勝又壽良の経済時評
週刊東洋経済元編集長の勝又壽良
2015-11-05
②韓国、「通貨スワップ」日本へ要請「ウォン売り投機」に備え
中国の李克強首相とは、11月1日(日本より1日早く)中韓首脳会談を開き、夕食会も盛大に開催して「中韓蜜月」ぶりをアッピールした。
これに比べて、日本への対応は劣悪である。
ここまで酷い仕打ちを受けて、日本が通貨スワップ協定に応じる義務があるだろうか。
韓国は子ども同然な態度である。
しかも、韓国を代表するメディアが、「胸を張って」同調し日本を非難しているのだ。
④「上記のような状況であるにもかかわらず、ホ会長をはじめ全経連が韓国経済界を代表して日本経済界に日韓通貨スワップ再開の検討を提案したのは、
米国の金利引き上げの可能性やアジア地域の金融協力の必要性が大きくなった状況が反映したものと伝えた。
何よりも両国政府の公式説明とは関係なく、
政治的な面で希薄になった両国関係により日韓通貨スワップが終了されたという懸念が拭われないだけに、
日韓通貨スワップ再開は両国関係改善の象徴的な側面としても必要と報じた」。
「日韓通貨スワップ再開は両国関係改善の象徴的な側面」というのは、韓国側の理屈である。
日本は何らの必要性も感じていないのだ。
日本としては、隣国が経済的に苦しい立場になるならば、それを軽くすべく応分の協力をしましょう。
こういう類の話である。
あくまでも「善意」なのだ。
韓国から強制される話しではない。
韓国は、「日韓通貨スワップ協定」復活を心から願うとすれば、それにふさわしい「態度」が前提になる。
訪韓する日本の首相が、いかなる理由でも韓国から「石もて追われる」ような対応を受けてはならない。
これは、外交慣例に著しく反することである。
中国と心中しかねない
『朝鮮日報』(10月27日付)は、次のように報じた。
⑤「中国経済の減速が韓国経済の悪材料になることは避けられない。
中国への輸出は韓国の輸出全体の25%を占めており、対中輸出が10%減っただけでも、輸出全体を2.5%押し下げる。
これに関連し、国策シンクタンクの韓国開発研究院(KDI)は107日、『対外経済環境変化と対応課題』と題するリポートを発表し、
中国の経済成長率が1ポイント低下すれば、韓国の経済成長率が0.21ポイント低下するとの試算を示した」。
このパラグラフで指摘されている事実は、身の毛がよだつほどの「韓国企業危機」を告げている。
普通の大統領ならばこの事実を知り、日本との宥和策を模索して当然であろう。
それがまったくの逆である。
ますます、胸を反らしているのだから救いがないのだ。
「中国の経済成長率が1ポイント低下すれば、韓国の経済成長率が0.21ポイント低下するとの試算」が出てきた。
中国の経済成長率は、「ニセ物」というのが通り相場だ。
ただ、名目成長率は比較的正しいとされる。
よって、これを手がかりに韓国の経済成長率予測を立てるべきだろう。
今年6~9月の名目成長率は前年比6.2%である。
すでに、名目成長率と実質成長率の逆転が起こっている。
中国経済は、この経済成長率の「名実逆転」に象徴されるように、減衰過程に入っているのだ。
朴大統領は何を勘違いしたのか、この中国へ身を寄せたのだ。
「日本憎し」の感情論で目が眩んだに違いない。大失策である。
⑥「特に輸出中心から内需中心への転換を目指す中国の経済構造改革は、
エネルギー、鉄鋼、不動産、建設など、過剰投資が集中した部門で構造調整が進む可能性が高い。
韓国にとっては頭痛の種だ。
KDIによると、中国上場企業のうち、
負債比率が300%以上で、インタレスト・カバレッジ・レシオ(注:営業利益で金利支払いを賄える)の100%未満という潜在的破綻企業が、
2008年の53社から昨年は106社へと倍増。
大半はエネルギー、不動産、鉄鋼、建設に集中した」。
中国経済は目下、構造転換中である。
具体的には、エネルギー、鉄鋼、不動産、建設などの部門での設備調整が行われている。
これら産業では多くが、次に指摘するように「倒産予備軍」となっている。
中国上場企業で、負債比率(注:自己資本に対する負債の比率。
100%以下が正常値)300%以上で、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」が100%に達しない、赤字垂れ流し企業が急増している。
即ち、2008年の53社が、昨年は106社へと倍増したのだ。
これだけ見ても、中国経済が二進も三進もいかない苦境にあるのだ。
この惨状を知らないで、韓国は中国を「花園」と見間違えて身を寄せた。
⑦「LG経済研究院のイ・チョルヨン研究委員は、『エネルギー、不動産、鉄鋼などは、韓国の対中中間財輸出が多い分野だ。
そうした分野での構造調整は韓国の対中輸出を直撃しかねない』と指摘した。
中国発のショックを考慮し、世界の投資銀行や研究機関は来年の韓国の経済成長率予測を引き下げている。
各機関の予測値を集め、毎月発表する『コンセンサス・エコノミクス』の10月の集計によれば、韓国の来年の成長率予測値は平均2.9%で、9月時点よりも0.3ポイント低下した。
企画財政部(省に相当)が3.3%、韓国銀行が3.2%と予測した3%台の成長は来年も困難と判断した格好だ」。
韓国は、中国経済の現状分析において、大きな手抜かりをしていた。
中国で産業構造調整中の分野へ中間財輸出が多かったのだ。
これでは、中国経済の減速がもろに韓国輸出に跳ね返ってくる道理である。
この見え透いた事実が、事前に把握できなかったのは研究不足と言うほかない。
韓国は、日本の潜在的成長力を理解せずに中国へ身を寄せた。
これも、研究不足という同じ延長線で起こっていることである。
韓国経済は、中国経済と「心中」する運命であろうか。
だが、韓国のTPP(環太平洋経済連携協定)へ参加意思の表明は、
「心中」したくないという意思を明らかにしたものだろう。
土壇場に来なければ、事態の真相が掴めない。
そういう韓国の低い「予測能力」は、いったい何が原因なのか。
やはり、「感情過多」民族の辿る宿命と言うべきだ。
理性的に物事を判断しない。まず、「感情」というプリズムを通して「好き」「嫌い」を決めてしまう。
後になって「理性」が動き出す。その時は、すでに遅しなのだ。中国と瓜二つの行動パターンである。
(2015年11月5日)
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