上善如水

ホークの観察日記

伊坂幸太郎 『バイバイ、ブラックバード』

2013-05-04 01:30:02 | 本と雑誌

 実写映画化が話題の角野栄子さんの『魔女の宅急便』が、版元を変えて角川書店で文庫化されましたね。

角川書店
発売日:2013-04-25













 パラパラっと読みましたが、文庫版特典というか、あとがきも 解説もなくて、ちょっとガッカリしました。
 これだと単行本で買った人は買わないって!
 なぜそれがわからない角川文庫!
 そしてなぜわからないハリポタ文庫化、静山社!!

 同じくこの3月に文庫化された、伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』(双葉文庫)を読みました。













 タイトルが楽曲のタイトルに由来するのは伊坂作品の定番。
 軽妙な文体と飛び出た感性による比喩の数々♪
 
 私はドカベンの不知火も、レオタードを着た美人三姉妹も知ってますよ!

 しかし、主人公が五股をかけてて、その5人に別れを告げに行くって(苦笑)

 いや、確かにそういう話っていえばそういう話なんだけれど、それだけで終わっていないのが伊坂幸太郎!

 とっても面白いお話になっています。


 この作品のそもそもの始まりは、太宰治の未完の小説『グッド・バイ』の続編か完結編を書かないか、という企画だったそうです。

 ちなみに太宰治の『グッド・バイ』は、過去の愛人たちと別れるため、絶世の美人を自分の奥さんに仕立て上げ、「こんなにキレイな奥さんにはかなわないわ」と愛人たちに思わせて手を切るというお話(苦笑)

 しかもこの絶世の美人が、大食いで怪力、声を出せばガラガラ声、部屋もゴチャゴチャという、実はがさつ女、という設定なんです(笑)

 1人目の美容師をやっている愛人に「これが私の妻です」と紹介する男も男ですが(愛人は男が妻帯者だと知っています)、「妻の髪を切ってやって下さい」とお願いする男!(驚)

 しかも腕がいいというその女性に対して、男と二人っきりになった時その「絶世の美人」は、「そんなに、うまくもないじゃない」と言いたい放題。

「バイバイ、ブラックバード」では、この「絶世の美人」がさらに強烈なキャラに変わっています!

  太宰治の『グッド・バイ』は、2人目の愛人の所へ別れを告げに行く途中で終わっていますが、確かに続きが気になる作品。

「バイバイ、ブラックバード」では、主人公と女たちの出会いのシーンも描かれているのですが、これがよくできてる!

 主人公が会いに行く5人の彼女もそれぞれ事情を抱えていて・・・・・・

 笑ったり、泣いたり、しんみりしたり、クスッと笑ったり。

 すべてがすべてスッキリ解決するわけじゃないし、(あれって結局どうなったの?)と思わせる、いわゆる「読者の想像力にまかせる」ところもあって、でもそんな放っぽり方も伊坂作品らしくて、まるで音楽を聴き終わって、その余韻にひたっているような読書感でした。

 あー、面かった♪


「総特集 森茉莉 <増補新版>」

2013-05-03 22:58:12 | 本と雑誌

 マクドナルドのGW限定発売「バーベキューチキン」が美味しくない!!

 とにかく味が濃い!
 しかもソースがうまくない!!

 久々にハズレですね。
 そろそろハンバーガーから卒業かな?(笑)


 このGW(ゴールデンウィーク)に読んだ本。
 文藝別冊『総特集 森茉莉 <増補新版>』(2013年3月30日初版)

増補新版 森茉莉 ---天使の贅沢貧乏 (文藝別冊/KAWADE夢ムック) 増補新版 森茉莉 ---天使の贅沢貧乏 (文藝別冊/KAWADE夢ムック)
価格:¥ 1,260(税込)
発売日:2013-03-25

 これは2003年、生誕100周年を機に刊行された「森茉莉」特集の増補新版です。
 新たに未収録だったエッセイなどが加えられました。
 森茉莉さんと対談しているのは、白石かずこ、丸山明宏(美輪明宏)、矢川澄子、吉行淳之介。
 いいたい放題の対談は、笙野頼子さんと早川暢子さん(笑)
 森茉莉って誰? という新しい読者のために、入りやすい初心者入門ガイドになっています。
 でもこれ、森茉莉ファンでも十分楽しめる♪

 部屋は片付けられないし、そもそも生活能力がないお嬢様なんだけれど(森鷗外の長女)、筆舌は鋭く、すごく身勝手で(笑)、すごく毒もあります☆

 
 ハルキ文庫 『三好達治詩集』(2012年11月18日第一刷)

三好達治詩集 (ハルキ文庫) 三好達治詩集 (ハルキ文庫)
価格:¥ 714(税込)
発売日:2012-11-15



 戦前戦中戦後という時代に活躍した詩人。
 有名なのは・・・

「雪」
 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

       ―「測量船」(1930年)―

 茨木のり子さんのエッセイで、「戦後、精神的な飢餓を満たそうと、多くの人が三好達也の詩集を並んで買った」とあり、前々からとても興味があった本。
 教科書などにも取上げられているそうですが、今まで琴線に触れることがありませんでした(苦笑)
 読んでみて面白かった。