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【日曜特集】金沢駐屯地創設63周年記念行事(4)戦闘訓練展示状況開始!(2013-09-08)

2018-11-04 20:10:14 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■金沢連隊の戦闘訓練展示
 金沢駐屯地祭、いよいよ今回から普通科連隊の訓練展示、状況開始です。

 情報小隊が先鋒を務めます。この情報に基づき連隊が動く。軽装甲機動車に79式対舟艇対戦車誘導弾と120mm重迫撃砲RT、近年は79式対舟艇対戦車誘導弾に代えて最新鋭の中距離多目的誘導弾配備が全国で始まっていますが、この三装備だけでも陸上自衛隊普通科部隊は冷戦時代より装備が大幅に近代化した、といえます。

 89式小銃に個人用暗視装置とともに先兵小隊が前進する。ここまでは部隊は高機動車で自走します。高機動車、1992年の調達開始ですが、この四輪駆動の野戦車両が後半に装備開始された点でも自衛隊の機動力は大幅に強化されたといえます。冷戦時代は普通科部隊の自動車化が、連隊の輸送小隊が有するトラックだけでは足りず、師団輸送隊の支援を必要としました。

 第10偵察隊の87式偵察警戒車が進む、1980年代は偵察隊が自走していても連隊の大半はトラック機動でした。73式大型トラック、現在の3t半トラックという呼称ですが、24名の人員を輸送可能です。73式大型トラックが9両あれば、数字の上では普通科中隊を同時輸送出来る事となります、勿論、部隊車両について迫撃砲小隊や無反動砲小隊と中隊本部は自動車化されていますが。

 1t半トラック、ミサイルを機動しています、昔はジープでしたが小銃班の機動力を買えたのは中型トラックでした。73式中型トラックが丁度小銃班が一つ丸々乗車できる車両という事で、ジープという愛称で親しまれた73式小型トラックと共に普通科部隊は自動車機動を実施していました、73式大型トラックの方が多数の乗車が可能ですが競合地域でこの車両はいかにも大きすぎる。

 地上偵察と共に空中機動のUH-1Jが進出します。実戦であれば判明した第一線に高機動車が殺到する事だ。1992年に調達された高機動車は、この73式中型トラックの後継という位置づけ、製造はトヨタ自動車で日野自動車が担当していた73式中型トラックと、最終的に高機動車の駆動系など足回りを共通化させた型が開発、文字通り後継といいますか用途は重なりますもの。

 しかし、高機動車と73式中型トラックでは、明らかに高機動車が野戦機動を念頭に車体銃身一つとってもある程度の路外機動を念頭に開発されています。車高も低く、そしてCH-47輸送ヘリコプター機内に搭載できるほどに小型化されており野戦車両の性格が増しました。

 敵BTR-82装甲車を発見、高機動車などの非装甲車両はこういう硬い車両と出くわす数km手前で下車させる必要がある。高機動車は一両で小銃班全員が乗車可能で、しかも乗り心地が上々と現場の評判がいい。かなりの悪路を踏破する愛にも横転などの心配は無く、整備性もトヨタ自動車が世界を席巻した理由が実感できるほどのもので、車体一部がFRP製ではありますが現場支持は厚い。

 87式偵察警戒車が25mm機関砲で威嚇しつつBTR-82装甲車の攻撃から離隔をとる。普通科部隊の友、というべき車両は高機動車、という表現を幾度か聞きましたが、高速道路網を駆使して長距離機動の際にも小銃班のうち操縦要員として運転手と助手席の車長、この2名以外は休息を採る事が出来、これが入る前と後では疲労度が根本で違う、という。

 さあ、先鋒部隊の情報に基づき火力戦闘が始まる。小銃班の必要な装備を全部載せても十分な搭載力がある点が高機動車の支持の背景にあり、加えて段列地区等に集積する携行品等を輸送する際には1/4tトレーラをけん引する能力が高機動車にはあります、設計に余裕があると共にPKO仕様等では防弾板追加も可能でした。

 UH-1Jからレンジャーが展開する。このUH-1は改良型が多数開発されましたが、前述の高機動車も一応改良型は存在する、例えばPKO仕様では駒門駐屯地祭に並んだ国際協力仕様高機動車が車体内部に防弾板を追加し、防弾ガラスも追加、しかし懸架装置は基本型の高機動車のまま重量増加に耐えているとの事で、即ち、自衛隊装備にあって将来発展性の余裕を十分確保できたという装備品の一つ。

 UH-1Jからレンジャーが展開する、躍動感ある写真ですが、同時に迫撃砲部隊の展開も始まっている。120mm重迫撃砲RTは高機動車に併せて配備が開始された1990年代からの陸上自衛隊の新しい看板装備です。フランス製の120mm重迫撃砲RTは最大射程8.1km、射程延伸弾使用時13kmの射程を誇り、旧型のM-2/107mm重迫撃砲の射程4kmよりも大幅に伸びた。

