ボードレール『悪の花』から「夕暮れの諧調」訳詩・小林稔
10 夕暮れの諧調 HARMONIE DU SOIR
さあ、時は来た、茎のうえで奮えつつ、
それぞれの花が、吊り香炉さながら匂い立つ時。
音響と薫香は夕暮れの空気に溶け入る。
陰鬱なワルツよ、もの憂げな眩暈よ!
それぞれの花が、吊り香炉さながら匂い立つ。
悲嘆に暮れるこころのように、ヴィオロンの音色が揺れる、
陰鬱なワルツよ、もの憂げな眩暈よ!
聖体仮安置所のように、空は悲しくも美しい。
悲嘆に暮れるこころのように、ヴィオロンの音色が揺れる、
広大で暗黒の虚無を憎む、優しいこころよ!
聖体仮安置所のように、空は悲しくも美しい。
太陽は凝固するおのれの血のなかで溺れた。
広大で暗黒の虚無を憎む、優しいこころは
ひかり眩い過去からすべての名残りを刈り込む。
太陽は凝固するおのれの血のなかで溺れた…。
きみの思い出は私のなかで、聖体盒のように輝いている!
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