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【韓国経済のはまった罠】(前編)

2015年01月21日 20時40分16秒 | Weblog

【韓国経済のはまった罠】(前編)

サムスン・LG vs 日本メーカー、エレクトロニクスの勝者は?

これまで日本のパナソニック・ソニー・シャープvs韓国のサムスン電子・LGエレクトロニクスという構図で語られてきた世界のエレクトロニクス市場の競争は、

2015年以降“日韓全滅”になる可能性がある。

テレビやスマートフォンといったハードウェアの性能を競う競争そのものが無意味になってきたからだ。

テレビやスマホというハードウェアの競争では、サムスンが日本に圧勝した。

 2014年10月、米西海岸・サンノゼ郊外にある家電量販店『ターゲット』のテレビ売り場を覗くと、台湾系米国メーカーのビジオとサムスン電子の液晶テレビが棚を二分していた。

 棚にはソニーもパナソニックも見当たらない。

 日本を代表する民生電機の雄、ソニーとパナソニックはテレビの衰退がそのまま会社の退潮につながっている。

 一方、海外市場で日本の薄型テレビを駆逐した韓国のサムスンとLGは、その勢いを次のデジタル製品の主流になったスマホにつなげた。

しかし、2015年以降はサムスン・LGも失速しそうだ。

 かつての薄型テレビと同じようにスマホも価格下落が止まらないからである。

 スマホの世界出荷台数は2013年の約10億8000万台が2014年には約13億4000万台(矢野経済研究所予測)に拡大するが、

400ドル(約4万円)を超えるハイエンド製品は伸び悩み、市場を牽引するのは199ドル以下のローエンド製品になる。

世界最大のスマホ市場である中国では2014年4月~6月期、

地元ベンチャーの北京小米科技(シャオミ)が販売台数で韓国サムスン電子・米アップルを抜いて首位になった。

世界市場でも華為技術(ファーウェイ)・レノボグループといった中国メーカーが3位・4位につけ、サムスン・アップルを猛追している。

中国では20ドル(約2000円)台という破格なスマホも登場しており、価格下落は留まることを知らない。

その影響をもろに受けているのが、スマホを重点事業と位置付けるソニー。

 スマホ事業の損益悪化で、2015年3月期の最終連結損益予想を従来の赤字500億円から赤字2300億円に大幅下方修正した。

中国・中南米で中国メーカーに押され、販売台数が伸びなかったのだ。

スマホの価格低下で苦しいのは韓国勢も同じ。

サムスンの2014年7月~9月期の連結営業損益は前年同期を約60%下回った。

スマホの次にくるデジタル革命の本命は、あらゆるものがインターネットにつながる『IoT(インターネット・オブ・シングス)』である。

 現在、ネットにつながっているのはパソコンとスマホだが、

 『IoT』ではテレビ・時計・自動車・家電製品・電気・ガス・水道といったインフラ、果てはトイレまで、我々の身の回りにあるあらゆる“もの”がネットにつながる。

 IoTの先頭を走るのはグーグル・アマゾン・アップルといった米IT企業である。

 アマゾン創業者のジェフ・ベゾスは『エブリシング・ストア(インターネットで何でも売る店)』を目指しており、

 グーグルの創業者であるセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジは“世界中の情報を整理する”ことを最終目的にしている。

 利用者がデジタル端末を立ち上げた時に最初に行く場所、すなわち『プラットフォーム』を構築することが、彼らの真の狙いである。

 グーグルはプラットフォームを支えるインフラすら自前で持とうとしている。

 2014年6月には人工衛星会社のスカイボックスを5億ドル(約510億円)で買収した。

 超小型の人工衛星を低軌道に180個打ち上げて地球全体を覆う構想もある。

 2014年1月には家庭用の温度コントローラー(サーモスタット)を開発しているベンチャーの米ネストを買収した。

ネストはネットに接続して顧客の家の室温を最適に保ちつつ消費電力を節約するデバイスを開発し、100万台以上売り上げた実績を持つ。

 このシンプルなデバイスを米国中の家庭に普及させれば、全米の電力消費状況に関する“ビッグデータ”が手に入る。

 そのデータを電力会社に売れば、莫大な収入になると見られている。

アマゾンは2014年7月に、自社開発のスマホ『FirePhone』を発売した。

 アマゾンもまたタブレット端末の『Kindle』や『FirePhone』を通じて顧客のビッグデータをかき集め、次のIoTサービスを繰り出すつもりだ。

 アップルはIoT戦略の一環として、自動車を狙っている。

 開発したカーナビゲーションとiTunesをつなぐ“車載システム”は、すでにフェラーリやBMWが採用を決めている。

 IoTのビジネスは、ウェアラブル端末のような安くて操作が簡単なデバイスをできるだけ多くのユーザーに持たせるところから始まる。

付加価値を生むのはデータであり、ハードの価値はどんどん落ちていく。

 米調査会社のIDCは、2013年に1.9兆ドルだった世界のIoT市場が、今後6年間で5兆ドル以上拡大し、2020年にかけて年平均17.5%の成長率で増え続け、

あらゆる“もの”がネットに接続される世界が到来する。

こうした劇的な変化に、日韓の電機大手はついていけていない。

 パナソニックは“住宅”と“自動車”でIoTをやろうとしているが、ネット関連の技術力が弱すぎていまのままでは存在感を出せそうにない。

高い利益を生むプラットフォームは米国に握られ、体力勝負の端末市場は中国・インド勢に奪われる。

“日韓エレクトロニクス全滅”は十分にあり得るシナリオである。


川端寛(かわばた・ひろし) 経済ジャーナリスト。

日刊紙記者・経済誌記者を経て独立。

電機・コンピューター・インターネット・自動車業界をカバーし、経営・技術・ガバナンス・政策など様々な角度から企業を論じる。

 

 

 



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