「高齢化」と「儒教精神」の間で揺れる韓国社会
2014年04月18日
あわせて日本の「高齢化社会」の現状についても論じ、2009年に他界した女優の大原麗子さんの死についても取り上げ、一世を風靡した女優でさえも、孤独な最期を迎えていたという事実が驚きを持って報道されていた。
こうした問題が大きく取り上げられる背景には、「少子高齢化」と共に「核家族化」も進む韓国では、独居高齢者の増加に伴う孤独死の問題がある。
昨年秋に釜山市内の低所得者向け住宅で、死後5年が経過したと見られる白骨遺体が発見された。遺体は、住宅に住んでいた当時60代の女性であると確認された。
警察女性の子どもに遺体の引取りを要請したが、幼少期に女性と生き別れになった子ども達は引取りを拒否。
女性の遺体は無縁仏として弔われたという。記事は、これだけの年月、女性の安否について近所の住民や自治体が全く無関心だったという点に言及し、核家族化に伴う独居の高齢者への対応が、日本と同様韓国でも今後の課題になるであろうとしている。
イトゥクさんの父親は数年前にイトゥクさんの母と離婚。離婚後は認知症の両親を引き取り、一人で介護を行なっていたものの、事業に行き詰まり、自身もうつ病の症状が出ていたという。
こうした状況から、両親を介護施設に入所させることを決めていたが、入所を数日後に控え、無理心中に及んだと見られている。
残された遺書には、子どもたちへのお詫びの言葉と共に、介護の辛さや、両親を介護施設へ入所させることへの苦渋の決断と後ろめたさなどが記されていたという。
昨年の10月に芸能活動を中断し、兵役に就いていたイトゥクさんは、姉で女優のパク・イニョンと共に葬儀を取り仕切り、悲しみに耐える姿がファンを初め、多くの人の涙を誘った。
人気アイドルを襲ったこの悲劇は現代の韓国が抱える社会問題を如実に表している。
韓国は現在でも、社会や家族に於いて儒教の精神が強い影響力を持っている。
特に「年長者を敬う」、「男性優位」といった考えが高齢者の間ではまだまだ根強く残り、親を福祉サービスの手に委ねることに抵抗感を持つ人も多い。
「親の老後」をめぐって若い世代との価値観のギャップから家庭内で問題が起こるケースが多く見られる。
例えば、公的年金などがなく、自活が難しい高齢者の中には「親が困っていれば子どもが支援をするのは当たり前」という考えを持ち、特に長男が親の経済的支援や介護の責任を強いられるため、夫婦間、兄弟間で摩擦が起こるケースが多い。
70代の親世代と40代以上の子の世代はこうした儒教の影響を受けている最後の世代で、「親が大事」、「長男の責任」という価値観に縛られている。
「高齢化社会」が突きつける問題は、今後の韓国にとって無視できるものではない。社会のみならず、家族間のコミュニケーションを強め、取り組んで行く必要があると言えよう。
【Global Press】http://globalpress.or.jp/
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