あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

食の安全とは?

2017-06-17 | 
僕は凝り性である。
そしてまた食道楽でもある。
美味い物を食う為には努力を惜しまず徹底的にやる。
旨い卵かけご飯を食べる為にニワトリを飼うぐらいである。
実際にうちの卵は超がつくくらいに旨い。
熱々のご飯に生卵をたっぷり、少ないとご飯の熱で火が通ってしまうからね。
生卵独特の旨みに醤油の味が混ざりそれがご飯にからみつき・・・、ううむ幸せだあ。
ちなみに僕は生卵は別容器で黄身と白身をしっかり混ぜていただく派である。
特に我が家の卵は新鮮すぎて黄身と白身が上手く混ざらない。
それから生で食べるのはすき焼きなんてのも旨いな。
きっちり味が付いた肉だの野菜だのを、溶き卵にからめて・・・これも美味しいぞ。
生で食べるのは和食だけではない、イタリアーノも然り。
それがスパゲッティ・カルボナーラ。
我が家のレシピは熱々のパスタに、贅沢に卵黄だけを皿の上で混ぜる。
カルボナーラはクリーミーなソースが命で、火を通しすぎると炒り卵みたいになって口当たりも悪くなる。
パスタはバリラ、ベーコンは近所の肉屋の特製ベーコン、そこに生クリームとパルメザンチーズのソースと卵黄がねっとりと絡み合い、仕上げは粒こしょうの辛味がピリっと。
ちなみにソースの味付けは塩だけ、当然ながら天然塩。
これはそんじょそこらのレストランなんかより断然美味い、ううむ、たまらんぞ。



ある時にそんな生卵ライフにケチがついた。
知人にうちの卵をあげて、その人がブログに載せたら知らない人からコメントがついた。
大きな農家ではワクチンを摂取しているけど、うちのように個人で飼ってる場合はワクチンをやってないので危ないんだと。
海外では食中毒の危険があります。日本では生食の事を考えて洗浄、殺菌をしていますが、海外ではやっていないので生食は危ない。食べるのは自己責任で。
ああ、そうですか。仰ることはごもっとも。あなたは何も間違ってはいないさ。
じゃあ、こちらの言い分も聞いてもらおうじゃないか。
ニワトリというのは卵管が体内で直腸と繋がっている。
要はニワトリの卵というのはケツの穴から出てくる。
当然ながらニワトリの糞がくっつくこともある。
食中毒の素のサルモネラ菌なんかはそこから来るという。
我が家では餌にEMを混ぜているので糞が臭くない。
EMというのは以前にも書いたが、善玉菌と悪玉菌とどっちつかずの菌があって、善玉菌を増やすことによってどっちつかずの菌を善玉菌に変え、結果的に悪玉菌が減るというものだ。
善と悪という言葉使いがあまり好きではないが、まあ簡単に書くとそういうことだ。
ニワトリの餌に毎日EMを混ぜているので糞が全然臭くなく、これがいい肥料になる。
鶏舎の中はおがくずを敷き詰めて、毎日糞を拾いコンポストの容器に入れるので鶏舎の内側は清潔だ。
そしてその日に生まれた卵は一つ一つ布巾で拭いて汚れを落とし、殻に日付を書いて生食は新しい物から食べる。
洗浄殺菌こそはしていないが、これぐらいやれば大丈夫だろう、というところで生でガンガン食うのである。
それで当たったら仕方ない。
いや、それ以前に人間の体はそんなにヤワじゃない。
さすがに病気などで抵抗力が弱っている時に疑わしい物を食えば食中毒の確立はぐんと高まるだろう。
でも普通に健康だったら、多少の菌は体の方でなんとかしてくれる。
ましてや、我が家のようなニワトリも健康という飼い方をしていれば確立だって低くなるだろう。
全く科学的でないし、実際にサルモネラ菌があるのかどうか調べたことなどないし、これからも調べる気もない。
でも、うちの卵は安全だと僕は信じる。
その確信とは自分の行動から来るものだ。
それを、なんだ?ワクチンやってないから危ねえだ?海外の卵は危ねえだと?
ふざけんじゃねえぞ、このすっとこどっこい!
手前が食わないのは勝手だが、自分で何も行動を起こさずにあーだこーだいう了見が気に入らねえ。
手前みてえのは血も涙もねえ丸太ん棒みてえなヤツだぁ!呆助ちんけぇとう株っかじりぃ、この芋っ堀りめぇ。
でけえ面するない、黙って聞いてりゃ増長しやがって御託が過ぎらあ。
こちとらでけえ声は地声なんでぇ、まだまだまだまだせり上がらぁ。
この蛸の頭にすっぱらべっちょにあんにゃもんにゃ、そいからオマケにウマの骨にウシの骨、ひょうたんボックリコォ。
うちのヤツらはそんじょそこらのニワトリさんとはニワトリさんの出来が違うんでぇ。
分かったら味噌汁で顔洗って出直して来やがれぇ!!!!



