僕のかかりつけの整体師でオノさんという人がいる。
クライストチャーチに20年ぐらい住んでいて、街中でクリニックを開いている。
数年前に腰をやってしまった時に友達から「腕の良い人がいるよ」と聞かされ、彼のクリニックを訪ねてみたが、その時はたまたまクリニックを閉めていて会うことはできなかった。
人との出会いは来るべく時にやってくる。
去年、クィーンズタウンで飲みに出た時、帰る前にもう一杯やっていこう、と寄った店にオノさんが居た。
僕は友達と一緒に飲んでいたのだが、トイレに行った時にオノさんと隣り合わせになり話が始まった。文字通り、臭い仲となったわけだ。
10分後、僕らは10年来の友達のようにカンパイを重ねた。
話し始めてみれば繋がる繋がる。自分の知り合いや友達の多くがオノさんの知り合いで、今まで出会わなかったのが不思議なくらいに人間関係が繋がった。
話が進んで気が付いた。キャッスルヒルでも、スプリングフィールドの宿でも、僕らは何回も出会うチャンスがあったが、その時には会えなかったのだ。
何かを追い求めている時にはなかなかたどり着かない。だが自分がやるべきことをやっていると追い求めていた物が向こうからやってくる。
オノさんとの出会いはまさにそれだ。
オノさんは年に数回、クィーンズタウンへ出張マッサージに来る。
毎回1週間ぐらい友人の家に泊まり込んで、その家でマッサージをおこなう。
その友人というのも僕の20年来の友達なのだから笑ってしまう。
その時にはどこも悪いところはなかったが、この機会にやってもらうことにした。
飲みながらオノさんがスケジュールをチェック、僕の休みの日とオノさんが空いている日がぴったり一致。
望んでいたこともその時が来れば、とんとん拍子に事は進む。
指定された日に僕はフラットメートのオッサンと一緒にオノさんを訪れた。
フラットメートのオッサンはこれまた面白い人で、この人の話を書き始めたら止まらないだろうから次の機会に取っておく。
ネタは小出しにしなくては。
マッサージ用のベッドにうつぶせになり、オノさんがグイグイとマッサージをする。
正直言って痛い。痛いが効く。グイグイと押すたびに僕は、あへぇ~、ぎあ~、うう~、などとうめく。
オノさんはマッサージの間、ベラベラとよく喋る。こっちはあちこち押さえられ、「うう」とか「ああ」とかしか言えないが、オノさんはその間喋りっぱなしだ。
これだけベラベラ喋られて、イヤな気がしないのは人徳なのだろう。
オノさんの指がグイグイと背中を押しながら移動する。
自分でもだいたいどこが痛いのかは分かる。
この先へ行けばもっと痛いだろうなあ、この辺で止まってくれないかなあ、という場所で指が止まった。
ホッとするのもつかの間、オノさんが嬉しそうに言う。
「あっ、み~つけた。ここだ。ここは逃がさないよ」
そしてグリグリ。
「あひ~、痛い痛い、まいったまいった。勘弁してください」
オノさんが力を抜く。僕も力を抜く。はあ~。そして恐ろしい質問をする。
「あの、これって反対側もやるんですか?」
「当然でしょ。右もやったら左もやる。でないとバランスが取れないでしょ」
「まあ、そうだけど・・・」
そしてグイグイ、グリグリ。僕は再びうめき声を上げる。
仕上げは整体だ。
マッサージを受けてグニャグニャになっているところで、ボキボキと骨を入れてしまう。
ここまでくると、やられ放題、されるがままに、無条件降伏。「もう、オノさんの好きにして」という感じである。
整体はあっというまに終わる。だがここまでのプロセスが大切なのだ。
クライストチャーチのクリニックだと、この後電気のマッサージ椅子が入る。
オノさんのマッサージは痛い。痛気持ちいいというか、病みつきになるような痛さだ。
ただ闇雲に痛いのはイヤだ、という人はこのマッサージは向かないと思う。
マイナスなしのプラスはありえない。
痛いのを受け入れて体を治すぞ、という自分の意志が必要だ。
この痛みは病気や怪我などの不安になるような痛みとは種類が違う。
その時は叫ぶぐらいの痛さでも、確実にこの後良くなるのが分かる痛さである。
以前、腰を痛めてからそれがクセになってしまい、あちらこちらのマッサージに行った。カイロプラクティスにも行ったし鍼も打った。
ただ、どこへ行ってもオノさんほどの満足感は得られなかった。
それまでは悪いところがあるから、どこかへ行くということを繰り返していたが、今は良い状態を持続するためにボクはオノさんの所へ通う。
「そうなんだよね。すごく悪い状態を治すには時間も手間もかかるけど、ちょっと悪いぐらいの状態ならばちょっとだけの手間で済む。良い状態で来てくれれば悪くならないようにできるからね。」
悪くなったらそこだけを見て治す、というのは西洋の医療だと思う。
