韓国、「主要輸出品」中国の安値攻勢でタジタジ「親中」が仇
スマホが中国製に食われる
先端技術のない悩み抱える
勝又壽良の経済時評
(2014年8月12日付)
韓国の輸出で最大のお得意先は中国である。
その中国と、韓国製品は競争する皮肉な巡り合わせになっている。
中国製品が韓国市場への攻勢を強めているからだ。これまで中国は、安価な生活用品や繊維・衣料、原材料が輸出の中心だった。
最近は、家電や鉄鋼、自動車など、業種を問わず中国製品が韓国市場へ浸透しつつある。
これまで、中韓の技術格差は2年未満とされてきた。遠からず、韓国製品は中国製品に「席」を奪われる運命であった。それが、いよいよ現実となって現れ始めてきたようだ。
韓国は、「反日」の土産を持参して中国へ身を寄せた。
それも束の間、工業製品面で中韓は激越な競争を演じる場面に遭遇したのである。
これでは、何のために中国へ馳せ参じたのか。意味がなくなったのである。
せっかく、中国から経済的な利益を得たい。そう狙っていたというのに、逆の立場へ追い込まれてしまった。
「反日カード」を切り、露骨な形で経済的な実利を求めて中国へ接近した。
このままでは、当初目的の経済的利益を得られるどころか、逆の結果を招きかねない。日本から見ると、韓国は「かちかち山」の狸になりかねないのである。
私は、近著の『韓国経済がけっぷち』(アイバス出版)で、韓国は経済的に行き詰まって必ず「反日」の旗を降ろすと指摘してある。
それが、早くも現実化しつつある。外交は経済という裏付けによって動くものだ。
韓国が中国へ馳せ参じているメリットは消えつつある。むしろ、日本との関係修復が真剣に求められてきた。
韓国の全国経済人連合会(全経連)は、日本経済団体連合会(経団連)と今年12月、ソウルで「韓日財界会議」を開催すると発表した(『朝鮮日報』8月4日付け)。
最後に頼れる先は、日本しかないのが現実だ。それを再認識してきた現れであろう。
オーストラリアのように、対中国は最大の輸出市場でも、価値観をともにする日本との関係を強化している例もある。
韓国とオーストラリアでは、同じ民主主義国でもこれだけ対応が違うのだ。改めて、韓国の「計算高さ」が、とんだ引き出し違いをもたらした。
「日本憎し」の感情論が外交政策の失敗を招いたのである。「瞬間湯沸かし」的な国民性が招いた結果である。
スマホが中国製に食われる
韓国紙『朝鮮日報』(8月1日付け)は、次のように伝えた。
① 「韓国の5大主力輸出産業の業績がウォン高と中国製品の供給過剰で急激に悪化している。サムスン電子のスマートフォン(多機能携帯電話)販売台数も初めて減少に転じた。
これまで3~4年間にわたり韓国のIT産業をけん引してきたサムスン電子のスマートフォン事業をめぐっては、『最盛期を過ぎた』との分析も聞かれる。
サムスン電子のスマートフォン不振について、専門家は2つの要因を指摘する。第一に中国メーカーの台頭だ。サムスン電子はこれまで優れた製造技術で市場を支配してきたが、高級モデルの市場は低迷期に入った。
対照的に低価格モデル市場では小米、レノボ(聯想)、華為(ファーウェイ)、ZTE(中興通訊)などが急速に韓国企業を追い上げている」。
中韓の技術格差が接近している背景は、「雁行型経済発展論」という考えで説明がつく。
「雁行」とは、雁が群れを作って飛ぶように、先頭に倣って後尾がついて行く姿からヒントを得た日本人による経済理論だ。
即ち、一国の経済を見ると、低付加価値の消費財はまず輸入され、次に輸入されたものと同じもの(輸入代替品)が生産されるようになり、最終的に輸出されるという産業発展のプロセスを経て行く。
独創的な製品も普及するとともに、価格が低下して汎用品となる。この過程では、技術も周辺国に伝播するので労働力の比較的安い地域が競争力のある製品づくりに成功する。