ああ、すっきりした。
なんか、今、一瞬だけ聖笑師匠が降りて来たようだったな。
結局のところは食いたきゃ食えばいいってことだし、自分が危ないと思えば食わなきゃいいだけの話だ。
そうは言うものの、うちの卵だって100%安全ではない。
だいたい100%の安全などというものはない。
そもそも安全というものはどういうことだ。
それは誰かがお墨付きをするものなのか?
人が安全と言えば、安全なのか?
そこに大きな勘違いがある。
例えば賞味期限というもの。
あれだって賞味期限を過ぎても食べられる物はいくらでもある。
僕の友人の話だが、彼の家は田舎のよろず屋で食卓には常に店の売れ残りのものがあったと言う。
賞味期限切れの物なのだが、各自が食べる時にそれの匂いを嗅いで、食べれるものを食べるというのがその家のやり方なんだそうな。
だから賞味期限なんて、あってないようなものだとヤツは言った。
ふうむ、家庭内で自己責任か、すごいな。
今の世の中、賞味期限の内だったら、まあどんなものでも食べられるだろう。
ただし『食べられる物』と『美味い物』は違う。
やっぱり新鮮な物は美味い。美味いし、安全だと思う。
生卵万歳人生はまだこれからも続く。



でも全く逆の話で、古い方が良いというものもある。
発酵食品である。
発酵食品と一口に言っても、納豆 漬物といった食品から、チーズ ヨーグルトと言った乳製品、僕の大好きな酒類、味噌 醤油といった調味料に至るまでものすごい種類がある。
共通しているのは菌の力によって出来上がるということだ。
その物や菌の種類によって発酵の温度や期間が変わるし、保存の期間も変わる。
1日で出来るものから、数か月、果ては何年というものまで、まさしく多岐多様なのである。
腐ってダメになるものもあるし、いつまでも腐らないものもある。
腐らない物の代表格が味噌であろう。
味噌は発酵の期間や材料によって味が変わる。
今やニュージーランドでも本物の味噌が手に入る。
僕の友達のゴーティー(トーマスと共通の友達でもある)がネルソンで味噌屋をやっている。
天然塩とオーガニックの大豆で作る味噌は絶品で、我が家では常にこの味噌を使っている。
一度だけ味噌を作ったこともあり、その時は旨い味噌が出来たのが、その手間やコストなどを考えると友の造る味噌を買った方が良いという結論に達した。
自分でやってみるのは良いことだが、自分一人でやる事にも限りがある。
今では味噌造りはあきらめて、お金を払って味噌を買っている。
自分が納得のいくお金の使い方だと思う。
この味噌のパッケージに製造日と賞味期限が書いてある。
賞味期限は1年ぐらいという表記だが、味噌には賞味期限などない。
前にまとめて買った味噌を何年か放っておいたら発酵が進んで見事な赤味噌になった。
これはパッケージの中でも菌が生きているからであって、常温では発酵が進む。
そのまま発酵を進めると色は黒っぽくなっていくので、ほどほどのところで冷蔵庫へしまうと発酵は止まる。
味は見事なぐらい最初の物とは違う、独特の赤味噌風味で別の製品として売れるだろう。
家ではこの合わせ味噌で味噌汁を作っているが、二つの味噌を合わせる合わせ味噌なんてものも考えてみれば和食のテクニックだな。
もともと味噌には賞味期限なぞないのだが、こちらではそれを理解してもらうのが難しいようで、ゴーティーもまあ仕方なく賞味期限をパッケージに載せたようだ。
それより今の現代人に欠けているのは『食べ物も生き物だ』という心ではなかろうか。
生きている味噌だからこそ常温で発酵が進み独特の味が出る。
生きているものだからカビ菌が繁殖して食べられなくなるものもある。
菌というものがあればこそ発酵ができるのだ。
人間の体の中だっておびただしい数の菌が生きている。
その菌を極度に恐れおののき、殺菌、抗菌、除菌といった名前の商品が売れている。
なあ、そろそろ菌を悪者扱いするのやめないか?
そりゃ中には人の健康を害するものだってあるが、ほとんどのものは人畜無害だし、有効利用できるものだって多い。
菌は目に見えないので『生き物』という感覚はないが、部屋の隅でビール作りの樽がコポコポと音を立てているのを聞くと、ああ生きてるなあと愛おしく感じるのだ。