 レンジャーが状況に入っている。フランス軍では砲兵連隊が運用する事例がある程に火力の大きな120㎜重迫撃砲RTですが、普通科連隊の重迫撃砲中隊にはこれを12門装備しています。車輪と一体化しており、重迫牽引車、これは高機動車の派生型ですが牽引する事で素早い機動展開が可能になった。

 重迫撃砲が進出して参りました。重迫牽引車、元々は高機動車の開発はこの用途で開発された、とも言われるものですが、生産数は高機動車と併せ4000両を超えており、普通科部隊の火力支援を新時代へ昇華させました。なお参考までに重迫撃砲牽引時にこの車両は重迫撃砲の付属品扱いになるという。

 偽装網を展開する、重火力ですので効力射を相手に浴びせかけるまでは発見されないようにしたい。105mm榴弾砲の後継という位置づけとしても想定するフランス製重迫撃砲の開発は、フランス軍がアフリカ地域での旧植民地への元宗主国として、地域安定化任務へ担う緊急展開に際し、フランス空軍C-160輸送機等での空輸性に考慮、軽量な大火力が求められました。

 81mm迫撃砲も展開する、こちらはイギリス製のものを名古屋の豊和工業がライセンス生産している。空挺部隊重視のフランス軍は、この120㎜重迫撃砲を重宝すると共に機械化歩兵部隊に随伴可能な軽量大火力としても重宝され、輸出にも成功し、NATO各国での評価も高い装備です。陸上自衛隊の装備開始は冷戦終結後1994年ですが、実に500門近くを導入している。

 FH-70榴弾砲が展開して参りました。120mm重迫撃砲の存在により陸上自衛隊の第一線火力は世界的に見て高い水準となりました、世界には軽歩兵旅団で普通科連隊の重迫撃砲中隊より火力の小さな部隊は存在しており、逆に言えば迫撃砲の特色、瞬発火力が強い120mm重迫撃砲の威力はそれだけ大きい。

 迫撃砲陣地の横では対戦車ミサイルの展開も進む。79式対舟艇対戦車誘導弾、陸上自衛隊では大車輪で中距離多目的誘導弾への置き換えが進んでいます、そして実はこの第14普通科連隊も2015年度末に79式対舟艇対戦車誘導弾の運用が終了、対戦車中隊は第5中隊へ改編されていますが、この装備の配備は大きかった。

 普通科連隊の主要装備が横一列に並ぶ展示ですね。重MAT,と称されるこのミサイルは対舟艇用の爆発力の大きなHE弾頭と対戦車用の装甲貫徹力の大きなHEAT弾頭を選択でき、本体重量が33kgと比較的大威力である点が特色です。アメリカのBGM-71-TOWの弾頭重量が16kgというので、その威力の大きさが分る。

 74式戦車が進出して参りました、直接照準で瞬発交戦能力の高い戦車、やはり勇壮だ。対戦車隊として元々は師団長直轄の対戦車部隊に16セットが配備されていましたが、師団改編により当時の第10師団は全普通科連隊、第14普通科連隊、第33普通科連隊、第35普通科連隊、第49普通科連隊、に対戦車中隊が編成、12セットが配備されていたのです。

 79式対舟艇対戦車誘導弾、展開完了だ。ミサイル運用はジープ、つまり73式小型トラック車上に発射装置と誘導装置を搭載し、弾薬輸送車等を随伴、射撃時には地上に発射架を降ろして運用します。車上からは射撃できない、という原則との事ですが、出来るはず、という様な見解もありまして、情報は多い。

 軽装甲機動車が攻撃前進へ進出してきました。79式対舟艇対戦車誘導弾は機動力に限界があるのですが、この軽装甲機動車は01式軽対戦車誘導弾を車上から射撃できます。車上射撃の可否が陣地変換の所要時間を大きく変えますが、陣地変換の射撃陣地が掩砲所構築の時間的余裕があるならば、こちらの方が生存性は高くなります。ただ、例えば車体重量の大きな高機動車等に発射架を置き車載運用は出来なかったのか、興味は湧きますね。

 01式軽対戦車誘導弾が広く配備され、こちらのシュア亭は1.3kmという。自衛隊最初の対戦車ミサイルは64式対戦車誘導弾、通称MATの後継として導入されたものでMATは射程1.6kmですので重MATの射程4kmは大きな延伸といえます。ただ、MATは車上から射撃が基本でしたので、重MATは陣地変換に要する時間が長くなっていまして、何とかならないのかな、と。

 第2世代ミサイルで赤外線半自動指令方式という、つまり射手が目標を照準し続ける事でミサイルへワイヤーを通して目標情報が伝達され続け命中する。ただ、ミサイルはこの誘導方式の限界であまり速度が出せず、秒速200m、最大射程4kmの飛翔には20秒を要する。この種のミサイル攻撃を受けた場合は、この特科火砲が白燐弾で煙覆し、その後に効力射で叩き潰す。

 重MATは1セットに発射装置と照準装置を搭載し、弾薬輸送車には予備弾8発を搭載、8発が一基数ということになり、段列地区に更に一基数集積する事で中隊は192発を携行する事となります。ミサイルが大型である分、携行数に限りありますが頼もしい装備でした。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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