■週報:世界の防衛,最新11論点
今回は空軍関連の話題ですが、後継機が決定し退役時期が明確となりましたF-22戦闘機について更なる近代化計画が発表されました。
アメリカ空軍は11月6日、F-22戦闘機近代化へ108億6300万ドルの契約をロッキードマーティン社との間で締結しました。これはラプターARES計画という、第五世代戦闘機であるF-22戦闘機プログラムにおける要諦で、戦闘機用ハードウェアやソフトウェアの段階近代化改修、運用基盤維持と定期整備に関わるもので2030年代以降の運用も視野に含む。
F-22ラプターは最強戦闘機や航空支配戦闘機という名称で従来の制空戦闘機よりも高度な能力を持つ戦闘機に位置付けられていますが、アメリカ空軍では2021年の将来計画においてF-22戦闘機を2035年までに順次退役させる計画が発表され、一見して過去の戦闘機という印象がつけられた後の、108億ドル、F-35二個航空団分を投じた計画となっています。
ロッキードマーティン社との108億6300万ドルの契約は現在運用されるF-22戦闘機全てに適用されるもので、機体改修は2031年10月31日までに完了するとのこと。空軍ではF-22戦闘機後継となるNGAD戦闘機計画が進められていますが、この機体の概要は勿論青写真も画定していない中では、当面アメリカ空軍がF-22に寄せる期待の大きさが分ります。
■KC-46空中給油機
KC-46空中給油機は航空自衛隊も導入し美保基地での試験が開始されKC-767を補完する最新鋭機です。
アメリカ空軍は10月13日、最新のKC-46空中給油機について空軍の全機種への空中給油能力を実証したと発表しました。これによりICR暫定能力認証が付与されることとなります。空軍ではF-16やF-22など各種航空機との適合試験を進めていますが、新しく選定され配備が開始されたF-15EXへの空中給油試験が完了し、ICR暫定能力認証となった。
KC-46空中給油機は老朽化が著しいKC-135空中給油機の後継として開発され、ボーイング767-20ERを原型としており、空中給油用燃料94.198tを搭載可能であり人員114名や486L型パレット貨物18基を輸送する輸送機としても運用可能となっています。またKC-46Aとして航空自衛隊へも採用されており、先ごろ初号機が美保基地へ到着しています。
■太平洋空軍へF-35
航空自衛隊では運用が開始されていますが意外な事にアメリカ太平洋空軍に先んじていたのですね。
アメリカ空軍は太平洋空軍へのF-35戦闘機配備の最終準備段階に入りました。太平洋地域では日本において航空自衛隊がF-35戦闘機運用を本格化させており、アメリカ海兵隊は岩国基地にてF-35B戦闘機の運用を開始していますが、アメリカ空軍はハワイのヒッカムにも日本の三沢にも嘉手納にも韓国のオサンにもF-35戦闘機の配備を開始していません。
第356戦闘飛行隊が太平洋におけるアメリカ空軍初のF-35運用部隊となる計画で、第356戦闘飛行隊は10月8日から10月23日に掛け、アメリカ本土のティンダル空軍基地においてサイドワインダーミサイルや各種電子装備の評価試験を実施しました。計画ではティンダル基地にて引き続き11月8日から19日にかけチェッカーフラッグ演習を実施予定です。
■カナダ軍CF-18戦闘機改造
スーパーホーネットに決定して予算面で折り合わず撤回したカナダ統合軍の戦闘機は迷走しています。
カナダ統合軍はCF-18戦闘機にAPG-79-AESAレーダー換装改修を実施しました。これはレイセオンテクノロジーズ系列のレイセオンインテリジェンス&スペース社との契約に基づき実施され、旧式化が進むCF-18戦闘機の延命が目的です。レガシーホーネットに区分されるCF-18はF/A-18E戦闘攻撃機への更新が棚上げの後中止となり、今日に至ります。