さてその菌を利用した発酵食品の数は100を超える。
納豆、ヨーグルト、味噌、醤油、アルコール類、パン、漬物はもちろん、「え?こんなものまで」と思う物もある。
紅茶、鰹節、醸造酢、アンチョビ、タバスコ、カカオ、ナタデココ、も発酵食品の仲間らしい。
僕が最近作り始めた発酵食品は黒にんにく。
これが体に良いらしい。
「体に良い」という言葉は、テレビでみのもんたがその言葉を使うと次の日にスーパーからその物がなくなるという魔法の言葉である。
その裏には潜在的に病気に対する恐怖、不安、怯え、といった想いがあり、またその魔法の言葉を利用しているのが今の社会だが、その話を始めるとキリがなくなるので話を元に戻して黒にんにく。
この効果たるものすさまじい。
疲労回復・風邪予防・血液サラサラ・精力アップ・がん予防改善・生活習慣病予防・アレルギー(花粉症・ぜんそく・アトピー)改善・高血圧・動脈硬化・夏バテ・美肌・アンチエイジング(老化防止)・便秘解消・冷え症の改善・ダイエット・うつ病・気力UP。
いや、もうこれさえあれば医者も病院も薬もいらないじゃん、というぐらいの代物である。
そんな医学会、病院、製薬会社、健康サプリメント産業その他もろもろの存在を脅かすような食べ物を作ってしまったのだが、これが絶妙に美味いのである。
体にいいから、と言って不味い物をガマンして食べるのは何か違うと思う。
体にいい物は美味い、と同時に、美味い物は体に悪い。
矛盾しているように聞こえるが、どちらも真実だ。
僕は体に良くても不味い物を食べたくない。
この黒にんにくは味付けなど一切せずに保温発酵させたものだが、プルーンに似た甘さと酸っぱさがある。
家では毎年にんにくを何百株も作るので、これならばすべてを有効利用できる。
ただしどんな上手い話にも落とし穴はある。
この黒にんにくが出来て美味かったものだからパクパク食べたら、おならが臭いこと臭いこと。
毒ガス製造人間に変身してしまった。
あの独特のゆで卵のような、温泉の硫黄のような、あの匂いである。
臭いことは臭いのだが、自分の匂いというのは不思議と我慢できるものである。
布団の中でして、ちょっとパタパタするとムワっと来るあの匂いを嗅いで、よしよしなどと思ってしまう。
不思議なもので自分の臭さは我慢できるというか、どちらかと言えば好きなのだが、他人のそれは我慢できない。
例え親子で血が繋がっていようが、嫌だ。
親子でも嫌なのだから、もともとの他人である僕の奥さんの苦悩たるや計り知れない。
次の日、黒にんにくを入れた容器に『食べすぎキケン』という女房が描いた絵が張られた。
食の安全とはなかなかに難しいものである。








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