あおしろみどりくろ

楽園ニュージーランドで見た空の青、雪の白、森の緑、闇の黒の話である。

キッズウィークエンド

2009-09-29 | 最新雪情報


9月の終わり、学校の春休みに合わせてブロークンリバーではキッズウィークエンドというイベントがある。
毎年テーマがあり、それに合わせ大人も子供もコスチュームを用意して楽しむ。
今年のテーマは『世界一周』
スキーインストラクターのサムはソンブレロにポンチョのメキシコ風。
その他、海賊、お姫様、中にはとんでもなくデカイ、フォークを背負った子供など。
「なんでフォーク?」
と誰もが思ったが、子供がこれだと言ったらそうなってしまうのだ。
要するに楽しければなんでもありだ。
パーマーロッジでは風船が飾り付けられ、その風船で子供達はバレーボールをする。
フェイスペインティング、塗り絵、おもちゃがロッジの中で散乱する。
そんな週末だ。



クラブチャンプと呼ばれるクラブメンバーのレースもこの日に行われる。
大人の大会は別の日にやるが、子供だけはこの日だ。
種目はスラローム、ジャイアントスラローム。
それからクラブチャンプとは別にミニスモーカーズというレースもある。
ミニスモーカーズとは決められた時間内で何回決められたコースをラップできるかというレースだ。
深雪は最初、レースに出るのを渋っていたが、なだめすかしてなんとか出場。
やってみた感想は「面白かった」
「そうだ、オマエはできるんだ。やってみるまでは上手くできるかどうか不安だろ?その不安は自分の心から来るんだぞ」
オヤジの哲学的な説教は聞き飽きた、という様子で深雪は次のレースへ向かう。
親バカだが深雪のスキー操作は抜群だ。
さんざん細いトラバースや急斜面、岩をさけながらのコースを滑ってきただけある。
あとはスピードに慣れ、力強いターンができるようになれば言うこと無しだ。
SL、GSと無難にこなす。
そうなると気になるのは結果発表だ。
「ねえ、お父さん、みいちゃん勝ったかなあ」
「分からん、結果は今日じゃなくてシーズン終わりのスタッフフェアウェル(うちあげ)で発表だからな」



引き続きミニスモーカーである。
時間は20分。ラグビートーの途中からラグビートー乗り場までのコースを何回ラップできるか競う。
深雪はまだ1人でロープトーに乗れない。
おしゃまなお姉さん、キンバリーが声をかけてきた。
「ミユキ、行くわよ。ロープトーはあたしが引っ張っていってあげるから」
「おお、そりゃいい。深雪、行ってこい」
「お父さんが引っ張ってくれるなら行く・・・」
やれやれ。
スタート地点に行ってみると周りの子供達は皆深雪より大きく、自分でロープトーに乗れないのは深雪ともう1人の子供だけだ。
案の定、深雪が怖じ気づいた。
「大きい子ばっかり・・・」
「いいんだよ、そんなの気にすんな!ヒトはヒト、オマエはオマエだろ」
「だってぇ」
「だってもへったくれもない。つべこべ言わずに黙って滑れ」
スタートをしてしまえば雑念は消える。他の子には置いて行かれるものの、自分なりのペースでスイスイ滑る。ほら見ろ、できるじゃないか。
ロープトーで牽引しながら深雪に言った。
「別に難しいコースじゃないだろ。こういうのはみんなでやるからいいんだよ。お母さんも下で見てるからガンバレ」
レースが始まってから気が付いたが、これは滑る子供も大変だが毎回毎回牽引する親も楽ではない。
これを通称タクシードライバーと言う。
乗り場でサムがカウントをしているのだが、毎回そこを通る度にまだ終わらないのかと聞くボクなのであった。



レースが終わり集計の間、サムがキャンディーの袋を持って子供達を集めた。
子供達はポンチョにソンブレロ姿のサムの後ろをゾロゾロと付いて行く。
ハーメルンの笛吹男みたいだ。
ブロークンリバーの笛吹男は子供達に何か話していたかと思うと、いきなりキャンディーを空中高く放り投げ、あちらこちらにばらまいた。
右往左往する子供達。
パーマーロッジではビール片手に大爆笑の大人達。
「いいぞ!サム」暖かい野次が飛ぶ。
パーマーロッジに子供達が戻ってきた。
年長の男の子が、深雪にちゃんとキャンディーを拾えたか聞いてきた。
大人も子供も限りなく暖かい。



パーマーロッジではミニスモーカーの結果発表である。
速い人から名前を呼ばれて景品を貰う。
深雪の名前はなかなかでてこない。
妻が言った。
「みいちゃんは他の人が賞を貰うのがうれしいんだよね」
他の子が名前を呼ばれ景品を貰うのを、ニコニコと見つめる娘がいた。





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ノーサイド

2009-09-28 | 日記
ラグビーというスポーツがある。
とても乱暴なスポーツだ。
口汚く罵り、相手を蹴散らし引きずり倒し、相手のボールを奪いゴールに叩き込む。
地球上でこれだけ人間が転ぶスポーツはない。
それだけ激しいスポーツなので生傷はたえず、エキサイトするとすぐにケンカになる。
Fワードなどは当たり前の世界だ。

ラグビーの試合終了はノーサイドだ。
数あるスポーツの中でほとんどのスポーツはタイムアップとかゲームセットだが、ラグビーだけはノーサイドなのである。
時間内は「このヤロー、ぶち殺すぞ」ぐらいの事を言いながら、相手を倒すわけだが、一度時間が終われば「まあまあ、良くやったな。一杯やろうぜ」
これがノーサイドだ。
勝ちも負けもない。優れるも劣るもない。
どっちか一つ、というサイドがない。
あるとすれば、両方とも勝ちで両方とも優れている。
これがノーサイドの精神だろう。

これだけ乱暴なスポーツだからこそ、ノーサイドなのだろうか。
試合が終わってから
「オマエ、あの時オレを転ばしただろう」
なんてイチャモンつけられたらたまったもんではない。
とにかく一度終われば、仲良く一杯やるぜ、それがノーサイドだ。
だからこそ試合中は全力で相手をたたきのめすのだ。
競争というものの正しい姿だと思う。

プロは違う。
プロは結果が全てだ。
勝ちも負けもないなどとは言ってられない。
勝たなければダメなのだ。
ノーサイドとは相容れない所がある。

ボクが初めてニュージーランドに来た年に第一回のラグビーワールドカップがあった。
ニュージーランド対フランスの決勝戦をイーデンパークへ見に行った。
今なら考えられないが、当時はそんなチケットが$50ぐらいで買えた。
当時はプロリーグはまだ無く、選手の紹介に職業という欄があり、医者とかエンジニアとか農夫とか書いてあった。
その時のオールブラックスは強かった。
選手が純粋に国の誇りのために戦っていた。

プロリーグができてからボクはラグビーを見なくなった。
何故か興味が失せてしまったのだ。
結果を出さなければならないプロのスポーツは、それはそれでいいと思う。
人間の競争というものはあって当たり前だ。勝てばうれしいし負ければ悔しい。
競争というものがあったからこそ、人類の文明はこれだけ進歩してきた。
だが、今この世の中で、まだ競争は必要か?
競争はスポーツの世界だけでいいだろう。
競争社会ではなく、共存共栄の社会。
勝ちも負けもなく、優れても劣ってもなく、自分も相手もない。
そこには国境さえもない、一つの地球があるのみ。

人類のノーサイドの笛はいつ鳴るのだろう。

コメント (3)
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