APG-79-AESAレーダーはスーパーホーネットとして知られるF/A-18E戦闘攻撃機用のレーダーで、性能向上とともに整備間隔が強化されています。ただ、F/A-18E戦闘攻撃機よりもCF-18はレーダー収容区画が狭く、APG-79-AESAを小型化したAPG-79-AESA-V4が開発され、原型のAPG-79-AESAとは小型でも90%に渡り部品が共通しているとのこと。
CF-18戦闘機APG-79-AESAレーダー換装改修は1億4030万ドルで契約され、カリフォルニア州エルセグンドとテキサス州ダラスおよびミシシッピ州フォレストにて改修作業が実施されます。カナダ空軍の次期戦闘機計画は、F/A-18E中止に続いてオーストラリアより中古のF/A-18C導入を検討しましたが機体老朽により断念、今だ画定していません。
■ミサイル発射情報三週間後訂正
ミサイル防衛はかなりの予算を投入していますが北朝鮮のミサイルも進化が続いており難しい課題だ。
防衛省は10月の北朝鮮ミサイル発射情報を三週間後に訂正し防衛大臣が陳謝しました。これは、10月19日に北朝鮮が発射した飛翔体について、当初防衛省は2発の弾道ミサイルが発射されたと発表したものの、北朝鮮近傍においてミサイルを監視する韓国国防省は発射されたミサイルが一発であると発表、日本海の対岸の監視能力に限界が生じています。
防衛省は、遠距離でのミサイル発射について、ミサイルの進路上に宇宙空間の別の物体が存在し、レーダー画面上で二つ重なった事で一発の弾道ミサイルが複数と検知されたと判断、11月10日に情報を2発から1発へと訂正しました。この語法について、岸防衛大臣は陳謝し、改めて北朝鮮のミサイル実験に対する監視体制を強化する考えを示しています。
■HTV-2ファルコン遅延
第二のスプートニクショックと呼ばれた中国の先行に対して、HTV-2ファルコン極超音速ミサイルはこの分野で遅れているアメリカの決定打となるのか。
アメリカ空軍のフランクケンドール空軍長官は極超音速ミサイル計画の遅滞を認めました、これは9月21日の空軍協会シンポジウムにおいて発言したもので、この分野で先行する中国やロシアに対してアメリカの技術的な遅れを率直に認めた構図です。アメリカはクリントン政権時代に進めていたファストホーク巡航ミサイルの開発を中止し今に至ります。
HTV-2ファルコン極超音速ミサイルの開発がすすめられていますが、アメリカ空軍ではどの目標に対してこの種のミサイルを運用するのか、またどういった航空機から運用するのか、という視点も不明確で、極超音速ミサイルの空軍装備体系における位置づけさえ不明確である事が開発計画全体への関係者の熱意へも影響していると、不快感を示しています。
ファストホーク巡航ミサイルはクリントン政権時代の1999年に開発が終了し実用化されていませんが、トマホークミサイルの後継として水上戦闘艦や潜水艦などから発射可能、ラムジェットエンジンを採用し飛行速度はマッハ4と極超音速ミサイルに近い性能を有し、スラストベクター制御による高い機動性を持ち射程は1300km以上が要求されていました。
■ロイヤルウイングマン2号機
ロイヤルウィングマンという選択肢は限られた第五世代戦闘機の有効利用に繋がるのか、際物無人機に収まるのかが関心事だ。
オーストラリアのボーイングロイヤルウィングマンプログラム社はロイヤルウイングマン無人機2号機の飛行を成功させました。ロイヤルウイングマン無人機初号機は2021年2月27日に初飛行に成功しており、2021年内に2号機の完成と初飛行はロイヤルウイングマンプロジェクトの重要なマイルストーン、今後の実用開発を大きく進める事となります。
ロイヤルウイングマン無人機は無人僚機として、F-35のような高価な戦闘機と協同する用途が見込まれていまして、第五世代戦闘機の掩護や囮とデータリンク中継等を担い限られた戦闘機数を最大限活用する用途が見込まれています。ただ、有人戦闘機にどの程度随伴できるかについては技術的な開発余地も大きく、今後の進展を見守る必要があるでしょう。
■ハリケーンハンターWC-130J
