あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

ああ、日本酒のいい香りが・・・

2015-12-23 | 
僕の所属するタンケンツアーズはガイド会社でボスは3人なのだが、この人達が面白い。
大男のクレイグは天真爛漫、細かい事にこだわらず豪快。ボスと呼ばれるのを嫌う。
対してデイビッドは繊細で細かく、日本人の僕よりも日本人っぽいかもしれない。
リチャードはその中間ぐらいで3人でうまくバランスが取れている。
ボス達はどんどん新しいことをやる人達で、ハイキングガイドや本の出版だけでは飽き足らず、今度は日本酒作りが始まった。
去年から内密にと念を押され話は聞いていたが、今シーズンはオフィスを街中から町外れに移し、隣接する倉庫でデイビッドが主になり日本酒を作っている。
こういうことは大雑把なクレイグではダメだろうな。
わりと細かくきっちりとやるデイビッドの性にあっているのかもしれない。



1日の仕事が終わり、オフィスへ戻ると、日本酒のいい香りがプーンと漂っている。
デイビッドが手招きして酒蔵へ僕を呼ぶ。
できたて、しぼりたての日本酒の試飲だ。
僕が好きなのは新潟の酒なのだが、それには及ばないものの、素人が作ったにしては上出来。
大手メーカーの混ざり物だらけの酒より、よっぽど美味い。
ただ樽ごとに出来不出来があるので、どれがいいか試飲をするわけだ。
中には不味くて飲めないようなものもあったが、最近は品質も安定しつつある。
味は端麗辛口、香りがとても良い。



名前は『全黒』。
全黒って、あーた、オールブラックスですか?
それって・・・うーむ。
ニュージーランドっぽいと言えばそうだが、うーむ・・・。
でも地元のレストランに置くならこの名前は受けるだろうな。
日本酒を趣味で作る話は聞いたことがあるが、公にはニュージーランド初の酒蔵。
それも昔ながらのやり方で当然無添加の純米酒。



さすがうちのボス。
面白そうと思うことはどんどんやる。
それがニュージーランド流。
誰もやらない事はやったもの勝ちである。
そんなわけでメイドインクィーンズタウンの『全黒』どうなりますやら。
蔵出し間近、乞うご期待。

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あー、やっぱり家はいいのお

2015-12-18 | 日記
クィーンズタウンからマウントクックまでお客さんを乗せ、その流れでクライストチャーチの我が家へ帰ってきた。
クリスマスホリデーをひかえ交通量は多く、コーナーで異常に遅くお約束のようにストレートで飛ばす車に妨害されながらも帰ってきた。
帰ってビールを飲みながら晩飯を食べるわけだが、これがまた旨い。
ほとんど全て庭の野菜で、特に今はソラマメが旬。
旬の物を食べるということはとても大切な事だと思う。
野菜たちが季節や時候に合わせ育ち、最高のタイミングで人間がそれをいただくのが旬で、野菜のエネルギーが最も高い瞬間なのだ。
こういう野菜を食べていれば病気にもならない。
特に今のご時世、ハウス栽培や長期冷蔵で野菜は一年中お店に出回り、各野菜の旬がいつなのか分からなくなる。
今、ふと思ったのだけど旬という概念は西洋社会にあるのかな。
今度うちのボス連中に聞いてみよう。
とにもかくにも旬の野菜は旨く、人を元気にさせるのだ。

ビールを飲んでいると娘が何やら持ってきた。
学年で英語の成績が一番だったらしく記念の盾をもらったようだ。
その他、賞状がずらずらとある。
どうやら我が娘は成績優秀で学年トップの優等生らしい。
「勉強しろ」と言ったことは一度もないが、子供の自主性に任せれば伸びるところは自然に伸びる。
子供だけでなく大人も『嫌なことをやらなければならない』のが今の社会だ。
勉強だけできても人間性が欠ければどうしようもないのだが、娘は人を思いやる心を持っていると先生が言っていたのでまあ安泰だろう。
出来の良い子を持つと親は楽だな。
僕のようないたずらばっかりする腕白坊主を持った両親はさぞかし大変だっただろう。