例えば、サムスンのスマホである。スマホが、汎用化されるとともに中国製のスマホにシェアを食われる。これは、「雁行型経済発展論」から見て当然に起こることであった。
サムスンが、それを事前に読めなかったとすれば、それは販売戦略の失敗であると言わなければならない。
日本得意の電化製品が、韓国製や中国製にシェアを奪われた背景も、「雁行型経済発展論」ですべて説明ができるのだ。
日本の家電メーカーのシェア低下が、決して日本の没落の象徴ではなく、いずれは訪れることであった。
現在、日本の家電は自動車部品などに業態転換している。今年4~6月期は、リーマンショック直前に近い利益を出すまでに回復している。
② 「小米は、『中国のアップル』と称される中国市場で上半期のシェアが21%となり、サムスン(23%)を猛追している。
コンサルティング業者、オリバー・ワイマンのシン・ウソク理事は、『スマートフォン生産技術が汎用化され、中国メーカーも一定水準の製品を生産しており、価格競争力でも韓国をはるかに上回っている』と指摘した。
第二に革新の停滞だ。市場調査会社IDCは、サムスン電子の戦略モデル『ギャラクシーS5』の販売が第2四半期に振るわない背景として、前作の『ギャラクシーS4』『ギャラクシーS3』との競争を挙げた。言い換えれば、ギャラクシーS5には革新的な変化がなかったと言える』。
今年上半期、中国市場でのスマホは「小米」のシェアが21%になった。サムスンは23%であり、下半期に逆転されることは不可避の情勢である。
まさに、「雁行型経済発展論」の典型例がスマホ市場にも見て取れるのだ。
米市場調査会社IDCによると、韓国の主力輸出品であるスマートフォン(多機能携帯電話)の世界シェアが急落し、第2四半期(4~6月)のサムスンの世界シェアは25.2%となり、前年同期に比べ7.1ポイント低下した。
販売台数は300万台減の7430万台だった(『朝鮮日報』7月31日付け)。
サムスンのスマホ販売台数が前年を下回ったのは初めてだ。四半期ベースのシェアが25%台に低下したのも2011年第4四半期以来である。今年第2四半期に世界のスマートフォン市場規模が前年同期比で23%拡大したのと比較すると、サムスンの不振は深刻だ。
サムスンの戦略モデル『ギャラクシーS5』の販売が、第2四半期に振るわない背景として、前作の『ギャラクシーS4』『ギャラクシーS3』と比べて新味がないことがブレーキになっている。サムスンの技術蓄積の浅さを露呈した。
③ 「自動車、造船、重工業、鉄鋼、石油化学などはウォン高、中国製品による供給過剰の直撃を受けている。
特に石油化学、鉄鋼は中国製品の供給過剰状態からなかなか抜け出せない構造的な脆弱さをはらんでいる。
ライバル企業を圧倒するだけの中核技術がないため、巨大な資本力と市場を武器に増産競争を繰り広げる中国企業に追い付かれかねない状況だ。
大規模な設備投資を伴う装置産業主体の韓国企業は質的転換が求められている。
装置産業は2008年以降、構造的な供給過剰に苦しんでいる上、資本力さえあれば後発業者による追い上げも容易だ。
大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の呉永鎬(オ・ヨンホ)社長は、『対中輸出も部品、資本財中心ではなく、健康食品、美容など消費財、サービス産業中心へと転換が必要だ』と述べた」。
自動車、造船、重工業、鉄鋼、石油化学など、韓国の主要産業が中国のライバル製品にしてやられるケースが増えている。
中国は、過剰投資=過剰生産=過剰輸出をテコにして韓国市場になだれ込んでいる。
ウォン高が韓国への市場参入を助けているのだ。とりわけ、「ライバル企業を圧倒するだけの中核技術がないため、巨大な資本力と市場を武器に増産競争を繰り広げる中国企業に追い付かれかねない状況」としている。
ここでは、韓国企業が「中核技術」を持たない悩みを指摘している。