日本は此処暫く幸いな事に巨大台風被害を免れていますが、先日フィリピンに甚大な被害を及ぼした台風被害を見ますとハリケーンハンターは必要な選択肢と思う。
アメリカ空軍のハリケーンハンターWC-130JはSATCOMデータリンクシステムを試験中です。アメリカ本土を狙う巨大ハリケーンは衛星画像や地上観測だけでは概要しか判別できず正確な予報にはハリケーンに触れるほかありません、ハリケーンに触れるには唯一の方法がハリケーンの暴風圏内を超えてハリケーンの目に直接航空機で乗り込むほかない。
空軍予備第53気象偵察飛行隊はドロップゾンデやマイクロ波レーザー計測装置を機上気象観測装置と併せてハリケーン内部を観測しますがリアルタイムで伝送する手段が在りません。SATCOMはXバンド方式衛星通信アンテナと連接し、フロリダの国立ハリケーンセンターやハワイの太平洋ハリケーンセンターへリアルタイムで情報を伝送可能となるのです。
■スロバキア空軍T-50練習機検討
T-50練習機の躍進は隣国の事ながらなかなか羨ましいものがあります一方、武器輸出をしない国民の総意もありますので致し方ない。
スロバキア空軍が運用するL-39高等練習機へ韓国がT-50練習機を提示しました。L-39練習機は冷戦時代の1971年にチェコスロバキアで開発されたジェット練習機でソ連空軍にも採用された事から2852機という多数が量産されています。その特色は超音速練習機であり軽戦闘機や攻撃機にも転用可能な多用途性能ですが、近年老朽化の度合が進んでいます。
L-39高等練習機の後継の需要は当面10機程度である為、国産開発が現実的選択肢ではありません。この点についてスロバキア政府はRFP情報提案書を発行しており、これを受ける形でKAI韓国航空宇宙産業はT-50練習機輸出に関するスロバキアのLOTN社との間で覚書を締結したとのことです。T-50には軽戦闘機型のF/A-50も開発され輸出実績もあります。
■イラク空軍T-50練習機検討
T-50練習機の躍進はイラクにも及ぶ模様で戦闘機の派生型もあるT-50練習機はF-16A戦闘機の立ち位置を占めるかたち。
イラク空軍はT-50練習機整備に関わる3億6000万ドルの契約をKAI韓国航空宇宙産業と締結しました。今回の契約は3年間の整備及び維持と共に操縦要員の教育支援などが含まれています。イラク空軍は2013年に韓国よりT-50練習機24機を取得しています。イラク空軍で運用される機体はT-50IQとされ、イラク戦争後の空軍再編の主軸となりました。
T-50は高等練習機の中でも超音速飛行が可能である戦闘機であり、KAI韓国航空宇宙産業では20年間の継続運用が可能であるとして、T-50の運用を継続すると共にT-50の拡大改良型であるFA-50軽戦闘機についてもイラク輸出へ売り込みを続けています。イラク空軍にはアメリカ製F-16戦闘機26機、ロシア製Su-25攻撃機21機等が配備されています。
■KAI電気駆動式初等練習機
T-50練習機だけが韓国の練習機ではない、日本もそろそろ防衛装備品輸出という分野についても真剣に遠投する段階ではないのか。
韓国のKAI韓国航空宇宙産業は電気駆動式初等練習機の開発開始を発表しました。これはADEX2021国際装備展にて概念図をは票したもの、単発初等練習機の後継とするプロペラ式練習機で、プロペラ4基を主翼に配置しています、一見して四発機とみえますがモーターに直結し水素燃料とバッテリーによるハイブリッド方式による飛行を想定しています。
電気駆動式初等練習機は早ければ2029年までに初飛行を目指すとしており、KT-1初等練習機の後継などを期待しているとのことです。航空機動力の電動化は、軍事的な利点は化石燃料に依存しないという利点です。多分に先進的ですが、KAIによればコックピットはグラスコックピットのほか、アナログ式コックピットも選ぶことが可能としていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は空軍関連の話題ですが、後継機が決定し退役時期が明確となりましたF-22戦闘機について更なる近代化計画が発表されました。