家に帰ったのも束の間、翌日からまたツアーが始まる。
この時期はてんてこまいの忙しさだ。
もう少しゆっくりしたいという気持ちがないと言えばウソになる。
だが僕にできる事とは、全ての現象に不平を言わず身の周りの事が全て自分の心から来ているという事を知り、瞬間ごとに自分がやるべきことをするのだ。
今日の締めはネットで拾ったこの人の言葉。

「なんとかなる それはやる事をちゃんとやってる人のせりふ」
by リトルミイ(ムーミン)
コメント (5)
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イヤホンガイド

2015-12-11 | ガイドの現場
思いつくことは数あれど、いざそれを文にしようとすると躊躇してしまうことは多々ある。
本音を書けば傷つく人は必ずいるし、だからといって当たり障りのない話ばかりだとつまらない。
その辺りのバランスが大切なのだろう。

先日は1日ハイキングの仕事で添乗員にイヤホンガイドをしてくれと頼まれた。
ガイドが話すのがお客さん全員に聞こえると言えば聞こえはいいが、山でそれをやるか?
南極センターみたいな施設でやるとか、車の中なら話は分かる。
だがそれを自然の中でやるという感覚は僕にはまったく理解できない。
その時は添乗員がついて来ない仕事だったので、その場では適当にごまかして現場では使わなかった。
以前、山仲間のトーマスと同じような話をしたが、自分のところで実際に依頼されたのは初めてだ。
なんだろうね、こういうのって。
物事の本質を見失うとはこういうことなのだろうな。
森の中でイヤホンなんかつけたら、鳥のさえずりや水の音、風で木がこすれるなどの音という重要な要素が欠けてしまう。
それはその場にある最高のものを用意する、というおもてなしの心とは違う。
はっきり言ってしまえば、媚だ。
と、そこまで言えば添乗員も傷つくから、その場では「まあ、現場で様子を見ながら使うかどうか決めます」なんて言ってごまかした。
本音を言って、わざわざその人を不快にさせる必要はない。
それぐらいの社会性はある。
お客さんもイヤホンがないからといって文句をいうことなく、楽しく1日を過ごせた。
「もし、お客さん本人にそういうのを頼まれたらどうするの?」という質問にはこう答えよう。
「大丈夫、僕の前にはそういうお客さんは現れないから」

いつも僕のブログは長いから今回はこのへんでさくっと。
それでは皆様、また来週~。
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ある休日の一日。

2015-12-04 | 日記
休みの日だが、このところ山歩きの仕事が続いたので、山に行く気にもならず。
それよりも細々とやることが溜まっている。
掃除、洗濯、家から持ってきた卵が古くなる前にマヨネーズも作りたいし、仕込んだビールの一時発酵が終わり瓶詰め作業の段階になった。
今回のビールはピルスナー。
夏らしくさっぱりしたビールを飲みたいからね。
以前、友達が作るのを手伝ったことがあるので、どんな具合かはなんとなく分かる。
2時間ぐらいかけて750cc入りの大瓶30本ができた。
2週間ぐらいで飲めるそうだ。楽しみである。
マヨネーズはどっさり作り友達にもおすそ分け。
最近ではマヨネーズを買うのがバカバカしくなった。
それは大手のマヨネーズ会社がどういうやり方でマヨネーズを作っているか、商社の人に聞いたこともあるが、なにより自分の所で食べきれないぐらいの卵を使わない手はない。
その代わり素材は厳選する。
マヨネーズは基本的に油、酢、卵、塩コショウで作る。
それぞれの素材で本物を使えばそれだけで旨くなる。
卵は家の卵、できるだけ新鮮なものを常温で使う。
油は米油、酢は純米黒酢、塩はブレナムの海の塩、胡椒はガリガリ削るやつ、ええい景気づけに粒マスタードも入れちゃえ、と調子に乗ってたくさん作ってしまった。
それならそれで友達に喜んでもらえるだろう。
その他、包丁研ぎ、洗濯などもろもろの事をしていたら夕方になってしまった。