オノさんの施術はそれより一歩進んで、体全体を見てバランスをとりながら治す。そして悪くならないようにという予防医療へ繋がる。
毎年毎年シーズンの始まりには、体は大丈夫かな?という不安を持ちながらシーズンインを迎えていた。
体が資本の商売である。体が壊れれば即おまんま食い上げだ。
オノさんに会ってからは、不安を抱えることなくシーズンに入れる。
精神的にも大きな違いである。
自分がやってもらって、あまりに良かったものだから僕は周りの友人、特にボクのように体を使ってやる仕事をしている人に勧めている。
ある人はすぐに予約を入れてやってもらうし、ある人は「まあそのうちにな」などと言ってやめてしまう。
ここで大切なことは、本人が「よしやってみよう」という気持ちを持つことだろう。
EM教の話でも書いたが、どんなに良いシステムがあろうと本人がやってみようと思わなければ何も始まらない。
逆に言えば、やってみようと決意した時点である程度は事は進んでいるのだろう。
さてそのオノさんの施術の気になるお値段は。
1時間のマッサージフルコースに華麗なしゃべりがついて$90。
毎度ありー チーン。
これがクィーンズタウンだと$130である。
ボクは最初はクィーンズタウンでやってもらったが、その時は$130でも安いと思った。
保険は効かない。
ニュージーランドではカイロプラクティスや針、フィジオと呼ばれる整体などは初診料だけで、ACCという保険のようなものがあり基本的にタダである。
タダで体を治してもらおうという人はそういう所へ行けば良い。
ボクはオノさんにやってもらう度に喜んでお金を払う。
プロの仕事にはそれなりの報酬というものがつくのだ。
腕の良い人はそれなりに稼ぐ。
だからプロのスポーツ選手は何億円も稼ぐのだし、ゴルゴ13などは鉄砲一発撃つだけで何千万もの報酬を得る。
そういう意味でオノさんはプロである。
体が資本の僕らが1年に2,3回やってもらって$300ぐらいで、体の調子が良く精神的に伸び伸び仕事が出来るのなら、そんな金は安いものだ。
そういう所をケチってはだめだ。
今の世の中、お金を払うことが損をするような風潮があるが、喜んでお金を払う物事もまた存在するのだ。
長々とオノさんの事を書いてしまったが、別に頼まれて宣伝をしているわけではない。
自分が良いと思うものを、人に伝えたいだけである。
ボクはオノさんの手をマジックハンドと勝手に呼んでいる。
最終的には一言。
「行けば分かるよ」
クライストチャーチに20年ぐらい住んでいて、街中でクリニックを開いている。
数年前に腰をやってしまった時に友達から「腕の良い人がいるよ」と聞かされ、彼のクリニックを訪ねてみたが、その時はたまたまクリニックを閉めていて会うことはできなかった。
人との出会いは来るべく時にやってくる。
去年、クィーンズタウンで飲みに出た時、帰る前にもう一杯やっていこう、と寄った店にオノさんが居た。
僕は友達と一緒に飲んでいたのだが、トイレに行った時にオノさんと隣り合わせになり話が始まった。文字通り、臭い仲となったわけだ。
10分後、僕らは10年来の友達のようにカンパイを重ねた。
話し始めてみれば繋がる繋がる。自分の知り合いや友達の多くがオノさんの知り合いで、今まで出会わなかったのが不思議なくらいに人間関係が繋がった。
話が進んで気が付いた。キャッスルヒルでも、スプリングフィールドの宿でも、僕らは何回も出会うチャンスがあったが、その時には会えなかったのだ。
何かを追い求めている時にはなかなかたどり着かない。だが自分がやるべきことをやっていると追い求めていた物が向こうからやってくる。
オノさんとの出会いはまさにそれだ。
オノさんは年に数回、クィーンズタウンへ出張マッサージに来る。
毎回1週間ぐらい友人の家に泊まり込んで、その家でマッサージをおこなう。
その友人というのも僕の20年来の友達なのだから笑ってしまう。
その時にはどこも悪いところはなかったが、この機会にやってもらうことにした。
飲みながらオノさんがスケジュールをチェック、僕の休みの日とオノさんが空いている日がぴったり一致。
望んでいたこともその時が来れば、とんとん拍子に事は進む。
指定された日に僕はフラットメートのオッサンと一緒にオノさんを訪れた。
フラットメートのオッサンはこれまた面白い人で、この人の話を書き始めたら止まらないだろうから次の機会に取っておく。
ネタは小出しにしなくては。
マッサージ用のベッドにうつぶせになり、オノさんがグイグイとマッサージをする。
正直言って痛い。痛いが効く。グイグイと押すたびに僕は、あへぇ~、ぎあ~、うう~、などとうめく。
オノさんはマッサージの間、ベラベラとよく喋る。こっちはあちこち押さえられ、「うう」とか「ああ」とかしか言えないが、オノさんはその間喋りっぱなしだ。
