よく行く《食事処》で昼食を摂っていると、近くのテーブルに品の良い白髪の紳士が座った。柄物のシャツの上に、丈の短い皮のジャンパーをピタッと身にまとい、周りの人々に気配りしなれている様子がうかがえる。
散らし寿司を注文し、一口ひとくちゆっくり召し上がる。目にとまったのは、七十は越えておられるであろうその方が、まだ一人という環境に充分慣れておられないであろうと思われる様子であったからである。外見はりっぱな落ち着きぶりであるが、一寸した動作のたびに、一瞬であるが、誰かに確認を求めておられるような表情が浮かぶのである。おそらく、いつもは家族がその役割を果たしているのであろう。この光景は、たまたま今日だけのことであって欲しいと祈る気持であった。