その晩は友達のキヨミちゃんの家にお泊りをすることになっていた。
キヨミちゃんはパートナーのマイクと一緒にとあるビジネスをしている。
僕達がよく歩くルートバーントラックは全長32km、普通なら2泊3日で歩く、ニュージーランドで一二を争う人気トラックだ。
問題なのはスタートとゴールが違うのでレンタカーで旅をしている人は困ってしまう。
そこで彼らがお客さんの車を運転してゴール地点へ運び、彼らはその二泊三日の行程を一日で走り抜けてしまう。
そんな彼らしかできないようなビジネスを数年前から始め、今では需要が増え大人気。
人を雇ってやりくりするくらいに会社は成長した。
同時にグレーノーキーという場所に土地を買い、コツコツと自分達で家を建ててしまった。
車で40分ぐらいかかる所なので泊まりで遊びに行くことになった。
泊まりなら安心して飲めるからね。
「生ハムがあるから好きにやって。ご飯を作ってくれたら嬉しいから」
キヨミちゃんからそう言われて、家に行き秘密の鍵の隠し場所で鍵を開け中に入り、まずはキヨミちゃんの旦那のマイクが作ったビールを勝手に冷蔵庫を開けて飲む。
以前はさすがに一言聞いていたが、最近では何も聞かずに勝手に飲む。
遠慮とか一切なく自分のもののように飲む。
ビールを飲んで、山を眺める。
白い氷河を乗せたマウント・アーンスローが正面に見える。
うむ、悪くないぞ、これは。
庭に出れば野菜があるわあるわ。
大根、チンゲン菜、レタス、アーティチョーク、ジャガイモ、ソラマメ、ねぎ類、その他いろいろ、およそこの気候で育つであろう全ての野菜がある。
庭の片隅というかかなり広い範囲でニワトリコーナーがあり、二羽ニワトリがいる。
自給自足を目指す方向が同じだと、互いに何をやっているか分かる。
他人の庭だが、何を収穫すべきか、それによって献立を考える。
どれどれキッチンには、やはりというか予想通りというかジャガイモがゴロゴロ。
芽も出始めている。きっと庭で取れたものなんだろうな。これは使わねば。
生ハと一緒にポテトサラダだ。
こんなこともあろうと、自家製マヨネーズを持ってきたのだ。
ビールを飲みながら芋の皮を剥き、ゆでる。
ゆでたてのところに塩と酢できっちりと下味をつけるのがコツだ。
さてと生ハムね。
カウンターの上にはどかーんと豚の桃肉のかたまりが居座っている。
重さは4キロぐらいはあろうか。
生ハムなんていうと高級肉屋で、透けるくらい薄切りのが数枚でパックされているのを見たことがある。
旨そうだが高すぎて買えないというイメージだが、もともとはこういう塩漬け肉の塊を薄切りしただけの話だ。
試しに数枚切ってポテトサラダ用にフライパンで焼いてみたがこれがすこぶる美味い。
塩加減もほどよく、ああ、いかん、こんなのビールが進んでしまうではないか。
ガバガバビールを飲みながら料理をしているとマイクが帰ってきた。
「よう、兄弟、元気でやってるか?」
「おう、もう好い心地でやってるぜ」
固い握手を交わし、そして乾杯。ここでは乾杯の時に目を合わすのが流儀だ。
そうこうしているうちにキヨミちゃんもフラットメイトのロンも帰ってきた。
キヨミちゃんとの付き合いも10年以上になるだろうか。
元看護婦だが若いときにここへきて、山のガイドなどかなりワイルドなことをやってきた。
今ではルートバーンを週に何回も走るという、彼女でしかできないことを仕事としてやっている。
何年か前にはブロークンリバーで一緒に滑ったし、家庭菜園のやり方など何かと共通時効が多い友達である。
ロンは去年までルートバーンの山小屋の管理人で、何回も会っているので話が早い。
本日のメニューは前菜にアワビの煮しめ。
この前トモ子がお土産に持ってきたアワビは、山に住む彼らには最高のご馳走だ。
生ハムスライスを皿に並べ、刺身っぽく生肉で一皿。
そしてメインのハムステーキは、マイクが帰りがけに取って来たクレソンをどっさり敷いてその上に。
あとは大き目のサラダボールたっぷりのポテトサラダ。
これで充分でしょう。

飯は美味く、話は尽きず、酒も尽きず。
さらに彼らとの距離が縮まった一晩だった。
こんな休日も最高。


温室はないが板ガラスを上手く利用している。


野菜は豊富だ。


庭には二羽ニワトリ


自家製ビールの樽が当たり前のようにキッチンの隅に居座る。


生ハムとはもともとはこういうものなんだよね。
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