日本企業が、「超円高」にもかかわらず持ちこたえられたのは、核心的な技術を保有、ないしは開発し続けてきた結果である。
その点で、韓国企業は日本技術の「二番煎じ」程度であるから、簡単に中国企業に追いつかれかねない。
改めて、技術開発力の重要性を認識させられるのだ。韓国企業が、日本技術の「パクリ」で済まさず、さらに一段と深みをつけていたならば、簡単に中国企業に追いつかれることもなかったであろう。とんだ、手抜かりであった。
先端技術のない悩み抱える
自動車分野をみると、これまで韓国製が独占してきた中型バス市場で、中国製が大々的な宣伝もなく静かに販売台数を伸ばしている。
「2005年設立の上海申龍客車の中型バスは、昨年上半期から韓国市場で市販され、今年に入り攻略を本格化している。
上半期に約200台を販売したのに続き、下半期は400台、来年は1500台に増やす計画とされる。
業界は今後の動きを注視する必要があると話す。乗用車の場合、中国メーカーは環境規制に阻まれ韓国に進出できないでいるが、バスは裾野を広げる可能性があるという」(『朝鮮日報』7月31日付け)。
自動車と言えば、トヨタはハイブリッドが全車種の半分に達した。
この勢いをベースにして、「水素自動車」(燃料電池車)は年内発売を予定しており、世界の先鞭を切る。
最終的な「無公害車」と言われるものだ。排気ガスゼロで水だけである。
日本が、この分野で世界技術の標準を目指している。韓国企業には、こういった技術の世界標準が存在しないのだ。
韓国が、「ニセ物づくり」の中国に資本力にものを言わせたコスト競争で、追いつかれたことはきわめて深刻な事態である。
選りに選って韓国は、その中国と親密な外交関係を結んでいる。このまま推移すれば、中国に資本面で吸収される恐れすら出てくる。とんだ、計算違いをしたものと呆れるのだ。
韓国にとって、これまでは「ウォン安」の恩恵を受けてきた。
「超円高」で日本企業が苦闘している裏で、極秘に外国為替市場で「ウォン売り」を続けてきた。IMFから厳しい「お灸」を据えられたのだ。
『朝鮮日報』(7月31日付け)は、次のように伝えた。
④ 「国際通貨基金(IMF)は7月29日、対外分野評価報告書(ESR)で各国の通貨・金融政策を評価し、韓国について、『為替レートは市場によって決定されるべきだ』とし、為替市場への介入を最小限にとどめるべきだと認識を示した。
IMFは、『政府の介入はどの方向であれ、行き過ぎた変動を緩和するラインにとどめるべきだ。
マクロ健全性措置も金融の安定性に対する懸念を解消することを目標とすべきだ』と指摘した。IMFは韓国の経常収支黒字の対国内総生産(GDP)比が輸出増加と輸入減少により、2012年の4.3%から昨年は6.1%まで上昇した点にも言及した。IMFは2%を推奨水準としている」。
韓国は、中国製品が韓国市場で競争力を持ち始めた背景に、ウォン高の進行を上げている。
IMFは、為替レートが市場で決まるべきものとの原則論を述べた。
その通りである。従来、ウォンが「弱小国通貨」という存在に甘えて、しばしば「ウォン安」を誘導してきた。
それを批判されたのだ。経常収支黒字の対国内総生産(GDP)比が、標準型の2%から大きく逸脱しており、昨年は6.1%にも達した。
これでは、ウォン高は不可避である。韓国では、1ドル=1000ウォン突破が危機ラインとする騒ぎ方である。輸出偏重の経済が、結果的に韓国経済を底の浅いものにした。
この輸出依存経済が外交面でも偏りを見せている。
「反日」「親中」がそれだ。韓国経済は、このまま中国との関係を深めても、資本的に吸収されるリスクを持つだけである。
そうしたリスクよりも、日本との関係を再構築して日韓経済関係の立て直しを図る。
その方が、はるかに賢明である。その延長線上で、日米韓三カ国の安保体制確立を再確認すべきなのだ。
韓国の「反日」「親中」は、外交的・経済的にも失敗である。