韓国、「安倍憎し」日本を戦前のメガネで見続ける滑稽さ
2015-01-16
勝又壽良の経
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
日本嫌いの感情論
嵩じる「安倍憎し」
韓国は、ともかく日本が憎くて、憎くてたまらないらしい。
「戦犯国・日本」と蔑んだ言辞までしており、常軌を逸している。
呆れるばかりだ。
なかでも、安倍首相への敵愾心は尋常ならざるものがある。
慰安婦問題で決して謝罪しない。
その不満がエスカレートしており、「軍国主義」とか「ファシズム国家」などと言いたい放題である。
韓国を代表するメディアがこの調子である。
韓国人の「瞬間湯沸かし」ぶりは、ますます止まるところを知らないのだ。
日本嫌いの感情論
韓国紙『中央日報』(1月6日付け)は、「誤った道を行く安倍の日本」とのコラムを掲載した。
筆者は、同紙のイ・チョルホ論説室長である。
① 「日本が猛々しくなっている。荒々しい昨年5月、日本のTV放送局の報道局長らに会った。
時、日本のテレビは特にセウォル号沈没事故を集中的に放送した。
その後は、韓国政府の空回り、韓国社会がどれほどでたらめかを皮肉る流れだ。
『韓国はやはり我々より一つ下』という番組であるほど視聴率が上がる。
最近の日本メディアが、『ピーナッツ・リターン』事件に口角泡を飛ばすのも同じだ。
『韓国が日本に追いつくにはまだまだだ』という話しぶりである。嫌韓の流れは長く続く雰囲気だ」。
一読して分かることは、日本メディアが韓国の不祥事をおもしろおかしく報道していることへの不満が導火線になっている。
「セウォル号沈没事故」や「ピーナッツ・リターン事件」(注:大韓航空副社長によって航空機滑走を中止させた事件)など、先ず日本では起こりえない事件だけに、格好の話題を提供した。
韓国国内でも大変な騒ぎになっただけに、日本のメディアが取り上げるのは致し方あるまい。日本メディアの報道が問題でなく、韓国側が話題をつくったことが間違いなのだ。
韓国の報道は、きわめて「ナショナリスティック」という特色がある。
昨年3月、東芝の「NAND型」フラッシュメモリーの先端技術が、韓国SKハイニックス社に流出した事件が起こった。
東芝が提訴した際、韓国メディアはなんと報道したか。
『朝鮮日報』(2014年3月14日付け)は、「業績が悪化した日本の半導体メーカーが、訴訟で韓国半導体メーカーの足を引っ張ろうとしている」。
まったく事実を正確に報道せず、感情論で日本を批判したのだ。
その後、両社は和解したが、『朝鮮日報』(2014年12月20日付け)は、前記記事を忘れたような顔をして、次のように報じた。
「SKハイニックスは12月19日、東芝と共同で次世代半導体の製造技術開発に着手すると発表した。
同時に両社は和解を機に、半導体特許のクロスライセンス契約を延長することを決めた。
東芝は(データ流出事件で)SKハイニックスを相手取って起こしていた1兆1億ウォン規模(約1190億円)規模の損害賠償訴訟を取り下げ、
SKハイニックス側は技術協力の見返りとして東芝に2億8700万ドル(約332億円)を支払う」。
事実関係を棚上げして、ただ騒ぎ立てる。
これが、韓国メディアの偽らざる姿だ。
2013年12月、南スーダンに国連軍の一員として派遣されていた陸上自衛隊が、同じ一員の韓国軍に緊急事態で実弾を供与したことがある。
自衛隊がこれを発表すると韓国メディア(朝鮮日報や中央日報)は、社説で激越な日本批判を行った。発表する必要はない、というもの。
日本では当時、「武器輸出三原則」があり実弾提供はこれに抵触する。
ただ、緊急事態であり「善意」で行った「法律違反」である。
即刻、その事実を公表した。ところが、韓国側は実弾が不足していたことが知れ渡って「メンツ」を潰された。
こういう理由から、日本批判を展開したのだ。
韓国メディアでは、冷静・公正な報道がきわめて困難という宿痾を抱えている。
民族性がもたらす「瞬間湯沸かし器」的な業であろう。
② 「最近、日本の反米情緒も目につく。アンジェリーナ・ジョリーの映画『アンブロークン』をめぐり日本の極右が大騒ぎしている。
上映禁止のほかにアンジェリーナの入国拒否まで要求している。
日本の嫌韓と反米には共通分母がある。安倍晋三首相に代表される日本の『改憲保守』がその根本だ。改憲保守は日本の正統保守とDNA自体が違う。
2つも結びつけて『日本の総保守化』と混同するものではない。
自民党は厳密にいうと、左派に対抗して自由党と民主党が物理的に統合した政党だ。
日本の正統保守は主流である自由党側の吉田茂が設計した。平和憲法と日米同盟を骨格とした親米が核心だ。
経済に重点を置きながら隣国とは現状維持を骨格とする」。
米国映画「アンブロークン」が、反日色が強いのでこれの上映に反対する動きがあったという。
筆者のイ・チョルホ論説室長は、だから「日本は反米である」と一刀両断である。
私はこの映画の存在も知らなかった。
言論の自由がある以上、いろんな意見があっても不思議はない。
これをもって、日本は「反米」と斬り捨てる神経が分からないのだ。
ましてや、中央日報の論説室長が言うべき言葉ではない。
私もかつて東洋経済新報社主幹を勤めた経験を持つが、ここまで独断であったことはない。
論説室長の肩書きで執筆しているのだから、個人の立場で物を言ってはならないのだ。
安倍首相の批判を急ぐ余り、自由民主党の結党の基本すら調べないで、「改憲保守」として攻撃している。
自由民主党は、自由党と民主党の合併で結党したもの。
この両党の合併条件に「自主憲法制定」が入っている。
今回の衆院選でも「憲法改正」が公約に上げられていた。
だが、国会で発議するには、衆参両議員において、それぞれ3分の2の賛成が必要である。
そこで初めて、国民投票にかけられるのだ。こうした高いハードルが控えており、最終決定権は国民が握っている。
安倍首相の一人芝居でできる話でない。
今少し冷静になれないのだろうか。みっともないほどの興奮である。
論説室長の肩書きに傷がつくのだ。