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トンガ大規模噴火,VEI火山爆発指数ではピナトゥボ1991年噴火を下回り"火山の冬"は回避か

2022-01-19 20:22:23 | 防災・災害派遣
■フンガトンガフンガハアパイ山
 巨大噴火に見舞われたトンガについてニュージーランド空軍のP-3哨戒機が無事を確認しオーストラリアは救援へキャンベラ級強襲揚陸艦派遣を大車輪で準備中です。

 ピナトゥボ火山を下回る、火山爆発指数では1991年に噴火したフィリピンピナトゥボ火山噴火を下回るとともに、1980年のセントヘレンズ火山噴火や欧州の航空航路を混乱させた2010年のアイスランドにおけるエイヤフイヤトラヨークトル火山とも同程度かそれ以下の可能性もあるという。これは必然的に世界の気象への影響も極めて限定的となる訳です。

 トンガ国内では首都の火山灰堆積などにより飲料水の汚染が続き、また空港に航空機が発着できない為に降灰の除去が必要となりますが、降り積もった火山灰は10センチ程度、もちろんトンガの一部の島には更に大きな火山灰被害が生じている、火山性津波も15mであったなど、大変な状況ではありますが、火山の冬や全国民退避の必要はなく復興可能です。

 フンガトンガフンガハアパイ火山の山体崩壊。火山爆発指数がVEI7に及ばないのは勿論、VEI6以下かVEI5程度に留まる可能性があるのは、山体崩壊に至った最初の大規模噴火を最後に現地では大規模な火山活動が続かず、17日にAFP通信が再度の大噴火を報じましたが誤報であったと訂正されています、要するに噴火が持続しなかった為、噴出量も少ない。

 山体崩壊に至った背景として、水蒸気爆発と隆起した海底火山という二つの特性が挙げられます、これは地下のマグマ溜まりに海水が触れたという、内陸部の火山では発生しにくい構造があります。ピナトゥボ火山噴火などは山頂の火山湖に蓄積した雨水が火山性地震により生じた亀裂に浸透し水蒸気爆発を誘発しましたが、その噴火まで三カ月を要した。

 前駆噴火、15日の既にトンガ当局などから発表されている大規模噴火前日の火山噴火がありますが、これにより標高149mに達していた火山は大部分が吹き飛んだと衛星写真により判明しています、そして前駆噴火により亀裂が生じた、この際にマグニチュード6規模の地震も発生していますので、ここでマグマ溜まりへ一挙に海水が浸透したと考えられる。

 水蒸気爆発、日本へ津波を到達させたブラストはこの水蒸気爆発により生じたものですが、火山湖に溜まる雨水などとは総量が違います、前駆地震により生じた亀裂に海水が浸透した事で一挙に全部弾けてしまった、これば強烈なブラストの正体です。そしてこの噴火が持続していたならば、火山爆発指数は増大したのでしょうが、七時間ほどで終息に転じた。

 VEI火山爆発指数は火山からの噴出物により算出されます、これには火山灰も火砕流も岩屑雪崩も含まれるのですが、フンガトンガフンガハアパイ火山は海底火山ですが海底に在るカルデラとは距離を隔てた外輪山の一つでしかありません、例えば、すると海面上に出ていましたフンガトンガフンガハアパイ火山の標高149mは伏見稲荷大社の稲荷山より低い。

 火山爆発指数とは火山性排出物の総量で計算される、0.001立方キロメートル以下ではVEI1であり0.01立方キロメートル以下ならばVEI2,そして0.1立方キロメートル以下だとVEI3,更に1キロ立方メートルを超えるとVEI4で、VEI7となると100立方キロメートルの排出物となります。富士山が根こそぎ噴火の規模ではなく、伏見の稲荷山より低い山だ。

 岩屑雪崩、山体崩壊により生じた岩屑雪崩の総量もVEI算定の火山性堆積物には加算するのですが、上記の通り山そのものが小さく、そして火山活動が持続しなかった訳ですので、火山灰もメートル単位で積み重なる状況は避けられています。今後は日本を含めた世界からの支援で、どのようにトンガが火山灰の被害から復興するかという点が重要でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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