北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

将来小型護衛艦の量的優位重視視点【6】 沿岸の地対艦・地対空ミサイル・レーダー部隊と協同

2016-06-18 22:09:01 | 先端軍事テクノロジー
■警備隊が沿岸部で運用
 将来小型護衛艦の量的優位重視視点、ゆうばり型護衛艦を参考として、海上保安庁くにがみ型巡視船に範をとった建造方式を採用する、こうした視点から考えてみます。

 地方隊の警備隊が沿岸部で運用、という前提の背景ですが、これは沿岸部の部隊と連携するためにほかなりません。護衛艦はシステムと兵装の取得費用割合が大きく、実のところ小型艦艇であっても必要な装備を搭載すれば建造費は大きくなってしまいます、この点に留意しなければなりません。くにがみ型巡視船は海上保安庁が大量建造しており、昨今尖閣諸島警備用に大量配備された大型巡視船です。

 勿論、この巡視船を艦砲やミサイルを搭載、という発想ではなく、その建造方式です。くにがみ型巡視船、総トン数1700t、全長96.6mで全幅11.5m、ディーゼル推進方式を採用し最高速力25ノット、20mm多銃身機銃か30mm管制式単装機銃を搭載しヘリコプター甲板を配備する海上保安庁の巡視船です。

 しかし、特筆すべきは大量建造により船体建造費用を大きく低減させた点にあり、一番船くにがみ、同年建造もとぶ、の建造費は2012年就役で74億円を要したのに対し、2012年度予算予備費で2014年に4隻の建造再開を行った際は一隻当たり54億円まで建造費を縮小する事が出来ました。大量建造、もちろん一部装備品の省略も考えられますが、実に23%も縮小する事が出来た訳です。

 ゆうばり型護衛艦を再度大量建造する、という意味ではありません、というのも、ゆうばり型護衛艦は1980年代初頭の就役艦ですので電装品や兵装の陳腐化もさることながら、設計思想そのものが今日的には次元が異なるものとなっています。そこで、船体は同程度ですが、例えばデータリンク能力を重視し、システムネットワークを構成する、という視点が必要でしょう。

 艦艇を一つの自己完結したシステムと考えるのではなく、ひとつは、航空自衛隊の地上防空管制網の中での運用を念頭とし最大限陸上自衛隊の高射特科群や航空自衛隊の高射隊の03式中距離地対空誘導弾システムやペトリオットミサイルの防空網に隣接し、行動する、というものが考えられます、勿論、こうしますと余り沿岸部から離れる事は出来ません。

 対空レーダーの能力限界や対空戦闘能力の限界を元に、最小限度の個艦防空能力を保持し、一方で対水上打撃や対潜戦闘を展開できる能力を保持、ヘリコプターの運用能力は、これ負うよしようとした場合には船体がどうしても2000t規模に増大してしまいますので飛行甲板を有する範囲内にとどめるべきでしょう。

 ただ、航空機運用能力をすべて省くのではなく飛行甲板は維持、哨戒ヘリコプターは海上自衛隊が保有する機体は基本的に大型機であるSH-60がk本ですので格納庫を配置する事は難しいですが、可能な範囲内でSH-60規模の機体へは給油能力を有する程度にとどめ、TH-135やMD-500/OH-6程度の機体を、若しくは同程度の無人航空機の運用能力を保持させ船体周辺空域での海域哨戒能力を付与、という新しい発想を有する水上戦闘艦、が青写真として構想します。

 必要な視点は、将来三胴船構想やコンパクト護衛艦のような、前者については技術的途上部分を盛り込んでいるため実現に時間を要するという部分がありますし、コンパクト護衛艦については基準排水量が3000t程度を想定しているため満載排水量は確実に4000tを越えますので大型過ぎ短期間の大量建造には不向きとなっているものです。

 そこで、ここまで建造されている艦艇が護衛艦の枠に含まれる水上戦闘艦であっても、地方隊の警備隊に配備される程度の水上戦闘艦であり、最小限度の能力を、それも明らかに不十分であり実際の運用では不具合が指摘されるであろう部分を容認した上で、短期間で設計し建造できるものを想定しなければなりません。

 無理に掃海艇としての設計を盛り込めば、必要な船体の仕様は磁性特性や速力と音響特性からも異なりますし、多目的区画を配置し様々な用途に対応させようとすれば狭い船体が過度に大型化するか、中途半端な区画を持て余す事となるでしょうから、保守的でしかし早く建造できるものが、いま必要とされるものと考えます。

北大路機関:はるな くらま
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