「自由の哲学」ノート

その日開いたページ、浮かんだイメージを大切に、読んでいきます。

死者の声を聴く

2015-07-14 18:02:37 | 読むと黄泉
以下引用

フランスの哲学者アランが、「読む」ことをめぐって、次のような興味深い言葉を残している。

「明らかに、私たちの思想は読書によって形づくられる。

そして読書とは、不滅の存在たちの意見を聞くことなのである」

『感情、情念、表徴』古賀昭一訳

……

この一節で「不滅の存在たち」とアランが呼ぶのは、死者である。

アランにおける死者とは、単に生者の記憶にある存在でないことは、先の一節が明らかに語っている。

たとえ生者が忘れるようなことがあっても死者は存在する。

書物を手に取るまで、私たちはその作者を知らないが死者となった作者は「生きている」。

死者は生者とは異なるかたちだが存在している。

この実感は、アランの哲学の根柢を形成している。

アランにとって「読む」とは、それを書いた者、すなわち死者と会い、その声を聴くことだった。


「涙のしずくに洗われて咲きいづるもの」若松英輔著 より

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