これだけベラベラ喋られて、イヤな気がしないのは人徳なのだろう。
オノさんの指がグイグイと背中を押しながら移動する。
自分でもだいたいどこが痛いのかは分かる。
この先へ行けばもっと痛いだろうなあ、この辺で止まってくれないかなあ、という場所で指が止まった。
ホッとするのもつかの間、オノさんが嬉しそうに言う。
「あっ、み~つけた。ここだ。ここは逃がさないよ」
そしてグリグリ。
「あひ~、痛い痛い、まいったまいった。勘弁してください」
オノさんが力を抜く。僕も力を抜く。はあ~。そして恐ろしい質問をする。
「あの、これって反対側もやるんですか?」
「当然でしょ。右もやったら左もやる。でないとバランスが取れないでしょ」
「まあ、そうだけど・・・」
そしてグイグイ、グリグリ。僕は再びうめき声を上げる。
仕上げは整体だ。
マッサージを受けてグニャグニャになっているところで、ボキボキと骨を入れてしまう。
ここまでくると、やられ放題、されるがままに、無条件降伏。「もう、オノさんの好きにして」という感じである。
整体はあっというまに終わる。だがここまでのプロセスが大切なのだ。
クライストチャーチのクリニックだと、この後電気のマッサージ椅子が入る。
オノさんのマッサージは痛い。痛気持ちいいというか、病みつきになるような痛さだ。
ただ闇雲に痛いのはイヤだ、という人はこのマッサージは向かないと思う。
マイナスなしのプラスはありえない。
痛いのを受け入れて体を治すぞ、という自分の意志が必要だ。
この痛みは病気や怪我などの不安になるような痛みとは種類が違う。
その時は叫ぶぐらいの痛さでも、確実にこの後良くなるのが分かる痛さである。
以前、腰を痛めてからそれがクセになってしまい、あちらこちらのマッサージに行った。カイロプラクティスにも行ったし鍼も打った。
ただ、どこへ行ってもオノさんほどの満足感は得られなかった。
それまでは悪いところがあるから、どこかへ行くということを繰り返していたが、今は良い状態を持続するためにボクはオノさんの所へ通う。
「そうなんだよね。すごく悪い状態を治すには時間も手間もかかるけど、ちょっと悪いぐらいの状態ならばちょっとだけの手間で済む。良い状態で来てくれれば悪くならないようにできるからね。」
悪くなったらそこだけを見て治す、というのは西洋の医療だと思う。
オノさんの施術はそれより一歩進んで、体全体を見てバランスをとりながら治す。そして悪くならないようにという予防医療へ繋がる。
毎年毎年シーズンの始まりには、体は大丈夫かな?という不安を持ちながらシーズンインを迎えていた。
体が資本の商売である。体が壊れれば即おまんま食い上げだ。
オノさんに会ってからは、不安を抱えることなくシーズンに入れる。
精神的にも大きな違いである。
自分がやってもらって、あまりに良かったものだから僕は周りの友人、特にボクのように体を使ってやる仕事をしている人に勧めている。
ある人はすぐに予約を入れてやってもらうし、ある人は「まあそのうちにな」などと言ってやめてしまう。
ここで大切なことは、本人が「よしやってみよう」という気持ちを持つことだろう。
EM教の話でも書いたが、どんなに良いシステムがあろうと本人がやってみようと思わなければ何も始まらない。
逆に言えば、やってみようと決意した時点である程度は事は進んでいるのだろう。
さてそのオノさんの施術の気になるお値段は。
1時間のマッサージフルコースに華麗なしゃべりがついて$90。
毎度ありー チーン。
これがクィーンズタウンだと$130である。
ボクは最初はクィーンズタウンでやってもらったが、その時は$130でも安いと思った。
保険は効かない。
ニュージーランドではカイロプラクティスや針、フィジオと呼ばれる整体などは初診料だけで、ACCという保険のようなものがあり基本的にタダである。
タダで体を治してもらおうという人はそういう所へ行けば良い。
ボクはオノさんにやってもらう度に喜んでお金を払う。
プロの仕事にはそれなりの報酬というものがつくのだ。
腕の良い人はそれなりに稼ぐ。
だからプロのスポーツ選手は何億円も稼ぐのだし、ゴルゴ13などは鉄砲一発撃つだけで何千万もの報酬を得る。
そういう意味でオノさんはプロである。
体が資本の僕らが1年に2,3回やってもらって$300ぐらいで、体の調子が良く精神的に伸び伸び仕事が出来るのなら、そんな金は安いものだ。
そういう所をケチってはだめだ。
今の世の中、お金を払うことが損をするような風潮があるが、喜んでお金を払う物事もまた存在するのだ。
長々とオノさんの事を書いてしまったが、別に頼まれて宣伝をしているわけではない。
自分が良いと思うものを、人に伝えたいだけである。
ボクはオノさんの手をマジックハンドと勝手に呼んでいる。
最終的には一言。
「行けば分かるよ」