アメリカ空軍は11月6日、F-22戦闘機近代化へ108億6300万ドルの契約をロッキードマーティン社との間で締結しました。これはラプターARES計画という、第五世代戦闘機であるF-22戦闘機プログラムにおける要諦で、戦闘機用ハードウェアやソフトウェアの段階近代化改修、運用基盤維持と定期整備に関わるもので2030年代以降の運用も視野に含む。
F-22ラプターは最強戦闘機や航空支配戦闘機という名称で従来の制空戦闘機よりも高度な能力を持つ戦闘機に位置付けられていますが、アメリカ空軍では2021年の将来計画においてF-22戦闘機を2035年までに順次退役させる計画が発表され、一見して過去の戦闘機という印象がつけられた後の、108億ドル、F-35二個航空団分を投じた計画となっています。
ロッキードマーティン社との108億6300万ドルの契約は現在運用されるF-22戦闘機全てに適用されるもので、機体改修は2031年10月31日までに完了するとのこと。空軍ではF-22戦闘機後継となるNGAD戦闘機計画が進められていますが、この機体の概要は勿論青写真も画定していない中では、当面アメリカ空軍がF-22に寄せる期待の大きさが分ります。
■KC-46空中給油機
KC-46空中給油機は航空自衛隊も導入し美保基地での試験が開始されKC-767を補完する最新鋭機です。
アメリカ空軍は10月13日、最新のKC-46空中給油機について空軍の全機種への空中給油能力を実証したと発表しました。これによりICR暫定能力認証が付与されることとなります。空軍ではF-16やF-22など各種航空機との適合試験を進めていますが、新しく選定され配備が開始されたF-15EXへの空中給油試験が完了し、ICR暫定能力認証となった。
KC-46空中給油機は老朽化が著しいKC-135空中給油機の後継として開発され、ボーイング767-20ERを原型としており、空中給油用燃料94.198tを搭載可能であり人員114名や486L型パレット貨物18基を輸送する輸送機としても運用可能となっています。またKC-46Aとして航空自衛隊へも採用されており、先ごろ初号機が美保基地へ到着しています。
■太平洋空軍へF-35
航空自衛隊では運用が開始されていますが意外な事にアメリカ太平洋空軍に先んじていたのですね。
アメリカ空軍は太平洋空軍へのF-35戦闘機配備の最終準備段階に入りました。太平洋地域では日本において航空自衛隊がF-35戦闘機運用を本格化させており、アメリカ海兵隊は岩国基地にてF-35B戦闘機の運用を開始していますが、アメリカ空軍はハワイのヒッカムにも日本の三沢にも嘉手納にも韓国のオサンにもF-35戦闘機の配備を開始していません。
第356戦闘飛行隊が太平洋におけるアメリカ空軍初のF-35運用部隊となる計画で、第356戦闘飛行隊は10月8日から10月23日に掛け、アメリカ本土のティンダル空軍基地においてサイドワインダーミサイルや各種電子装備の評価試験を実施しました。計画ではティンダル基地にて引き続き11月8日から19日にかけチェッカーフラッグ演習を実施予定です。
■カナダ軍CF-18戦闘機改造
スーパーホーネットに決定して予算面で折り合わず撤回したカナダ統合軍の戦闘機は迷走しています。
カナダ統合軍はCF-18戦闘機にAPG-79-AESAレーダー換装改修を実施しました。これはレイセオンテクノロジーズ系列のレイセオンインテリジェンス&スペース社との契約に基づき実施され、旧式化が進むCF-18戦闘機の延命が目的です。レガシーホーネットに区分されるCF-18はF/A-18E戦闘攻撃機への更新が棚上げの後中止となり、今日に至ります。
