山の頂から

やさしい風

春の夕暮れのミステリー

2009-04-13 23:26:17 | Weblog
 「これって甘いの?」店売りの≪芋飴≫を手にして、
若い女性が突然声をかけた。
皆で忙しく閉店の掃除をしていて、女性に気付かなかった。
「どんな味がするのかなぁ」と言いながら持ったり放したりする。
「焼き芋に似ているかも・・・」と言ったものの立ち働いていた。
ふと気がつくと女性はいなかった。
誰も彼女が立ち去るの見かけなかった。
まさか幽霊でもあるまいと思いつつも、何だかスッキリしなかった。

 まだ取り外されていない祭りの雪洞が薄明るく、
少し離れて見る桜の木々は幻想的だ。
≪桜の精≫かもと夫に言ったら、少し太め過ぎ(失礼!)だって。
しかし、日中の微かな風でハラハラと散る桜は、
確かに華奢で繊細なうら若き乙女の印象ではある。

 ああ~、この春を、この桜を見せたかったと思う人が、
方々においでだったろうと、父を思い出しながら感傷的になった。
苔のついた桜の木肌に触れてみると血が通っているように温かい。
当店のシンボルでもある山桜は、何代もの喜びや悲しみをみてきた。
その大木の下で、あたふたと日々を明け暮らす私達。
先の彼女ではないが、
我々も又、ふっと或る日突然姿を見せなくなる存在かも知れない。



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