ヒーメロス通信


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ボードレール『悪の花』から「秋の歌」訳詩・小林稔

2013年03月26日 | ボードレール研究

ボードレール『悪の花』から「秋の歌」訳詩・小林稔

 

 

11 秋の歌 CHANT D´AUTOMNE

 

  一

もうすぐ冷たい暗闇へ、私たちは身を投げ沈むだろう、

さらば、私たちの短過ぎる夏の鮮烈な光よ!

私にはすでに聞こえている、中庭の敷石の上

たきぎの束が倒れ、不吉な爆発音を響かせているのを。

 

まったき冬が私の身に戻ってこようとする。怒り、

憎しみ、戦き、恐れ、強いられるつらい仕事、

そして、地獄の極に落ちた太陽のように

私のこころは、赤く凍った塊りにすぎなくなるだろう。

 

身震いしながら私は聴く、薪の一つ一つが倒れる音を。

断頭台を築く音は、もう密かな響きを立てない、

私のこころは、疲れを知らない重厚な金槌に打たれ、

押しつぶされ、崩れ落ちる塔と同じだ。

 

この単調な身を揺する爆音は、どこかで

ぞんざいに、棺に釘を打つ音のようだ。

誰を埋葬するための?――昨日は夏、そして、今日は秋を!

この不可思議な物音は、出発を告げるように鳴り響く。

 

  二

私は愛する、あなたの切れ長な眼の、緑がかった光を。

優しくて美しい人よ、だが今日は、私にはすべて苦く

何ものもない、あなたの愛も、閨房も、暖炉も

海のうえに注ぐ太陽ほど価値を見出せないのだ。

 

それでも、私を愛せよ、優しい人! 母親になりたまえ、

恩知らずな者のため、それとも邪悪者のために。

恋人であるにせよ妹であるにせよ、輝かしい秋の、

さもなくば沈みゆく太陽の、しばらくは穏やかなる者になりたまえ。

 

何という短い務めよ! 墓は待つ、貪欲なる墓よ!

ああ! 許したまえ、あなたの膝のうえに私の額をのせ

灼熱の真白い夏を惜しみつつ、

晩秋の、黄色く心地よい陽射しを味わうことを!

 

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