APG-79-AESAレーダーはスーパーホーネットとして知られるF/A-18E戦闘攻撃機用のレーダーで、性能向上とともに整備間隔が強化されています。ただ、F/A-18E戦闘攻撃機よりもCF-18はレーダー収容区画が狭く、APG-79-AESAを小型化したAPG-79-AESA-V4が開発され、原型のAPG-79-AESAとは小型でも90%に渡り部品が共通しているとのこと。
CF-18戦闘機APG-79-AESAレーダー換装改修は1億4030万ドルで契約され、カリフォルニア州エルセグンドとテキサス州ダラスおよびミシシッピ州フォレストにて改修作業が実施されます。カナダ空軍の次期戦闘機計画は、F/A-18E中止に続いてオーストラリアより中古のF/A-18C導入を検討しましたが機体老朽により断念、今だ画定していません。
■ミサイル発射情報三週間後訂正
ミサイル防衛はかなりの予算を投入していますが北朝鮮のミサイルも進化が続いており難しい課題だ。
防衛省は10月の北朝鮮ミサイル発射情報を三週間後に訂正し防衛大臣が陳謝しました。これは、10月19日に北朝鮮が発射した飛翔体について、当初防衛省は2発の弾道ミサイルが発射されたと発表したものの、北朝鮮近傍においてミサイルを監視する韓国国防省は発射されたミサイルが一発であると発表、日本海の対岸の監視能力に限界が生じています。
防衛省は、遠距離でのミサイル発射について、ミサイルの進路上に宇宙空間の別の物体が存在し、レーダー画面上で二つ重なった事で一発の弾道ミサイルが複数と検知されたと判断、11月10日に情報を2発から1発へと訂正しました。この語法について、岸防衛大臣は陳謝し、改めて北朝鮮のミサイル実験に対する監視体制を強化する考えを示しています。
■HTV-2ファルコン遅延
第二のスプートニクショックと呼ばれた中国の先行に対して、HTV-2ファルコン極超音速ミサイルはこの分野で遅れているアメリカの決定打となるのか。
アメリカ空軍のフランクケンドール空軍長官は極超音速ミサイル計画の遅滞を認めました、これは9月21日の空軍協会シンポジウムにおいて発言したもので、この分野で先行する中国やロシアに対してアメリカの技術的な遅れを率直に認めた構図です。アメリカはクリントン政権時代に進めていたファストホーク巡航ミサイルの開発を中止し今に至ります。
HTV-2ファルコン極超音速ミサイルの開発がすすめられていますが、アメリカ空軍ではどの目標に対してこの種のミサイルを運用するのか、またどういった航空機から運用するのか、という視点も不明確で、極超音速ミサイルの空軍装備体系における位置づけさえ不明確である事が開発計画全体への関係者の熱意へも影響していると、不快感を示しています。
ファストホーク巡航ミサイルはクリントン政権時代の1999年に開発が終了し実用化されていませんが、トマホークミサイルの後継として水上戦闘艦や潜水艦などから発射可能、ラムジェットエンジンを採用し飛行速度はマッハ4と極超音速ミサイルに近い性能を有し、スラストベクター制御による高い機動性を持ち射程は1300km以上が要求されていました。
■ロイヤルウイングマン2号機
ロイヤルウィングマンという選択肢は限られた第五世代戦闘機の有効利用に繋がるのか、際物無人機に収まるのかが関心事だ。
オーストラリアのボーイングロイヤルウィングマンプログラム社はロイヤルウイングマン無人機2号機の飛行を成功させました。ロイヤルウイングマン無人機初号機は2021年2月27日に初飛行に成功しており、2021年内に2号機の完成と初飛行はロイヤルウイングマンプロジェクトの重要なマイルストーン、今後の実用開発を大きく進める事となります。
ロイヤルウイングマン無人機は無人僚機として、F-35のような高価な戦闘機と協同する用途が見込まれていまして、第五世代戦闘機の掩護や囮とデータリンク中継等を担い限られた戦闘機数を最大限活用する用途が見込まれています。ただ、有人戦闘機にどの程度随伴できるかについては技術的な開発余地も大きく、今後の進展を見守る必要があるでしょう。
■ハリケーンハンターWC-130J
