社に申し出て措置を講じてもらう。(これらの措置には、妊娠中の通勤緩和、休憩に関する措置、つわりや切迫流産・早産の症状などに対応する措置が含まれる。)
◆ 産前・産後の労働
妊娠中又は出産後の女性労働者が、健康診査等の結果、医師等からその症状について指導を受けた場合、事業主に申し出れば、作業の制限、勤務時間の短縮、休業など、医師等の指導に基づいた措置を受けることができる。
○妊婦の軽易業務転換
妊娠中は、事業主に請求することにより、他の軽易な業務に替わることができる。(労働基準法第65条第3項関係)
○妊産婦等の危険有害業務の就業制限
妊産婦等は、重量物を取り扱う業務などの妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就くことはできない。(労基法第64条の3関係)
具体的には・・・重量物を取り扱う作業(継続作業:6~8kg 断続作業:10kg以上)、外勤等連続的歩行を強制される作業、常時全身の運動を伴う作業、頻繁に階段の昇降を伴う作業、腹部を圧迫するなど不自然な姿勢を強制される作業、全身の振動を伴う作業 他
○妊産婦に対する変形労働時間の適用制限
変形労働時間がとられる場合にも、妊産婦が請求すれば、1日及び1週間の法定労働時間を超えて労働する必要はない。(労基法第66条第1項関係)
○妊産婦の時間外労働、休日労働、深夜業の制限
妊産婦は、事業主に請求することにより、時間外労働、休日労働、深夜業(午後10時から午前5時までの間の労働)が免除される。(労基法第66条第2項、第3項関係)
◆ 産前・産後の休業
○産前休業・・・出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から請求すれば取得できる。(労基法第65条第1項関係)
○産後休業・・・出産の翌日から8週間は就業することができない。ただし、産後6週間を経過後に本人が請求し、医師が認めた場合は就業することができる。(労基法第65条第2項関係)
なお、予定日よりも遅れて出産した場合、予定日から出産当日までの期間は産前休業に含まれる。また産前休業が延びたとしても、産後8週間は「産後休業」として確保される。
◆ 出産に関する健康保険の給付(協会けんぽの場合)
○出産育児一時金、家族出産育児一時金
被保険者及びその被扶養者が出産した時に協会けんぽ支部へ申請されると1児につき42万円が支給される。(産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は39万円となる。)なお、多胎児を出産された場合には、出産された胎児数分だけ支給される。
○出産手当金
被保険者が出産のため会社を休み(出産予定日の6週間前と産後の8週間)、事業主から報酬が受けられないときは、出産手当金として1日につき標準報酬日額の3分の2に相当する額が支給される。(なお休んだ期間について、事業主から報酬を受けられる場合は、不支給又は支給額の調整がある、また任意継続被保険者は、出産手当金は支給されない。)
◆ 妊産婦のための支援制度
○母子健康手帳の交付
○公費の妊婦健康診査
妊娠中、医療機関で健康診査や精密 健康診査を受けられる制度が市区町村によってある。
枚方市の場合の妊婦健康診査の助成額・・・受診券(1枚目)14,000円、受診券(2枚目から5枚目)3,000円、受診券(6枚目)5,000円、受診券(7枚目)8,000円=7回目以降(妊娠後期の期間中)いつでも使えます、受診券(8枚目から14枚目)3,000円
○保健指導・健康相談
妊娠・出産に関しての保健指導や健康相談は、市町村保健センターや保健所などで行われている。また、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などの異常のある場合には、必要に応じて医師、助産師、保健師による家庭訪問が行われている。
○母親(両親)学級
病院や市町村保健センター、保健所などで妊産婦のための母親学級が行われている。
○妊産婦歯科健康診査
妊産婦の歯科健康診査の費用を1回助成する制度。
◆ 育児休業など男女労働者のための制度
○育児休業制度
・子が1歳に達するまでの間(保育所に入所できない等の場合には子が1歳6か月に達するまでの間)は、事業主に申し出ることにより、父親・母親のいずれでも育児休業を取ることができる。
なお、父母がともに育児休業を取得する場合は取得可能期間が延長され、子が1歳2か月に達するまでの間に父母それぞれ1年間まで育児休業を取得できる。【パパ・ママ育休プラス】
○育児休業給付金
雇用保険の一般被保険者で、1歳又は1歳2か月(支給対象期間の延長に該当する場合は1歳6か月)未満の子を養育するために育児休業を取得するなどの要件を満たした場合、育児休業給付金が支給される。
支給額は、支給対象期間(か月)当たり、原則として休業開始時賃金日額×支給日数の40%(当分の間は50%)相当額。
○育児休業保険料免除制度
育児・介護休業法による満3歳未満の子を養育するための育児休業等(育児休業及び育児休業に準じる休業)期間について、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業主の申出により、被保険者分及び事業主分とも免除される。
なお、この免除期間は、将来、被保険者の年金額を計算する際は、保険料を納めた期間として扱われる。
○短時間勤務制度
事業主は、一定の条件を満たす3歳未満の子を養育する男女労働者について、短時間勤務制度(1日6時間)を設けなければならない。
○所定外労働の免除制度等
・3歳未満の子を養育する男女労働者は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、事業主に請求することにより所定外労働が免除される。
・小学校入学までの子を養育する男女労働者は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、事業主に請求することにより、深夜業(午後10時から午前5時までの間の労働)が免除される。
・小学校入学までの子を養育する男女労働者は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、事業主に請求することにより、1年につき150 時間、1か月につき24 時間を超える時間外労働が免除される。
○子の看護休暇
小学校入学までの子を養育する男女労働者は、1年につき子が1人なら5日、子が2人以上なら10 日まで、病気・けがをした子の看護、予防接種および健康診断のために休暇を取ることができる。
◆ 不利益取扱いの禁止
事業主が妊娠・出産・産休取得等を理由とした解雇その他の不利益な取扱いをすることは禁止されている。