ヒーメロス通信


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ボードレール『悪の花』から「夕暮れの諧調」訳詩・小林稔

2013年03月25日 | ボードレール研究

ボードレール『悪の花』から「夕暮れの諧調」訳詩・小林稔

10 夕暮れの諧調 HARMONIE  DU  SOIR

 さあ、時は来た、茎のうえで奮えつつ、

それぞれの花が、吊り香炉さながら匂い立つ時。

音響と薫香は夕暮れの空気に溶け入る。

陰鬱なワルツよ、もの憂げな眩暈よ!

 

それぞれの花が、吊り香炉さながら匂い立つ。

悲嘆に暮れるこころのように、ヴィオロンの音色が揺れる、

陰鬱なワルツよ、もの憂げな眩暈よ! 

聖体仮安置所のように、空は悲しくも美しい。

 

悲嘆に暮れるこころのように、ヴィオロンの音色が揺れる、

広大で暗黒の虚無を憎む、優しいこころよ!

聖体仮安置所のように、空は悲しくも美しい。

太陽は凝固するおのれの血のなかで溺れた。

 

広大で暗黒の虚無を憎む、優しいこころは

ひかり眩い過去からすべての名残りを刈り込む。

太陽は凝固するおのれの血のなかで溺れた…。

きみの思い出は私のなかで、聖体盒のように輝いている!

 

 

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