日本は此処暫く幸いな事に巨大台風被害を免れていますが、先日フィリピンに甚大な被害を及ぼした台風被害を見ますとハリケーンハンターは必要な選択肢と思う。
アメリカ空軍のハリケーンハンターWC-130JはSATCOMデータリンクシステムを試験中です。アメリカ本土を狙う巨大ハリケーンは衛星画像や地上観測だけでは概要しか判別できず正確な予報にはハリケーンに触れるほかありません、ハリケーンに触れるには唯一の方法がハリケーンの暴風圏内を超えてハリケーンの目に直接航空機で乗り込むほかない。
空軍予備第53気象偵察飛行隊はドロップゾンデやマイクロ波レーザー計測装置を機上気象観測装置と併せてハリケーン内部を観測しますがリアルタイムで伝送する手段が在りません。SATCOMはXバンド方式衛星通信アンテナと連接し、フロリダの国立ハリケーンセンターやハワイの太平洋ハリケーンセンターへリアルタイムで情報を伝送可能となるのです。
■スロバキア空軍T-50練習機検討
T-50練習機の躍進は隣国の事ながらなかなか羨ましいものがあります一方、武器輸出をしない国民の総意もありますので致し方ない。
スロバキア空軍が運用するL-39高等練習機へ韓国がT-50練習機を提示しました。L-39練習機は冷戦時代の1971年にチェコスロバキアで開発されたジェット練習機でソ連空軍にも採用された事から2852機という多数が量産されています。その特色は超音速練習機であり軽戦闘機や攻撃機にも転用可能な多用途性能ですが、近年老朽化の度合が進んでいます。
L-39高等練習機の後継の需要は当面10機程度である為、国産開発が現実的選択肢ではありません。この点についてスロバキア政府はRFP情報提案書を発行しており、これを受ける形でKAI韓国航空宇宙産業はT-50練習機輸出に関するスロバキアのLOTN社との間で覚書を締結したとのことです。T-50には軽戦闘機型のF/A-50も開発され輸出実績もあります。
■イラク空軍T-50練習機検討
T-50練習機の躍進はイラクにも及ぶ模様で戦闘機の派生型もあるT-50練習機はF-16A戦闘機の立ち位置を占めるかたち。
イラク空軍はT-50練習機整備に関わる3億6000万ドルの契約をKAI韓国航空宇宙産業と締結しました。今回の契約は3年間の整備及び維持と共に操縦要員の教育支援などが含まれています。イラク空軍は2013年に韓国よりT-50練習機24機を取得しています。イラク空軍で運用される機体はT-50IQとされ、イラク戦争後の空軍再編の主軸となりました。
T-50は高等練習機の中でも超音速飛行が可能である戦闘機であり、KAI韓国航空宇宙産業では20年間の継続運用が可能であるとして、T-50の運用を継続すると共にT-50の拡大改良型であるFA-50軽戦闘機についてもイラク輸出へ売り込みを続けています。イラク空軍にはアメリカ製F-16戦闘機26機、ロシア製Su-25攻撃機21機等が配備されています。
■KAI電気駆動式初等練習機
T-50練習機だけが韓国の練習機ではない、日本もそろそろ防衛装備品輸出という分野についても真剣に遠投する段階ではないのか。
韓国のKAI韓国航空宇宙産業は電気駆動式初等練習機の開発開始を発表しました。これはADEX2021国際装備展にて概念図をは票したもの、単発初等練習機の後継とするプロペラ式練習機で、プロペラ4基を主翼に配置しています、一見して四発機とみえますがモーターに直結し水素燃料とバッテリーによるハイブリッド方式による飛行を想定しています。
電気駆動式初等練習機は早ければ2029年までに初飛行を目指すとしており、KT-1初等練習機の後継などを期待しているとのことです。航空機動力の電動化は、軍事的な利点は化石燃料に依存しないという利点です。多分に先進的ですが、KAIによればコックピットはグラスコックピットのほか、アナログ式コックピットも選ぶことが可能としていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)