北大路機関

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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(24)訓練展示状況終了と89式装甲戦闘車撤収開始(2011-10-09)

2023-01-08 20:07:45 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■機甲師団二〇一一
 年が明け第一空挺団が落下傘降下を行う頃合いですが平常運転と云いますか北大路機関は第7師団創設56周年記念行事のつづき。

 2023年も日曜特集をよろしくお願い致します。と、美しく始めたいところですが、なにしろ日曜特集というのは防衛情報などの記事が既存写真からの応用を行いますので、その為の写真アーカイブという意味合いがあるのですが、その為の掲載写真を多めにしている。

 24枚の写真で日曜特集を掲載しているのですが、これをなんとか36枚記事にできないかと考えてみたものの、その解説文章の文量は4200文字にもなり、これを毎週つづけるのは他の記事に影響が生じる為、結果的に掲載が長期化、これはなんとかせねばなりませんよね。

 第七師団特集は前回の2022年記事の続きです、共通装軌車両について論点を示していました。さてアメリカがM-113装甲車の後継に、つまり自走迫撃砲や指揮通信車や工兵機動用などにいまもM-113を残しているのですが、この後継にM-2ブラッドレイ派生型をだした。

 M-2ブラッドレイ砲塔を取り外したものを共通車両として採用しましたので、自衛隊の共通装軌車両というものはこの点で贅沢な使い方はできるのかもしれませんが、自走榴弾砲の機動力という点では不安が残ります。一方で自衛隊の場合は新型が開発されました。

 19式装輪自走砲、まだ展開が読めないのは今後装輪自走砲が世界でどのように展開するか未知数だ、ということです。ウクライナへのロシア軍侵攻に際していろいろ不確定要素が増えた、フランスのカエサル装輪自走榴弾砲が大活躍と報じられていますが、しかし。

 カエサル、これはウクライナ軍がフランスへの謝意を含めた表現と考えるべきかもしれません、こういうのも、活躍をウクライナ軍が発表するとフランスはネクスター社のカエサルへの評価が高まる、もちろん素晴らしい性能を有している事は確かなのですけれども。

 これは義侠心といいますか国際儀礼、無償で最新鋭火砲を供与してくれましたフランスへの礼儀といえるでしょう、同じことはM-777榴弾砲にも当てはまる、そしてカエサルは52口径砲であり射程はロシア軍火砲を圧倒しているので、高い評価も間違いではないのです。

 供与数としてはM-777のほうが遙かに供与数が多い。ここで装輪自走砲に高い評価というのは早計に思えるのです、さらにイタリアが供与したFH-70榴弾砲の活躍も、今回改めて思い知らされたのはソ連崩壊でロシア軍火砲の近代化が長期間止まりました影響という。

 FH-70榴弾砲のような39口径155mm榴弾砲にさえ対抗できるほど更新が進んでいなかった状況です、故に19式装輪自走榴弾砲の方向性は間違っていないにしても最適回答かは留意すべき、と。K-9自走榴弾砲、欧州ではノルウェーもポーランドも採用しトルコも続く。

 イギリスが検討していますし環太平洋地域ではオーストラリアが採用しているのですね。カエサルよりも実質的にK-9のほうが評価を高くする必要を感じるのです。実際、生産数はカエサルよりもK-9のほうが遙かに、比喩ではない程でして十倍以上量産されています。

 K-9自走砲は1000hpエンジンを搭載し機動力が凄い評価と云えるでしょう、K-1A1戦車に充分随伴できる。この点は600hpに留めた99式自走榴弾砲、後方に展開するという運用は古いように思え、90式戦車とともに道央から道北まで前進できる性能が必要でした。

 K-9自走榴弾砲はインド軍はヒマラヤ地域で自在に機動できたことに感激しK-9から軽戦車を開発したいとしてロシアのスプルート空挺対戦車自走砲のライセンス生産計画を白紙撤回しようとしていますし、エジプトでは地中海での接近拒否運用に際して、高い力が。

 K-9自走砲は半自動装填装置の採用と陣地変換能力の高さから、海上目標に唯一砲弾を当てられた、カエサルには不可能であった、この能力が評価されています。99式自走榴弾砲については後継車両を考える場合、こうした留意も必要でしょう。そろそろその時機です。

 ただ、砲の射程をさらに延伸できる場合は話は違ってくるかもしれません、ドイツは60口径の超長砲身火砲を装輪自走砲として開発します、ここまで砲身が長いとPzH-2000自走榴弾砲には載せられないのですが、MAN-HX-3トラックという巨大な車両を用いています。

 PzH-2000を輸送する輸送車であればなにしろPzH-2000そのものが載るのだからPzH-2000の砲塔に載せられない巨大なものも載せられるという、まあ、それしかないけれどもほんどうにやるとは的な選択肢をとりました、これは射程が100kmを越えるとされる。

 100kmの射程は凄い、今津駐屯地に配備した場合は兵庫県にも石川県にも届く、名寄駐屯地から稚内へは流石に届きませんが音威子府に配備すると利尻島全域と礼文島を射程内とする、別海駐屯地に配備すると択捉にはぎりぎり届かないが国後は全域を射程内に収める。

 この火砲ならば、ロシア海軍のオホーツク海への進出をミサイルでなく火砲で制圧さえ可能となる、いまの40kmや50kmとは根本から別世界なのですね。100kmの射程というと中国のWZ-35砲弾輸出用が155mm砲弾として達成しましたが、こちらは興味深い。

 WZ-35,ただ調べますとこれは砲弾に折り畳み式の主翼がついているというよくわからない砲弾でして、人民解放軍には採用されていない、主翼なんてやはり100km射程は無理なのかと思わせられたところですが、現実をみれば中国には無理でしたが、ドイツはどうか。

 ラインメタルの技術と今のドイツ軍装備、しかし評価が困るのです。ドイツの60口径砲は十分実用的な範囲といい、さすがパリ砲を開発したドイツだけのことはある、唸らされました。パリ砲は射程130kmで第一次大戦中にパリに着弾する巨大な威力を発揮しましたが。

 パリ砲はただ自走砲ではなかった、当然ですが。もし19式自走榴弾砲が、いまの道路運送車両法の特殊大型車両となる大型化を呑む改良を行い、60口径砲を搭載する改良型を開発するならば、もちろん特殊大型車両になるのことを忌避して三菱の国産車体を諦めている。

 19式装輪自走榴弾砲、MAN社のトラックを採用したのですが、2型のようなかたちで60口径砲型を開発するならば、これはもう駐屯地や演習場から動くことなく、多少反撃を想定した陣地変換は必要でしょうが、日本全土を射程に収め防衛することも可能でしょう。

 もっとも、データリンク能力を相当高めなければ、100km遠方からの火力支援に依拠して近接戦闘を展開することは難しく、するとAMOS自走迫撃砲のような120mm自走迫撃砲による直掩を火砲とは別に考えなければならないように変な発展可能性も否定できません。

 道路運送車両法、他方で19式装輪自走榴弾砲がMAN社製トラックを採用した背景にはFH-70と中砲牽引車のように道路運送車両法に収めることで訓練展開を容易とする目的が在ったよう思えるのですが、一方で自衛隊は後に特殊大型車両パトリアAMVを採用した。

 日本の道路法制と手続きの通行許可の煩雑性から自衛隊車両は道路運送車両法に縛られてきたのですが、近年16式機動戦闘車を鏑矢に特殊大型車両の普段使いというべき運用が増えていまして、この当たりも日本の装備体系にどう影響するか、興味深い所ではとおもう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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