定年を待たずに勤めを辞め、小さい憩いの店と、山間僻地での生活必需品の移動販売を始めた人がいる。すでに10年以上のキャリアを持ち、ベテランの域であるが、商いの性質上やたら繁盛するものではなく、店も主の応対ぶりも、商売を始めた頃とほとんど変わらないままである。
短期間のうちに激しい変化がありうる時代にあっては、変わりがないということは極めて大きな安心材料である。「こうと決めている」、あるいは「そうに決まっている」と言った意志が伝わってくると、人々はそこに爽やかさを感じるものである。シノブを揺らす五月の風のように。
爽やかな風に揺れるシノブ
木陰を覗くと、ホウチャクソウが涼しげに咲いている